褥瘡ステージの画像付き分類と評価方法

褥瘡の重症度を正確に評価するためには、ステージ分類の理解が不可欠です。本記事では、NPUAP分類やDESIGN-R®2020による褥瘡の深達度評価を画像とともに解説し、医療従事者が実践で活用できる判定基準や鑑別ポイントをお伝えします。各ステージの特徴を正しく把握できていますか?

褥瘡ステージの画像付き分類

📊 褥瘡ステージ分類の概要
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NPUAP/EPUAP分類

国際的に広く用いられる4段階+2カテゴリの深達度評価システム。ステージⅠ~Ⅳに加え、DTI疑いと判定不能を含む

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DESIGN-R®2020

日本褥瘡学会が開発した7項目の総合評価スケール。深さ・滲出液・サイズ・炎症など多角的に褥瘡を評価

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深達度の重要性

褥瘡治療の方針決定には深さの正確な判定が必須。真皮までと皮下組織以降では治療アプローチが大きく異なる

褥瘡ステージⅠの画像と特徴

 

ステージⅠは「消退しない発赤を伴う損傷のない皮膚」の状態を指します。皮膚の破綻はありませんが、持続的な発赤が特徴的です。この段階では、圧迫しても消退しない紅斑が通常は骨突出部に生じます。
参考)https://www.eiyounet.nestlehealthscience.jp/archives/pressure_ulcer

発赤の鑑別には「指押し法」と「ガラス板圧診法」が有効です。発赤部分を指で3秒押して白っぽく変化するかを確認し、白くなる場合は反応性充血(褥瘡ではない)、白く消退しない場合は「持続する発赤」で褥瘡と判断できます。皮膚の色が濃い患者では色調の変化が視認できないこともあるため、触診による熱感、腫脹、硬結の確認が重要になります。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/14-%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%A4%A5%E7%98%A1/%E8%A4%A5%E7%98%A1

DESIGN-R®2020では、ステージⅠは「d1:持続する発赤」に対応しています。この段階で適切な介入を行うことで、褥瘡の進行を防ぐことが可能です。
参考)https://knowledge.nurse-senka.jp/2436/

褥瘡ステージⅡとⅢの画像と深達度

ステージⅡは「浅い開放潰瘍として現れる真皮の部分欠損」で、水疱も含まれます。表皮の欠損と底部の紅斑を認め、皮下組織は露出していない状態です。皮膚がめくれるようなびらんの状態で、壊死組織を伴わないのが特徴です。水疱形成時は基本的に破らないようにして、ポリウレタンフィルムなどで保護します。
参考)褥瘡ステージ分類の基礎知識|NPUAP分類による重症度評価と…

ステージⅢは「皮下脂肪に至るものの骨、腱、筋肉は露出していない全層皮膚欠損」を指します。皮膚の全層が欠損し、皮下脂肪は視認できますが、骨・腱・筋肉は露出していません。褥瘡と周辺皮膚との段差が見られることが特徴的です。
参考)褥瘡の重症度分類を理解しよう

鼻梁部、耳介部、後頭部、踝部には皮下組織がないため、ステージⅢの褥瘡は浅くなる可能性があります。反対に脂肪層が厚い部位では、非常に深い褥瘡が生じる可能性があります。ステージⅡ以下は真皮までの欠損である浅い褥瘡、ステージⅢ以降は真皮を超えて障害が及ぶ深い褥瘡です。​

褥瘡ステージⅣと深部損傷褥瘡(DTI)の画像診断

ステージⅣは「骨、腱、筋肉の露出を伴う全層組織欠損」を指します。皮下組織がすべて欠損し、筋肉や骨が露出した状態で、腱や関節などの深部構造が視認できます。最も重症な段階であり、治療に長期間を要することが多いです。
参考)第11章 11-2:褥瘡・スキン-テア

