尿路結石の症状と診断から治療まで

尿路結石は突然の激痛や血尿を引き起こす疾患です。どのような症状が現れ、医療従事者はどのように診断・治療すべきなのでしょうか?

尿路結石の症状と診断

尿路結石の主要症状
激しい疝痛発作

脇腹から背中にかけて突然発生する激痛で、3〜4時間持続することが多く、夜間や早朝に起こりやすい

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血尿と膀胱刺激症状

結石が尿管を傷つけることで血尿が出現し、下部尿管結石では頻尿や残尿感などの膀胱刺激症状を伴う

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発熱と合併症

腎盂腎炎を併発すると38〜40度の高熱が出現し、敗血症に進行するリスクがある

尿路結石の典型的な痛みの特徴

 

尿路結石の痛みは「痛みの王様(king of pain)」と表現されるほど激烈で、発作的に激しい痛みが脇腹から背中や腰周辺に起こります。この痛みは波のように強くなったり弱くなったりする「疝痛」が特徴で、突然始まり間隔をおいて繰り返し発症します。結石が尿管に詰まると腎盂内に尿が渋滞して溜まり、膨らんだ腎盂が腎臓を内側から引き伸ばすために強い痛みが生じます。
参考)種類と症状

痛みの部位は結石の位置によって変化し、上部尿管結石では腰から脇腹に、中部尿管結石では脇腹から下腹部に、下部尿管結石では下腹部に痛みが広がります。結石が尿管の下端に達すると、痛みは大腿部や外陰部に放散痛として現れることがあります。しかし必ずしも七転八倒の苦しみとは限らず、鈍痛や重苦しさだけのこともあります。
参考)尿路結石はどのような痛みですか? |尿路結石

典型的な疝痛発作は夜間や早朝に起こることが多く、通常3〜4時間は持続します。吐き気や嘔吐を伴うこともあり、冷汗とともに顔面蒼白となり、まれに失神する患者もいるほどの痛みです。
参考)尿路結石

尿路結石における血尿と膀胱刺激症状

尿路結石では血尿も多くみられますが、その程度はさまざまで血の塊として出ることもあれば、肉眼では判らない顕微鏡的血尿までいろいろです。結石が動いて尿管が傷つくことで血尿の症状が現れ、痛みの発作に伴って見られることが多いです。
参考)尿路結石Qhref="https://www.sowa-kai.jp/fuchinobe/section/departments/center/faq/" target="_blank">https://www.sowa-kai.jp/fuchinobe/section/departments/center/faq/amp;#038;A

下部尿管に結石ができると、痛みに合わせて膀胱刺激症状(頻尿や残尿感など)が起こります。結石が膀胱近くまで下降すると、排尿痛、頻尿、残尿感などの症状が出現し、膀胱炎に似た症状で来院される患者もいます。下部尿管結石では会陰部の痛み(男性では陰嚢、女性では外陰部に痛みが広がる)を伴うこともあります。
参考)尿管結石・腎結石 - 阿佐谷すずき診療所

膀胱結石では排尿の終わりに下腹部や恥骨の上あたりの痛みを感じ、運動で痛みが悪化したり、急に尿が出にくくなる・出なくなることがあります。尿道に結石が詰まった場合や両側の尿管に同時に詰まった場合には、尿が突然出なくなり緊急処置が必要となります。​

尿路結石の合併症:腎盂腎炎と水腎症

尿路結石で最も注意すべき合併症は閉塞性腎盂腎炎(結石性腎盂腎炎)で、38度以上の発熱や背部痛が出現します。結石により閉塞された尿が感染をきたすと腎盂腎炎になり、38度〜39度の高熱が生じ、速やかな抗生剤治療が必要です。尿路閉塞に伴う閉塞性腎盂腎炎は簡単に敗血症という命に関わる状態になるため、十分な注意が必要です。
参考)尿管結石(尿路結石)の原因や症状・予防法について解説

