セリン効果と美肌や睡眠への作用

セリンは非必須アミノ酸の一種で、美肌効果や睡眠改善、認知機能のサポートなど多彩な健康効果を持つ成分です。医療従事者として知っておくべきセリンの作用機序や臨床応用について、最新のエビデンスとともに解説します。患者指導にどう活かせるでしょうか?

セリンの効果

セリンの主な効果
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保湿・美肌効果

天然保湿因子(NMF)の主要成分として角質層の水分保持に寄与し、バリア機能を強化します

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認知機能サポート

ホスファチジルセリンの原料となり、脳神経伝達の維持と認知症予防に関与します

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睡眠の質向上

体内時計を調整し、入眠促進と中途覚醒の減少により睡眠満足度を高めます

セリンの美肌と保湿への効果

 

セリンは角質層に存在する天然保湿因子(NMF)の約40%を構成するアミノ酸成分であり、皮膚の保湿機能において中心的な役割を果たします。角質層はわずか0.01mmの薄さながら、外部刺激からの防御とともに水分蒸散を防ぐバリア機能を担っており、セリンはこの層内でタンパク質に水分を結合させる特異的な作用を持ちます。
参考)セリンの3つの効果|含まれる食品と摂取量・副作用を説明│健達…

この保湿作用により、肌の乾燥、ニキビ、シミなどの肌荒れを予防する効果が期待できます。さらにセリンは体内でシステインに変換され、メラニン生成を抑制することで美白効果も発揮します。システインは肌や髪の代謝をサポートする非必須アミノ酸であり、シミの原因となるメラニン色素の過剰産生を抑える働きがあります。
参考)美容成分セリンとは?効果から副作用、摂取方法まで網羅!

化粧品成分としてのセリンは、グリシンとともに他のアミノ酸にはない高い保湿力を示し、ターンオーバーに関わる酵素活性を高める機能も確認されています。バリア機能が正常な肌では、セリンは時間をかけてゆっくりと浸透し、持続的な保湿効果を発揮することが特徴です。
参考)セリンはアミノ酸!エイジングケアによい化粧品成分?

セリンの睡眠改善への効果

L-セリンは睡眠の質を向上させる効果が臨床試験で実証されています。ファンケルと筑波大学睡眠医学講座の共同研究では、睡眠に不満を感じる54名を対象に、L-セリン3gを配合した飲料を1ヶ月間継続摂取させた結果、寝付き、中途覚醒、早朝覚醒、起床時の爽快感、睡眠満足度などの主観的睡眠感が統計的に有意に改善しました。
参考)https://www.fancl.jp/news/pdf/2009_1023_selin.pdf

特筆すべきは、摂取開始直後と1ヶ月後を比較すると、継続摂取により起床時の爽快感や睡眠満足度がさらに向上したという点です。この結果は、L-セリンが飲み続けることでより効果を発揮する可能性を示唆しています。​
セリンの睡眠改善メカニズムは、自律神経への作用を介した体内時計の調整にあります。体内時計は睡眠・覚醒リズム、ホルモン分泌、血圧などの生理機能を制御しており、夜更かしなどの些細な生活習慣の乱れでも狂いやすい特性があります。セリンは体内時計を正常化することで睡眠リズムを整え、不眠症状の改善に寄与します。
参考)L-セリンに体内時計の調整強化機能を確認 生活リズムや時差ぼ…

セリンの認知機能とアルツハイマー病予防への効果

セリンは脳の健康維持において重要な役割を果たし、特に認知機能低下とアルツハイマー病の予防に効果が期待されています。この作用は、セリンがホスファチジルセリンの原料となることに起因します。​
ホスファチジルセリンは細胞膜を構成するリン脂質の一種で、特に脳神経細胞に豊富に含まれ、神経伝達において重要な機能を担います。脳からの指令を各器官に伝える神経伝達がホスファチジルセリンの不足により阻害されると、思考力、判断力、記憶力の低下や認知機能の障害が生じやすくなります。
参考)認知症に対するホスファチジルセリンの効果は?効果的な摂取方法…