深部損傷褥瘡(DTI:Deep Tissue Injury)疑いは、NPUAP/EPUAP分類とDESIGN-R®2020の両方に追加された重要なカテゴリです。軽症に見えるが深部組織にダメージが及んでいる可能性がある状態で、紫色や栗色の変色を伴うことが特徴的です。
参考)https://jspu.org/medical/books/docs/design-r2020_doc.pdf

DTIの見分け方として、発赤を触って熱感や腫脹、硬結があるかを確認することが重要です。視診だけでなく触診による硬度・温度の確認が正確な評価に不可欠です。判定不能のカテゴリは、表面が壊死組織で覆われており正確な深達度を判定できない状態を指します。
参考)褥瘡の重症度を評価する「NPUAP分類」とは?|ステージごと…

褥瘡ステージ評価における鑑別ポイント

褥瘡の正確な評価には、視診と触診の組み合わせが不可欠です。視診による色調・形状の観察では、皮膚の色調変化、創の形状、周辺組織との境界を丁寧に観察します。触診による硬度・温度の確認では、組織の硬度、温度、疼痛の有無を確認し、正常組織との違いを見極めます。​
ステージⅡとⅢの鑑別ポイントとして、毛穴の有無が判別に有効です。毛穴があればステージⅡ、毛穴がなければステージⅢになります。ステージⅢとⅣの鑑別では、骨・腱・筋肉の露出があるかどうかが決定的な違いです。皮下脂肪までの損傷ならステージⅢ、深部構造の露出があればステージⅣと判定します。​
DESIGN-R®2020では、創の縁と底の段差の有無と創の底に見える組織の2点で深さを判定します。全層損傷の真皮を超える褥瘡の治癒過程では、創縁と創底の段差の程度によって判定します。これらの客観的な指標を用いることで、評価者間のばらつきを減らすことができます。
参考)褥瘡評価スケールの種類とDESIGN-R®2020による評価…

褥瘡ステージ分類と予防ケアの実践

褥瘡発生の最大の危険因子は圧迫ですが、栄養状態を含めていくつかの因子が知られています。褥瘡危険因子としては、栄養状態低下、ベッド上基本動作能力なし、病的骨突出、多汗、関節拘縮、便失禁があげられます。血清アルブミン値3.5g/dL以下は褥瘡発生リスクの指標となります。
参考)https://www.onomichi-hospital.jp/upload/blog/95.pdf

体位変換は褥瘡予防の基本的な介入方法です。基本的に2時間を超えない範囲で行いますが、粘弾性フォームマットレスや上敷二層式エアマットレスなどを使用する場合、体位変換の間隔は4時間を超えない範囲で行ってもよいとされています。「30度側臥位」は、患者の殿筋で身体を支える体位で、骨の突出のない広い面積で体圧を分散させることができます。
参考)褥瘡の予防について|日本褥瘡学会

ドレッシング材には、①創面保護、②創面閉鎖と湿潤環境、③乾燥した創の湿潤、④滲出液吸収性、⑤感染抑制作用、⑥疼痛緩和の役割があります。発赤・水疱の場合には、外用剤としては保護を主な目的としてアズノール®軟膏や亜鉛華(単)軟膏が用いられます。褥瘡の治癒過程に沿って、創の収縮や滲出液の減少に応じて適宜ドレッシング材を選択していくことが必要です。
参考)http://www.igaku.co.jp/pdf/1412_wocnursing-03.pdf

最大の褥瘡対策は発生予防であり、褥瘡発生のリスクのある患者にはあらかじめ予防介入を行うことが大切です。適切な栄養管理、圧迫の除去、皮膚の清潔保持を組み合わせた総合的なアプローチが求められます。
参考)栄養状態の悪い(低栄養)患者は褥瘡になりやすく、治りにくい

日本褥瘡学会による改定DESIGN-R®2020の公式資料では、深部損傷褥瘡(DTI)疑いおよび臨界的定着疑いの詳細な評価基準が示されています。​
褥瘡の重症度分類に関する詳細なガイドでは、NPUAP分類の各ステージの特徴と臨床での活用方法が解説されています。​

 

 


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