肝細胞壊死の診断において最も重要な検査項目は、血液中のトランスアミナーゼ測定です。**AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)**は、肝細胞が破壊されると血液中に大量に放出される酵素です。正常値はAST・ALTともに30U/L以下とされており、数値が高いほど肝細胞の破壊が進行していることを示します。
参考)肝細胞を破壊する三つの肝臓疾患
急性肝炎では肝細胞の大量破壊により、AST・ALTは500U/L以上の高値を示し、劇症肝炎やショック肝では2,000U/L以上に達することもあります。肝含有量を反映して、急性期の初期にはAST>ALTとなりますが、極期を過ぎると半減期の長いALTが血中に残存するため、AST<ALTとなる特徴的な変化を示します。
参考)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)
**LDH(乳酸脱水素酵素)**も重要な指標で、基準値124~222U/Lを超える場合、肝細胞をはじめとする体内の細胞が何らかの損傷を受けている可能性を示します。LDHは肝臓に最も多く含まれますが、心筋や骨格筋にも存在するため、他の検査項目と組み合わせた評価が必要です。
参考)LD - 血液検査の意味 l 肝機能の数値・肝臓の数値を調べ…
肝細胞壊死の進行度を評価するには、肝機能を反映する検査項目の測定が不可欠です。**プロトロンビン時間(PT)**は肝臓での蛋白合成能を反映し、正常値70-130%に対して40%以下となると重症と判定されます。急性肝不全では、PT活性値の低下が予後判定において重要な指標となります。
参考)急性肝不全 – 消化器の疾患
血清アルブミン値は肝臓の合成機能を示す重要な指標であり、慢性肝疾患の重症度判定に用いられます。また、血清総ビリルビン値の上昇は、肝細胞機能の低下や胆汁うっ滞を反映し、2mg/dL以上の顕性黄疸の出現は入院適応の基準となります。
参考)https://www.jslm.org/books/guideline/05_06/175.pdf
血中アンモニア値は肝性脳症の診断に重要で、正常値30-80μg/dLに対して200μg/dL以上では重度の肝性脳症を示唆します。これらの機能評価項目は、肝細胞壊死の範囲と肝予備能の評価に欠かせない検査です。
肝細胞壊死の原因を特定するためには、詳細な血液検査と問診が必要です。ウイルス性肝炎が最も多い原因であるため、A型・B型・C型・D型・E型肝炎ウイルスの血清学的検査が重要です。B型肝炎ではHBs抗原、C型肝炎ではHCV抗体の測定により診断が可能です。
参考)急性ウイルス性肝炎の概要 - 02. 肝胆道疾患 - MSD…
アルコール性肝障害では、AST/ALT比が2近くまで上昇する特徴があり、エタノールによってALT合成が阻害され、ミトコンドリアに及ぶ障害によりAST-mが逸脱するためとされています。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)では、画像検査で明らかな脂肪肝を認めなくても、AST/ALTの軽度上昇で短期間に肝硬変へ進展する可能性があります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/c4cb2b534a1bf0c18254b5e8494e85246a8edabe
薬剤性肝障害や自己免疫性肝炎の鑑別には、薬歴の詳細な聴取と自己抗体の測定が必要です。これらの検査により、肝細胞壊死の原因を特定し、適切な治療方針を決定することができます。
参考)肝臓および胆嚢の臨床検査 - 02. 肝胆道疾患 - MSD…
肝細胞壊死の重症度判定には、複数の検査項目を組み合わせた総合的な評価が必要です。AST/ALT比は病態評価において特に有用で、急性びまん性肝障害では初期にAST>ALT、極期を過ぎるとAST<ALTとなる変化を示します。慢性肝炎では半減期の差によりAST<ALTとなり、肝硬変や肝癌では正常肝細胞の減少によりAST優位となる傾向があります。
参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/91.html
急性肝不全の診断では、意識状態の評価にJCS(Japan Coma Scale)やGCS(Glasgow Coma Scale)を用いて、非昏睡型(JCS 0-3点)と昏睡型(JCS 100点以上)の鑑別を行います。昏睡型では集中治療室での厳重な管理が必要となり、予後も著しく不良となります。
血小板数は肝線維化の進行を反映し、10万/μL以下では肝硬変の可能性が高くなります。また、血小板数が5万/μL未満まで低下すると出血リスクが著しく上昇するため、肝生検などの侵襲的検査の適応を慎重に判断する必要があります。
参考)血液検査
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、痛みを発信する神経が臓器の表面にしかないため、内部の肝細胞が破壊されても自覚症状が起こりにくい特徴があります。このため、健康診断や定期的な血液検査による早期発見が極めて重要です。
肝炎ウイルス感染者は約200~250万人とされ、感染者の9割は40歳以上となっています。肝炎ウイルス検査は全国の保健所や指定医療機関で無料で受けることができ、血液検査のため身体への負担も少ない検査です。早期発見により、肝硬変や肝細胞癌への進展を防ぐことが可能です。
参考)患者さん 肝疾患センター 福井県済生会病院
慢性肝疾患では、AST・ALTが300~500IU/L以上となった場合は入院適応となり、外来での治療では改善が困難な重篤な病態と判断されます。また、初回の顕性黄疸出現時や肝性脳症の初発時も緊急入院の適応となり、迅速な診断と治療開始が患者の予後を大きく左右します。