腎臓内に溜まった細菌尿が流れ出ないために細菌が繁殖し、血液中に侵入して敗血症(菌血症)を引き起こす可能性があります。特に糖尿病やステロイド内服、その他全身状態により易感染状態の患者はリスクが高くなります。結石性腎盂腎炎の治療には適切な集学的内科治療に加え、尿管ステント留置や腎瘻造設といった早急な尿路ドレナージが必要です。
参考)尿路結石について

水腎症は尿管結石によって腎盂内に尿が渋滞し溜まってしまう状態で、膨らんだ腎盂が腎臓を内側から引き伸ばすために強い痛みが生じます。この水腎症が突然、急激に起こるため、多くの患者は突然の激しい腰背部痛を契機に病院を受診します。全く無症状の場合もありますが、気づかないうちに徐々に腎機能が悪化することがあり、特に両側の尿管結石では尿量のチェックが重要です。​

尿路結石の診断における検査方法

尿路結石の診断には主に症状、尿・血液検査、画像診断によって確定診断が行われます。尿検査では血尿の有無、細菌の存在、結晶の有無などを調べ、白血球や細菌を認めると尿路感染症を合併している可能性があります。血液検査では腎機能、尿酸値、カルシウム値、リン値などを調べます。
参考)検査と治療

結石の診断にはCT検査が最善の方法で、結石の位置を特定でき、結石による尿路閉塞(水腎・水尿管)の程度を評価することも可能です。CT検査では尿路結石に似た症状をおこす他の多くの病態も検出できる利点があります。デュアルエネルギーCT(DECT)は尿酸結石と非尿酸結石の鑑別に優れ、感度1.0、特異度0.93、正確度0.99と高い診断精度を示します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10415460/

腹部単純X線検査はCT検査に比べて放射線被曝量が少ないですが、診断精度は劣り、カルシウム結石以外(尿酸結石など)は検出できません。超音波検査は放射線被曝がない利点がありますが、小さな結石を検出できず、尿路閉塞の観察や妊婦には有用な方法です。身体所見では患側の圧痛や叩打痛、尿所見では肉眼的血尿や顕微鏡的血尿などから判断します。
参考)尿路結石の検査と診断|東京女子医科大学病院 泌尿器科

尿路結石の種類と成分分析の重要性

尿路結石の約80%以上はカルシウム結石(シュウ酸カルシウムやリン酸カルシウム)で、10%が尿酸結石、2%がシスチン結石、残りの大半がリン酸マグネシウムアンモニウム(ストルバイト)を主成分とします。米国では尿路結石の約85%がカルシウム結石で、シュウ酸カルシウム結石が70%、リン酸カルシウム結石が15%を占めます。
参考)尿路結石 - 03. 泌尿器疾患 - MSDマニュアル プロ…

結石の成分分析は患者の病態把握と治療方針決定に重要で、化学的方法と物理的方法の両方が使用されます。化学的方法は尿路結石を正確に分析するには不十分で一部の元素を検出できないことがありますが、物理的方法(X線回折、赤外分光法など)は大規模ラボで使用されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4308647/

結石の成分が尿酸結石やシスチン結石の場合は尿アルカリ化剤での溶解療法に効果があるため、成分に応じた治療選択が可能です。カルシウム結石では高カルシウム尿症や低クエン酸尿症が一般的な原因で、ストルバイト結石は尿素分解細菌による尿路感染症が原因となります。結石の形態学的・組成学的分析には、石分析に加えて24時間蓄尿検査が診断と治療に有用です。
参考)泌尿器科 - 尿路結石 |京成小岩すまいるクリニック | 江…

医療従事者が知るべき尿路結石患者への対応

医療従事者は尿路結石患者が「突然の激痛」や「再発不安」を抱えていることを理解し、観察力、予防の視点、チーム連携を重視する必要があります。血尿や尿量変化は腎機能のサインであり、痛みが強い時は迷わず医師に報告することが重要です。
参考)https://ameblo.jp/stroke-rehabilitation-ns/entry-12913383888.html