アルツハイマー型認知症患者を対象とした臨床研究では、ホスファチジルセリンを1日200〜300mg、60日から6ヶ月間投与したところ、記憶力、注意力、集中力、異常行動に改善が認められました。また、加齢性記憶障害を持つ被験者に1日300mgを12週間投与した米国の臨床試験でも、神経学的指標の改善が確認されています。​
ホスファチジルセリンはさらに、脳神経細胞の酸化を防ぐ作用も持ち、神経細胞の死滅を抑制することで認知症の予防効果も発揮します。セリンの補給により、ホスファチジルセリンの体内合成が促進され、脳の健康維持と認知機能の保護につながります。
参考)ホスファチジルコリンはどんな栄養素?|サプリメントのヘルシー…

セリンの糖尿病予防への効果

L-セリンは糖尿病の予防と合併症の軽減において注目される効果を示しています。セリンは血糖値を一定に保つ機能を持ち、細胞内のミトコンドリア機能を改善することで高血糖による神経細胞のダメージを減少させる可能性が報告されています。
参考)セリンとは?6つの効果と適切な摂取方法

ミトコンドリアは生命活動のエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)の産生に関わる細胞小器官であり、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌と効きやすさにも影響を与えます。セリンによるミトコンドリア機能の改善は、インスリン作用の正常化を通じて糖尿病発症リスクの低下に寄与します。​
動物実験では、セリンの補給がNODマウス(ヒトの1型糖尿病に類似したモデル)における糖尿病発症を低下させることが確認されています。さらに、糖尿病のラットモデルにおいて、セリンのサプリメントが神経損傷を軽減することも示されており、糖尿病性神経障害などの合併症予防への応用可能性が示唆されています。
参考)https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v20/n5/%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85%E3%81%AE%E5%90%88%E4%BD%B5%E7%97%87%E3%81%AF%E3%82%BB%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%AC%A0%E4%B9%8F%E3%81%8C%E5%BC%95%E3%81%8D%E8%B5%B7%E3%81%93%E3%81%99/120498

これらの知見は、セリンが2型糖尿病患者における神経合併症の管理において有用な栄養素となりうることを示しています。​

セリンの摂取方法と含有食品

セリンは非必須アミノ酸であるため体内で合成可能ですが、十分な健康効果を得るためには食事からの適切な摂取が重要です。セリンの明確な1日推奨摂取量は設定されていませんが、日本人の平均摂取量から1日3g程度が目安とされています。日本人のL-セリン平均摂取量は、男性3.81g/日、女性3.24g/日です。​
セリンが豊富に含まれる食品としては以下が挙げられます。​
📊 セリン含有量の多い食品(100gあたり)

  • かつお節:3,200mg
  • 大豆(乾燥):2,200mg
  • 海苔(焼きのり):2,000mg
  • イクラ:1,900mg
  • 高野豆腐(水煮):720mg
  • 牛乳:190mg

大豆製品、魚介類、乳製品を日常的に摂取することで、セリンを効果的に補給できます。高野豆腐は大豆製品の中でも特にセリン含有量が多く、効率的な摂取源となります。​
サプリメントからの摂取については、安全性データが十分に確立されていない点に注意が必要です。セリンは基本的に体内で代謝されるため副作用は出にくい成分ですが、サプリメントでは成分が何十倍にも濃縮されており、代謝が追いつかない量を摂取した場合には予期しない副作用が生じる可能性があります。医療従事者として患者指導を行う際は、できるだけ天然食品からの摂取を推奨することが望ましいでしょう。​
睡眠改善を目的とした臨床試験では、L-セリン3gを就寝前に摂取する方法で効果が確認されており、この用量が一つの参考となります。​

 

 


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