ナジフロキサシンは細菌のDNAジャイレースに作用し、DNA複製を阻害することにより殺菌的に作用する薬剤です。この作用機序により、アクネ菌及び表皮ブドウ球菌を含む好気性グラム陽性菌、陰性菌及び嫌気性菌に対して強い抗菌力と広い抗菌スペクトラムを有しています。
特筆すべき点として、ナジフロキサシンはMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対してもMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)と同様の強い抗菌力を示します。さらに、キノロン耐性MRSAに対しても良好な抗菌力を示し、既存のニューキノロン剤との間に交叉耐性はほとんど認められないという特徴があります。
この薬剤の抗菌作用は殺菌的であり、静菌的ではないため、感染部位の細菌を効果的に除去することが可能です。アクネ菌や表皮ブドウ球菌といったニキビの原因菌に対して特に高い効果を発揮するため、炎症性ざ瘡の治療において重要な役割を果たしています。
ナジフロキサシンは特に炎症を伴う赤ニキビに対して高い効果を示します。ニキビの主な原因は皮脂腺が詰まり、そこで繁殖したアクネ菌による炎症ですが、ナジフロキサシンはアクネ菌を抑制する効果により、ニキビの原因となる炎症を鎮めることができます。
アクアチムクリーム・ローションとして処方される本剤は、ニキビの原因菌であるアクネ菌や表皮ブドウ球菌のDNA複製を防ぐことで殺菌的に作用します。他の抗生物質と比較して耐性菌が発生しづらいという利点もあり、長期間の使用においても効果を持続させることが可能です。
臨床試験では、尋常性ざ瘡患者539例を対象とした国内臨床試験において、その有効性が確認されています。また、刺激が少なく肌に優しいという特徴もあるため、敏感肌の方や乾燥肌の方にも安心して使用することができます。
ただし、ニキビ跡に対しては効果がないため、既に形成されたニキビ跡の治療には他の治療法を検討する必要があります。
ナジフロキサシンの副作用は主に皮膚症状として現れます。頻度1%以上の副作用として皮膚そう痒感が報告されており、1%未満の副作用として刺激感、発赤、潮紅、丘疹、顔面の熱感、接触皮膚炎、皮膚乾燥、ほてり感などが報告されています。
接触皮膚炎は「かぶれ」の一種で、刺激性もしくはアレルギー性の接触皮膚炎に分類されます。刺激性接触皮膚炎の場合は原因物質を塗布してから数分以内に症状が現れますが、アレルギー性接触皮膚炎の場合は数時間から数日後に症状が現れる特徴があります。
臨床試験において、健康成人30例の背中に塗布してパッチテストを実施した結果、皮膚刺激性が弱く、光過敏反応を示さないことが明らかになっています。これにより、本剤の安全性プロファイルは良好であることが確認されています。
副作用が現れた場合は、観察を十分に行い、異常が認められた場合には使用を中止するなど適切な処置を行うことが重要です。気になる症状があらわれた場合は、すぐに医師・薬剤師へ連絡することが推奨されています。
ナジフロキサシンの使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の適用にとどめることが重要です。表在性皮膚感染症や深在性皮膚感染症の場合、1週間で効果が認められない場合は使用を中止する必要があります。
ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)の治療においては、4週間を目安として効果を判定し、継続の必要性を検討することが推奨されています。ニキビの症状がなくなった場合には、医師と継続使用の可否について相談することが重要です。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされています。また、授乳中の方の使用も推奨されていません。
細菌による炎症を起こしていないところに抗生物質を外用し続けると、皮膚の常在菌のバランスが崩れる、あるいは耐性菌が出現する原因になる可能性があるため、医師の診察を受けた上で指示通りに外用することが基本となります。
ナジフロキサシンの最大の特徴は、既存のニューキノロン剤との間に交叉耐性がほとんど認められないことです。これは臨床現場において非常に重要な特性であり、他の抗菌薬に耐性を示す菌株に対しても効果を期待できることを意味します。
従来のニキビ治療薬であるクリンダマイシン(ダラシン)と比較して、ナジフロキサシンは耐性菌の発現が少ないという利点があります。また、広い抗菌スペクトラムを有するため、ニキビ以外の皮膚感染症にも幅広く使用できる汎用性の高さも特徴的です。
皮膚への刺激性が低いことも重要な優位性の一つです。臨床試験において皮膚刺激性が弱いことが確認されており、敏感肌の患者にも使用しやすい薬剤として位置づけられています。
さらに、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対してもMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)と同様の強い抗菌力を示すため、院内感染対策の観点からも有用な薬剤として評価されています。
これらの特性により、ナジフロキサシンは皮膚科領域において重要な治療選択肢として位置づけられており、適切な使用により優れた治療効果を期待できる薬剤です。ただし、耐性菌発現防止の観点から、必要最小限の期間での使用を心がけることが医療従事者には求められています。