疼痛コントロールでは、結石が尿路を閉塞し痛みを生じている場合は鎮痛剤で治療し、痛みが治まっても排石がなければ結石自体は残っているため追加治療が必要となることがあります。5mm以下の小さい結石は自然に排石する可能性があるため、毎日2Lほどの水分摂取とウォーキングなどの有酸素運動を指導し、結石排石を促進する薬を使用することもあります。​
生活指導では水分摂取とカルシウム摂取を具体的に指導し、シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、紅茶、コーヒー、チョコレートなど)の制限とカルシウムを含む食品との同時摂取を勧めます。動物性タンパク質や動物性脂肪の摂りすぎは尿中のシュウ酸・尿酸を増やすため、和食中心のメニューを推奨します。2023年8月に「尿路結石症診療ガイドライン」が10年ぶりに改訂され、尿路結石症と生活習慣病の関連も明らかになり、生活指導の考え方も変化しています。
参考)尿路結石予防のための食事や生活習慣のポイント - 我孫子東邦…

尿路結石の治療と予防

尿路結石の保存的治療と薬物療法

尿路結石の治療は結石の大きさ、位置、成分によって選択されます。5mm以下の小さい結石に関しては自然に排石する可能性があるため、保存的治療として毎日2Lほどの水分摂取(ジュース、コーヒー、お茶ではなく水)とウォーキングなどの有酸素運動を推奨し、結石排石を促進する薬を使用することもあります。尿管の蠕動運動によって結石を膀胱まで送り出そうとする生理的メカニズムを活用します。​
疼痛管理では、結石が尿路を閉塞し痛みを生じている場合は鎮痛剤で治療しますが、痛みが治まっても排石がなければ結石自体は残っているため、結石の大きさ等により追加治療が必要となる場合があります。結石の成分が尿酸結石、シスチン結石の場合は尿アルカリ化剤での溶解療法に効果があるため、成分に応じた治療を行います。​
大きい結石に関しては自然に排石することが難しく、積極的な治療が必要となります。結石が閉塞し発熱した場合は結石性腎盂腎炎という病気になっている可能性があり、その際は入院での手術・治療が必要です。結石性腎盂腎炎の治療には適切な集学的内科治療に加え、尿管ステント留置や腎瘻造設といった早急な尿路ドレナージが必要です。
参考)尿路結石症

尿路結石の手術治療:ESWLとTUL

尿路結石の積極的治療の主流は「体外衝撃波結石破砕術(ESWL)」と呼ばれる方法で、体外から衝撃波を当てて結石を細かく砕き、尿とともに自然排出させる治療です。ESWLは日帰り手術を原則としており、治療時間は1時間ほどですが、結石の大きさや硬さによっては1回の治療では終わらない場合もあり、数週間後に2回目の治療を行うこともあります。
参考)尿路結石の診断と治療について

経尿道的尿路結石除去術(TUL)は、下半身麻酔または全身麻酔後に細径内視鏡(尿管鏡)を尿道から挿入し、直接結石を観察しながらレーザーを用いて結石を破砕し、破砕片をバスケットカテーテル(結石回収装置)を用いて体外に摘出する方法です。軟性尿管鏡を使用することで、尿管結石だけでなく腎臓結石も治療可能となりました。
参考)泌尿器科| 尿路結石の治療|順天堂大学医学部附属順天堂医院

結石の硬さに関わらず破砕が可能で、通常2cmまでの結石を対象としていますが、結石が大きく1回で破砕摘出できない場合や尿管が狭く内視鏡が挿入できない場合もあります。手術後は小さな結石が排出されやすいように、また尿がスムーズに流れるように、尿管に管(尿管ステント)を4週間程度留置し、入院期間は約4〜5日です。
参考)尿路結石の治療について

