獲得免疫と液性免疫の関係を正しく理解することは、医療従事者にとって免疫システムの全体像を把握する上で極めて重要です。結論から述べると、液性免疫は獲得免疫の一部であり、両者は包含関係にあります。
参考)獲得免疫における細胞性免疫とは?液性免疫との違いも詳しく解説…
獲得免疫は生まれた後に獲得される免疫システムで、特定の抗原を記憶し、二度目の感染時により効果的に対応できる特性を持ちます。この獲得免疫は、攻撃方法の違いによって「液性免疫」と「細胞性免疫」の2つに大別されます。液性免疫はB細胞が主体となって抗体を産生し、体液を介して全身で抗原を攻撃する仕組みです。一方、細胞性免疫はT細胞が主体となり、ウイルス感染細胞やがん細胞を直接攻撃して排除します。
参考)適応(獲得)免疫にはどのようなものがあるの?
液性免疫の中心的な役割を担うのがB細胞です。B細胞は骨髄で産生される白血球の一種で、リンパ球全体の約20〜40%を占める重要な免疫細胞です。抗原が体内に侵入すると、マクロファージや樹状細胞がその情報をヘルパーT細胞に伝達します。
参考)獲得免疫のひとつ「B細胞」とは?役割や働き方を解説!
ヘルパーT細胞の一種であるTh2細胞がサイトカインを産生すると、B細胞が活性化されて形質細胞へと分化します。この形質細胞が大量の抗体を産生し、血液やリンパ液などの体液を介して全身に広がることで、抗原を無力化します。抗体は病原体の毒素に結合して中和作用を発揮するだけでなく、マクロファージなどの食細胞が抗原を認識しやすくする目印としても機能します。
参考)液性免疫ってなに?液性免疫の説明とはたらきについて解説! href="https://www.euglab.jp/column/immunity/000446.html" target="_blank">https://www.euglab.jp/column/immunity/000446.htmlamp;…
活性化されたB細胞の一部はメモリーB細胞へと分化し、同じ抗原が再び侵入した際に迅速かつ大量の抗体を産生できるよう備えます。このメモリーB細胞による免疫記憶こそが、ワクチン療法の基本原理となっています。
参考)液性免疫 - Wikipedia
細胞性免疫は主にT細胞が担う免疫システムで、液性免疫とは異なり抗体を産生せず、免疫細胞が直接抗原を攻撃します。細胞性免疫の中心となるのはキラーT細胞(細胞傷害性T細胞)です。
参考)キラーT細胞とは?T細胞の種類や働きについて簡単に解説
キラーT細胞は樹状細胞などの抗原提示細胞から抗原情報を受け取り、ウイルス感染細胞やがん細胞を特定して直接攻撃します。この攻撃力の高さから「最強の免疫細胞」とも呼ばれ、ウイルス感染症やがん治療において重要な役割を果たしています。近年注目される免疫チェックポイント阻害剤やCAR-T細胞療法は、このキラーT細胞の機能を最大限に引き出す治療法です。
参考)細胞性免疫・エフェクター細胞 - 日本がん免疫学会
また、ヘルパーT細胞は司令塔として他の免疫細胞を活性化させ、制御性T細胞は過剰な免疫反応を抑制する役割を担います。これらのT細胞群が協調して働くことで、効果的かつ適切な免疫応答が実現されています。
液性免疫と細胞性免疫は独立して機能するのではなく、相互に補完し合う関係にあります。新型コロナウイルスワクチンの研究では、抗体価は年齢とともに低下する傾向が見られる一方で、細胞性免疫は高齢者でも比較的高く維持されることが報告されています。
参考)COVID-19関連研究成果報告 公益財団法人 日本呼吸器財…
液性免疫による抗体は、ウイルスの細胞への侵入を阻害する役割を担います。しかし抗体価は時間経過とともに低下しやすく、ワクチン接種後6ヶ月で大きく減少することが確認されています。一方、T細胞による細胞性免疫の減弱は軽度であり、長期間持続する傾向があります。
参考)https://www.hama-med.ac.jp/mt_files/76861b884ab6526236c65adafac0e412.pdf
興味深いことに、メモリーB細胞はワクチン接種後6ヶ月経過しても減少せず、むしろ増加することが明らかになっています。これは、ブースター接種時に迅速な抗体産生が可能となる基盤を提供しています。このように、液性免疫と細胞性免疫は異なる時間経過と特性を持ちながら、総合的に生体防御を担っているのです。
獲得免疫のバランスが崩れると、様々な免疫不全疾患が発症します。液性免疫不全はB細胞の異常により抗体が欠損する状態で、原発性免疫不全症の50〜60%を占めます。血清抗体価が低下すると細菌感染を起こしやすくなり、選択的IgA欠損症や分類不能型免疫不全症(CVID)などが代表的な疾患です。
参考)免疫不全疾患の概要 - 12. 免疫学;アレルギー疾患 - …
臨床現場において、ワクチン効果の評価には抗体価測定だけでなく、細胞性免疫応答の評価も重要です。特に免疫抑制剤治療中の患者や高齢者では、液性免疫と細胞性免疫の両面から包括的に免疫状態を評価することが推奨されます。また、早期のCD4陽性T細胞の応答からブースター接種後の抗体応答の強さを推測できる可能性も示されており、個別化医療への応用が期待されています。
参考)https://www.yamaguchi-u.ac.jp/weekly/36214/index.html
獲得免疫に関する研究は急速に進展しており、特に変異株への対応において重要な知見が蓄積されています。野生株由来ワクチンの2回接種では変異株スパイクに対するT細胞は誘導されますが、抗体の中和能はほとんど見られませんでした。しかしブースター接種により変異株に対する抗体と共にメモリーB細胞が初めて誘導されることが確認されています。
また、年齢や性別による免疫応答の違いも明らかになってきました。男性では年齢とともに抗体応答が顕著に低下し、濾胞ヘルパーT細胞応答も減弱しますが、女性では末梢ヘルパーT細胞応答の年齢による低下が見られないことが報告されています。このような個人差を考慮したワクチン戦略の構築が、今後の感染症対策において重要となるでしょう。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11177542/
さらに、人工リンパ組織の開発など、獲得免疫を制御する新たな治療法の研究も進められています。重度免疫不全患者に対する液性免疫と細胞性免疫の両方を誘導できる治療基盤の確立は、将来の免疫療法に大きな可能性をもたらすと期待されています。
参考)KAKEN href="https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21K07174/" target="_blank">https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21K07174/amp;mdash; 研究課題をさがす

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