ランドセン細粒0.1%は2026年1月頃に出荷が終了し、現在すでに入手困難な状態です。
クロナゼパム(一般名: Clonazepam)は、1960年代にスイスのロシュ社が合成したベンゾジアゼピン系薬剤で、日本では1981年より販売が開始されています。国内での商品名は、住友ファーマが販売する「ランドセン」と、太陽ファルマが販売する「リボトリール」の2種類です。
この2つは、有効成分・薬理作用・薬価のすべてが同一であり、メーカーが異なるだけの先発品同士の関係にあります。つまり「どちらを選んでも臨床上の差はない」というのが基本です。
剤型についても確認しておく必要があります。錠剤は0.5mg・1mg・2mgの3規格が両製品で共通して存在します。一方、細粒(0.1%・0.5%)はランドセンのみで製造・販売されていましたが、2026年1月頃に出荷終了となっており、現在は在庫消尽後に入手不可となる状況です。細粒を処方している患者への対応が必要なケースでは、リボトリール細粒0.1%(太陽ファルマ)の在庫状況を確認するか、代替手段の検討が求められます。これは確認が必要な点です。
薬価については以下のとおりです。
| 販売名 | 規格 | 薬価 | 区分 |
|---|---|---|---|
| ランドセン錠 / リボトリール錠 | 0.5mg | 9.6円/錠 | 先発品(後発品なし) |
| ランドセン錠 / リボトリール錠 | 1mg | 10.4円/錠 | 先発品(後発品なし) |
| ランドセン錠 / リボトリール錠 | 2mg | 13.2円/錠 | 先発品(後発品なし) |
| クロナゼパム錠「サワイ」等 | 0.5mg | 5.0円/錠(目安) | 後発品(ジェネリック) |
なお、ランドセン・リボトリールは「先発品(後発品なし)」と表記されているケースがありますが、実際には沢井製薬などからクロナゼパム錠のジェネリック医薬品も存在します。先発品扱い同士が2ブランド並存するやや特殊な形態であるため、処方箋への記載や患者への説明時に混乱が生じないよう注意が必要です。
KEGGデータベース:クロナゼパムの商品一覧と薬価情報(ランドセン・リボトリール含む)
添付文書上の効能・効果は「小型(運動)発作(ミオクロニー発作・失立発作・点頭てんかんなど)」「精神運動発作」「自律神経発作」のてんかん関連の3項目のみです。保険適応はあくまでてんかんに限定されています。
ただし、臨床現場では保険適応外での使用が非常に広く行われています。
主な適応外使用として、パニック障害・社交不安症・レム睡眠行動障害(RBD)・むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)・アカシジア・遅発性ジスキネジア・歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)・口腔内灼熱症候群(バーニングマウス症候群)などが挙げられます。
なかでも注目すべきは、レム睡眠行動障害(RBD)への使用です。RBDはレム睡眠中に夢の内容に沿った異常行動(怒鳴る・殴る・蹴るなど)が出現する疾患で、パーキンソン病などの神経変性疾患の前駆症状であることも知られています。この疾患に対して保険適応を持つ薬剤は現時点で存在しない状況で、クロナゼパムが第一選択として広く選ばれています。就寝前に1日1回0.5〜1.5mgを投与することで、8割以上の患者で数日以内に睡眠中の異常行動が生活上問題ないレベルにまで軽減するとの報告があります。これは使えそうです。
米国ではパニック障害(商品名:Klonopin)への保険適応も取得していますが、日本では未承認のままです。処方する際には「保険適応外であること」を患者に説明し、同意を得た上で行うことが求められる場面もあります。
日経メディカル:抗てんかん薬クロナゼパムが著効する睡眠障害(RBD)についての解説
用法・用量の基本は以下のとおりです。成人・小児ともに、初回量として1日0.5〜1mgを1〜3回に分けて経口投与し、その後は症状に応じて徐々に増量します。通常の維持量は1日2〜6mgです。乳幼児では体重1kgあたり初回量0.025mg、維持量0.1mgを目安とします。
薬物動態の特徴として、クロナゼパムは肝臓のCYP3A4およびN-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)によって代謝されます。1mgを単回投与した場合、血中濃度は約2時間で最高値に達し、半減期は約27時間です。
