ダウノルビシンの最も重要な副作用は心筋障害です。アントラサイクリン系抗がん剤の特徴として、累積投与量に依存して心毒性が発現することが知られています。心筋障害の発症頻度は0.1~5%未満とされていますが、発症すると生命に関わる重篤な状態となります。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00053487
心毒性は以下の段階で進行します。
参考)https://hokuto.app/medicine/ot4Ppw3gLk4avWaaSO20
心毒性の予防には以下の点が重要です。
特に注意すべきは、他のアントラサイクリン系薬剤や胸部放射線治療との併用時です。これらの組み合わせにより重篤な心臓障害のリスクが著しく増加します。
参考)https://www.anticancer-drug.net/antibiotic/daunorubicin.htm
骨髄抑制はダウノルビシンの代表的な副作用で、5%以上の高い頻度で発現します。治療開始後10~14日頃に最も顕著となり、以下の症状が現れます:
参考)https://www.fujioka-hosp.or.jp/regisetu/184_DNR-Ara-C_2IN1.pdf
白血球減少による影響。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00071358
血小板減少による影響。
貧血による影響。
管理のポイント。
消化器系副作用は患者のQOLに大きく影響する症状です。主な症状として以下が挙げられます。
潰瘍性口内炎。
悪心・嘔吐。
食欲不振。
対処法として以下が効果的です。
皮膚系副作用は外見に関わるため、患者の心理的負担が大きい症状です。
脱毛。
その他の皮膚症状。
脱毛対策として以下のアプローチが有効です。
意外な事実として、脱毛の程度や回復速度には個人差が大きく、一部の患者では治療中も完全な脱毛に至らないケースも報告されています。また、再生した毛髪の質や色が変化することもあり、患者への適切な情報提供が重要です。
ダウノルビシン投与時には一般的な副作用監視に加え、特殊な指標による管理が必要です。
心機能評価指標。
腎機能監視。
肝機能評価。
二次がんリスク管理。
特に注目すべきは、ダウノルビシンの薬物動態における個体差です。薬物クリアランスは個人により大きく異なり(CLss:154±101~172±101 mL/hr)、血中濃度の予測が困難な場合があります。そのため、治療効果と副作用のバランスを考慮した個別化投与が重要となります。
また、最近の研究では、遺伝子多型が副作用発現に与える影響が注目されており、将来的には薬理遺伝学的検査による副作用予測が可能になる可能性があります。
日本では医薬品副作用データベース(JADER)による副作用情報の収集・解析が行われており、継続的な安全性情報の更新により、より安全な治療プロトコルの確立が期待されています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/51/7/51_682_4/_article/-char/ja/