アレックスビーの効果期間は、国際共同第Ⅲ相臨床試験(RSV OA=ADJ-006試験)において詳細に検証されています。この試験では、60歳以上の成人24,966例(日本人1,038例を含む)を対象に、単回接種後の有効性を長期間にわたって追跡しました。最初のRSウイルスシーズン終了時の解析(追跡期間中央値6.7ヵ月)では、RSウイルス感染による下気道疾患の初回発現に対する有効性は82.58%と非常に高い数値を示しています。
参考)アレックスビー よくあるご質問
さらに注目すべきは、アレックスビーがRSウイルス流行期3シーズンにわたって有効性と安全性を示した初めてのRSウイルスワクチンである点です。3回目の流行期シーズン終了時の解析(追跡期間中央値30.6ヵ月)では、60歳以上の成人におけるRSウイルス感染による下気道疾患に対する累積有効性は62.9%(97.5% CI, 46.7-74.8)でした。この結果は、単回接種で2年以上の予防効果が期待できることを示しており、現時点では1回の接種で2~3年の有効期間が示されています。
参考)GSK、60歳以上を対象としたRSウイルスワクチン「アレック…
併存疾患を有する高齢者においても、アレックスビーは高い有効性を維持しています。1つ以上の注目すべき併存疾患(COPD、喘息、慢性心不全、糖尿病など)を持つ集団では、最初のシーズンで94.61%という驚異的な有効性が確認されました。
参考)RSウイルスワクチン アレックスビー
アレックスビーの長期的な効果持続には、ワクチンの独自の作用機序が深く関与しています。アレックスビーは、RSウイルスPreF3抗原とアジュバントシステムAS01Eで構成されており、このアジュバントがTLR4(Toll様受容体4)への結合をサポートします。TLR4に結合した抗原は免疫系に提示され、液性免疫だけでなく細胞性免疫まで誘導することが期待できます。
参考)アレックスビー(アレックスビー筋注用) href="https://kobe-kishida-clinic.com/vaccination/arexvy-intramuscular-injection/" target="_blank">https://kobe-kishida-clinic.com/vaccination/arexvy-intramuscular-injection/amp;#8211; RS…
この二重の免疫誘導機序により、アレックスビーは単なる抗体産生だけでなく、長期的な免疫記憶の形成を促進します。臨床試験では、接種後1年以上経過しても有意な抗体価の維持が観察されており、3ヶ月後で95%以上、6ヶ月後で90%以上、1年後でも85%以上の抗体価維持率が報告されています。
高齢者における免疫応答の特性も、アレックスビーの効果期間を理解する上で重要です。高齢者では免疫老化(immunosenescence)により、ワクチンに対する免疫応答が一般的に低下する傾向がありますが、アレックスビーのアジュバント添加により、高齢者でも十分な免疫応答が誘導されることが確認されています。
参考)急性呼吸窮迫症候群における生体の反応と治療方針
現時点では、アレックスビーの追加接種の必要性やその時期に関して、公式に確定した推奨はありません。GSKの公式情報によれば、「現在、追加接種の必要性やその時期に関して提供可能な情報はありません」との見解が示されています。臨床試験が継続中であり、追加接種の時期は研究中の段階です。
参考)RSウイルスワクチン アレックスビーについて - 医療法人 …
しかし、海外の研究データからは、ワクチンの有効性が時間経過とともに弱まる傾向が示されています。米国ヴァンダービルト大学医療センターの研究では、RSウイルス感染症の発症と同じシーズンに接種した場合のワクチン有効性は69%であったのに対し、前シーズンに接種した場合の有効性は48%と低下していました。この結果を受けて、研究者らは「初回接種後、一定の間隔を置いてワクチンを再接種することは、より長期間にわたりRSウイルスに対する予防効果を維持するための戦略となり得る」と述べています。
参考)RSウイルスワクチンの1回接種は高齢者を2シーズン連続で守る…
