有酸素運動と筋トレでは使用されるエネルギー源が根本的に異なります 。筋力トレーニングでは主に筋肉内に蓄えられたグリコーゲン(糖質)が瞬発的なエネルギー源として利用されます 。一方、有酸素運動では開始から約20分後に脂肪の燃焼効率が高まり、持続的なエネルギー供給が可能になります 。
参考)筋トレと有酸素運動はどっちが先?組み合わせ方は?
このエネルギー代謝の特性を理解することで、トレーニング目的に応じた最適な順番を決定できます 。筋トレを先に行うことで体内の糖質を優先的に消費し、その後の有酸素運動では脂肪がメインエネルギーとして使用されやすくなります 。
参考)有酸素運動と筋トレ
運動生理学の研究では、三種類の筋線維(速筋系、遅筋系、中間筋)と三つのエネルギー供給系(ATP-CP系、解糖系、酸化系)が3×3のマトリックスシステムとして機能し、エネルギー系の変動に適切に対応することが示されています 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsss/23/1/23_35/_pdf
脂肪燃焼を最大化したい場合、「筋トレ→有酸素運動」の順序が科学的に推奨されています 。筋力トレーニングによって分泌される成長ホルモンは、体脂肪の分解を促進し血中に遊離脂肪酸として放出させます 。この生理学的変化により、その後の有酸素運動で脂肪燃焼効率が大幅に向上します 。
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2025年に発表された最新のシステマティックレビューとメタ分析では、36本のランダム化比較試験(参加者1564人)を対象として、筋トレと有酸素運動を組み合わせたコンカレントトレーニングが筋トレ単独より平均1.09kg多く脂肪を減少させることが実証されました 。
参考)筋トレと有酸素、どっちが脂肪を減らす? 最新メタ分析で見えた…
また、筋トレ後の代謝亢進状態(EPOC効果)は最大24時間継続し、安静時消費カロリーが平均14%向上することが報告されています 。この生理学的メカニズムにより、筋トレ先行の組み合わせは単独トレーニングより効果的な脂肪燃焼を実現します 。
参考)【目的別】筋トレ×有酸素運動の正しい順番
筋肥大や筋力向上を主目的とする場合、軽度の有酸素運動を先行させることが推奨されます 。低負荷の有酸素運動は筋肉の温度を上昇させ、柔軟性を高めることでその後の筋トレの効果を向上させます 。ただし、長時間の有酸素運動は筋トレのパフォーマンスを著しく低下させるため注意が必要です 。
参考)有酸素運動と筋トレの組み合わせはOK?目的による最適な順番も…
研究によると、有酸素運動でグリコーゲン(糖質エネルギー)を消耗した状態では、本来上げられる重量が減少し、正しいフォームの維持が困難になります 。これにより筋肉への適切な刺激が得られず、筋肥大効果が減少する可能性があります 。
参考)【解説動画つき】どっちが先?「筋トレ vs 有酸素運動」ダイ…
筋力トレーニングの最適化を図る場合、ウォーミングアップ程度の軽い有酸素運動(5-10分)に留め、メインの筋トレに十分なエネルギーを温存することが重要です 。
コンカレントトレーニング(同時併行トレーニング)は、有酸素性エクササイズとストレングスエクササイズを組み合わせる手法です 。このトレーニング方法には「干渉効果」と呼ばれる現象が存在し、mTORC1(筋タンパク合成)とAMPK(持久力向上)の相反するシグナル経路が相互に影響し合います 。
参考)https://docs.nsca-japan.or.jp/park/29_10_24-35_66_11712.pdf
2024年の最新研究では、コンカレントトレーニングにおける干渉効果を最小化する要因として、対象者の能力レベル、トレーニング頻度と強度、レジスタンストレーニングと持久力トレーニングの順序と間隔時間、栄養補給、性別差などが特定されています 。
参考)https://journals.lww.com/10.1097/MD.0000000000041055
興味深いことに、性別による適応の違いも明らかになっており、コンカレントトレーニングは男性の下半身筋力適応に小さな干渉を示すものの、女性では干渉効果が認められませんでした 。また、未経験者では最大酸素摂取量(VO₂max)の改善が阻害される一方、経験者や高度に訓練された持久系アスリートでは影響が見られませんでした 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10933151/
効果的なコンカレントトレーニングの時間配分は、トレーニング目的によって大きく異なります 。ダイエット目的の場合、「有酸素運動40分/筋トレ20分」のバランスが推奨されます 。一方、筋肥大を主目的とする場合は「有酸素運動10-20分/筋トレ40-50分」が適切とされています 。
有酸素運動の強度設定においては、「ややきつい」と感じる中強度での実施が脂肪燃焼率を最大化します 。息が上がるほどの高強度運動は無酸素状態となり、かえって脂肪燃焼効率が低下する可能性があります 。10分程度で軽く汗ばむ程度の強度を目安とし、トレーニング後の10分間ウォーキングでも十分な効果が得られます 。
HIITトレーニングと筋トレの組み合わせでは、HIIT後の成長ホルモンとテストステロン分泌がピークを迎えるタイミングで筋トレを実施することで、筋合成シグナルが相乗的に高まることが報告されています 。この組み合わせにより、体脂肪率減少・筋力向上・心肺機能改善の三分野で単独トレーニングを上回る成果が確認されています 。
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