尿路結石の経皮的手術と複合治療

経皮的腎尿管結石砕石術(PNL)は、2cm以上の大きな腎結石やTULでも除去困難なことが予想される場合に適した手術です。背中から超音波で観察しながら腎臓内まで針を通し、針穴を6〜10mmまで広げて筒を挿入(腎瘻造設)し、そこから内視鏡を挿入して砕石・回収を行います。​
PNLは全身麻酔でうつ伏せの状態で手術を行い、大きな結石を短時間で回収できる反面、広い範囲の操作や尿管内の結石は苦手としています。このため、TULと組み合わせて相互の利点を活かす経皮・経尿道同時内視鏡手術(ECIRS)も積極的に推奨されています。ECIRSは両方のアプローチを同時に使用することで、より効率的かつ完全な結石除去を実現します。​
手術方法の選択は結石の大きさ、位置、硬度、患者の全身状態などを総合的に評価して決定されます。最新の尿路結石症診療ガイドラインでは新たな治療法が登場し、生活習慣病との関連も明らかになり、治療の全体像が変化しています。
参考)ガイドラインから学ぶ尿路結石症診療のポイント|CareNeT…

尿路結石の予防:食事と生活習慣の改善

尿路結石の予防と再発防止には、食生活の基本として動物性タンパク質や動物性脂肪を多く摂ると尿中のシュウ酸・尿酸が増えて結晶ができやすくなるため、摂りすぎないことが重要です。和食中心のメニューを取り入れ、野菜類を多く摂ることが推奨されます。
参考)再発と予防

カルシウムの摂取については、かつては制限が推奨されていましたが、現在ではカルシウム不足によりシュウ酸の腸管からの吸収と尿中への排泄が増加して結石形成を促進するため、カルシウムの制限よりもシュウ酸の制限が重要視されています。カルシウムの摂取量は一日当たり600mg〜800mg(牛乳パック200mlで3個分)をとる必要がありますが、過量の摂取は避けるべきです。​
シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、竹の子、大根、チョコレート、コーヒー、紅茶など)の制限が必要で、特に毎日摂取する可能性が高い紅茶、コーヒー、玉露に注意が必要です。シュウ酸を含む食品を食べる際には、カルシウムを含む食品を同時にとることが大切で、野菜に含まれるシュウ酸はゆでると減ります。尿酸を含む結石には動物性タンパク質(肉、魚など)の少ない食事が推奨され、酒類(特にビール)も尿中の尿酸濃度を高めます。​

尿路結石の再発予防と患者教育の重要性

尿路結石は高い再発率を特徴とし、初回結石イベント後5〜10年以内に再発率は30〜50%に達し、反復または予定外の医療ケアにつながります。このため効果的な予防戦略と正確な治療が、高い有病率による負担を軽減するために必要です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11480260/

水分摂取は結石予防の基本で、毎日2Lほどの水分(ジュース、コーヒー、お茶ではなく水)を摂取することが推奨されます。野菜、穀物、海草はいずれも尿中クエン酸濃度を高めるため、結石形成を抑制する効果があります。ウォーキングなどの有酸素運動も自然排石を促進します。​
患者教育では、適切な尿サンプルを得るための患者教育が重要で、24時間蓄尿が最も有用な尿採取タイプとされています。尿分析結果を報告するグラフィカルな方法は、医師と患者の両方にとって有用で、有益な食事変更について患者を教育するのに役立ちます。結石の組成分析は石の予後と再発を推定するために使用され、個別化された治療と石の再発予防の重要な要素となります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7867533/

尿路結石症と生活習慣病の関連が明らかになり、生活指導の考え方も変化しているため、医療従事者は最新のガイドラインに基づいた知識のアップデートが必要です。結石患者は気温の高く紫外線の強い7月〜10月に増加すると言われており、季節的な予防指導も重要です。​

 

 


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