半減期27時間というのは非常に長い部類に入ります。たとえばジアゼパム(セルシン)の半減期も長いことで知られていますが、クロナゼパムは他のベンゾジアゼピン系薬に比べても抗けいれん作用が特に強く、かつ作用時間が長い特徴を持っています。1日1回の投与でも血中濃度を安定させやすい点は管理上のメリットになります。
一方で、CYP3A4が関与する薬物相互作用には注意が必要です。イトラコナゾール・フルコナゾールなどの抗真菌薬、エリスロマイシン・クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬、HIVプロテアーゼ阻害薬などはCYP3A4を阻害するため、クロナゼパムの血中濃度が上昇し副作用が増強するリスクがあります。逆に、カルバマゼピン(テグレトール)やフェニトインなどはCYP3A4を誘導するため、クロナゼパムの効果が減弱する可能性があります。長期処方中に処方医が変わる場合、この相互作用情報が引き継がれないリスクが指摘されており、お薬手帳やカルテの記載確認が重要です。
高津心音メンタルクリニック:クロナゼパムの作用機序・薬物動態・副作用についての詳細解説
クロナゼパムの承認時の調査では、5,206例中1,423例(27.3%)に副作用が認められています。頻度の高い副作用として眠気(13.9%)・ふらつき(7.63%)・喘鳴(2.75%)・唾液分泌増加(1.31%)が挙げられます。約4人に1人以上で何らかの副作用が生じているという点は、処方前の説明で必ず共有すべき情報です。
眠気とふらつきは特に高齢者で問題になります。転倒・骨折リスクが高まるため、夜間トイレ時の転倒防止策や、同時服用薬(睡眠薬・抗精神病薬・オピオイドなど)との相互作用チェックが必要です。中枢神経抑制薬との重複処方は呼吸抑制の危険性もあります。厳しいところですね。
長期投与で問題になるのが依存性と耐性です。連用によって精神依存・身体依存が形成される場合があり、急な中止や急激な減量はけいれん発作・せん妄・振戦・不眠・不安・幻覚・妄想などの離脱症状を引き起こす恐れがあります。投与を中止する場合には、必ず徐々に減量する漸減法を取ることが原則です。
また、禁忌として急性狭隅角緑内障・重症筋無力症の患者への投与は禁止されています。慎重投与が求められる対象として、高齢者・心障害・肝障害・腎障害・呼吸機能低下者・妊婦・授乳婦が挙げられます。妊婦への投与については、特に妊娠初期の使用で催奇形性リスクの議論があるため、有益性と危険性を十分に評価した上での判断が必要です。
車の運転・危険な機械の操作は禁止されています。患者への服薬指導では、この点を明確に伝えることが法的にも求められる事項です。処方箋や薬袋への記載確認も含め、チームとして対応することが重要です。
MKクリニック(てんかん専門医監修):クロナゼパムの副作用について専門医が詳しく解説
クロナゼパムは第三種向精神薬に指定されており、厚生労働省告示に基づき1回の投薬量は90日分を限度とされています。これは他の第三種向精神薬(クロバザム・マイスタンも90日、クロルジアゼポキシド・バランスは30日など)と同様の規制です。
処方制限は90日が上限です。
注意が必要なのは「90日まで処方できる」ことが「何も確認せず90日分を出してよい」を意味しないという点です。依存性が形成される薬剤であるため、長期処方を行う場合には定期的な再評価(症状のコントロール状況・副作用の有無・用量が最小限かどうかの確認)が求められます。向精神薬の長期処方に対しては、2019年4月より処方料・処方箋料の減算ルール(向精神薬長期処方の点数調整)が適用されており、処方を続ける際には算定点数にも影響が出ることを把握しておく必要があります。
また、向精神薬として、オンライン診療(特に初診)での処方は法律上認められていません。クロナゼパムをすでに服用中の患者がオンライン診療のみで継続処方を求めてきた場合、原則として対面診療が必要であることを説明する必要があります。これが条件です。
処方箋への記載上の留意点として、クロナゼパムは一般名処方でも商品名処方でも対応できますが、向精神薬として管理が必要な薬剤であるため、調剤薬局との連携や患者の服薬管理状況の把握も含めた対応が求められます。なお、ランドセン錠1mgについては2026年7月ごろを目途に出荷終了予定という情報も出ており、剤型・規格の変更が必要になるケースが今後増える可能性があります。処方変更が発生した際は患者への説明と同意が必要であることも覚えておけばOKです。
管理薬剤師.com:向精神薬一覧と処方制限日数(クロナゼパム含む第三種向精神薬の一覧)
なな薬剤師ブログ:処方日数制限のある医薬品一覧【令和6年(2024年)最新版】