米国CDCのウェブサイトには、「すでに1回接種を受けた人(昨年を含む)はワクチン接種を完了と見なされ、現時点で追加の接種を受ける必要はない」と記載されていますが、単回接種後の効果の持続期間や再接種の必要性について理解するために、ワクチンの有効性を今後も綿密にモニタリングしていくことが重要とされています。
参考)RSウイルスワクチン(アレックスビー)について
アレックスビーの効果期間は、接種者の基礎疾患や健康状態によって変動する可能性があります。特に注目すべきは、併存疾患を有する高齢者における有効性のデータです。最初のRSウイルスシーズンでは、COPD、喘息、慢性心不全、糖尿病などの基礎疾患を持つ60歳以上の集団において、有効性は94.6%と極めて高い数値を示しました。
しかし、長期的な観察では、併存疾患の種類によって効果持続に差異が見られることが報告されています。免疫抑制状態にある群では、2シーズンを合わせたワクチン有効性が30%と、免疫抑制状態にない群の67%と比較して有意に低い結果となりました。同様に、心血管疾患を有する群でのワクチン有効性は56%であったのに対し、非心血管疾患患者では80%と有意に高い有効性が確認されています。
慢性腎臓病患者についても、アレックスビーの効果が検討されています。介護施設や透析センターといった多世代が接触する閉鎖環境では、RSウイルスが容易に広がり、高齢者や免疫不全患者に深刻な影響を与えるため、このような集団でのワクチン接種が特に重要とされています。
参考)RSウイルスワクチン「アレックスビー」は慢性腎臓病患者を守れ…
呼吸器疾患を合併している高齢者は、RSウイルス感染症の重症化リスクが特に高く、肺炎罹患率は31~42%、人工呼吸器使用率は8~9%、短期致命率は11~13%と、インフルエンザウイルス感染者と同等の重症度を示します。特にCOPDが注目されており、RSウイルス感染がCOPDの増悪の主要な因子となり、COPDの進行を加速させている可能性が指摘されています。
参考)http://kumagaya-ph.or.jp/renkei/column/240316arexvy.pdf
アレックスビーの効果期間を考える上で、副反応の発現とその持続期間も重要な要素です。臨床試験における副反応データによれば、10%以上の頻度で発現する副反応には、接種部位の疼痛(60.9%)、頭痛(27.2%)、筋肉痛(28.9%)、関節痛(18.1%)、疲労(33.6%)があります。
参考)高齢者向けRSウイルスワクチン「アレックスビー」について
これらの副反応のほとんどは軽度から中等度で、数日以内に自然に消失します。1~10%未満の頻度で発現する副反応としては、接種部位の赤み(7.5%)、腫れ(5.5%)、発熱(2.0%)が報告されています。重篤な副反応は極めて稀であり、大多数の接種者が軽微な症状で済んでいます。
副反応のプロファイルは、長期的な観察においてもプラセボとの有意差が強く出たわけではないため、接種後数日間は倦怠感などが出てくる可能性がありますが、自然と治まるレベルとされています。重大な副反応としては、ショックやアナフィラキシー(通常接種後30分以内に出現する血圧低下、呼吸困難や全身性のじんましんを伴うアレルギー反応)が起こる可能性がありますが、発生頻度は非常に低いです。
参考)https://chiseikai.com/wp-content/uploads/2022/10/RSvirus.pdf
安全性と反応原性データは、第III相試験プログラムで当初得られた結果と一致しており、50~59歳を対象とした追加試験でも同様の安全性プロファイルが確認されています。最も多くみられた局所の有害事象は疼痛で、全身の有害事象では疲労、筋肉痛、関節痛、頭痛でした。
参考)GSK、RSウイルスワクチン「アレックスビー筋注用」の接種対…
GSK公式サイト:アレックスビーよくあるご質問
アレックスビーの効果期間、追加接種、安全性に関する最新情報と臨床試験データが掲載されています。
CareNet:RSウイルスワクチンの1回接種は高齢者を2シーズン連続で守る
米国での大規模研究に基づく、RSウイルスワクチンの長期有効性と追加接種の必要性に関する詳細な解説が提供されています。