膵臓がんの血液検査では、複数の腫瘍マーカーを組み合わせて測定することが一般的です。CA19-9は膵臓がん患者の70-80%で上昇が認められ、基準値は37.0 U/ml以下とされています。ただし、日本人の約10%を占めるLewis血液型陰性者ではCA19-9が生産されないため、偽陰性を示す点に注意が必要です。
参考)膵臓がんの検査方法は? 費用や流れ、受けるべき検査をわかりや…
CEA(基準値5.0 ng/ml以下)は膵臓がん患者の30-60%で上昇し、もともと大腸がんの指標として用いられていましたが、膵臓がんでも数値が上昇することがあります。その他、Span-1やDUPAN-2も膵臓がんの診断や治療経過の確認に用いられる腫瘍マーカーとして知られています。
参考)https://www.suizou.org/citizen/qa/qa03-1.htm
早期膵臓がんでのCA19-9陽性率は55.6%と報告されており、早期診断には限界があることが指摘されています。そのため、腫瘍マーカー検査は画像検査や医師の診察結果と併せて総合的に判断する必要があります。
日本膵臓学会:膵臓がんの腫瘍マーカーに関する詳細情報
CT検査はX線を体の周囲から当てて断面を画像化する検査で、膵臓がんの位置や形を細かく映し出すために造影剤を使用します。膵臓がんの有無や広がり、リンパ節や他臓器への転移の確認に有用です。
参考)膵臓がん 検査:[国立がん研究センター がん情報サービス 一…
MRI検査は強力な磁力と電波を使って体内部のさまざまな方向の断面を画像化でき、がんと正常組織を区別して映し出すことができます。特にMRCP(MR胆管膵管撮影)は、内視鏡や造影剤を使わずに胆管や膵管の状態を詳しく調べることができるため、体への負担が少ない検査として注目されています。
参考)MRCPについて.健診会 東京メディカルクリニック・人間ドッ…
膵癌診療ガイドラインでは、膵がんは膵管に影響を及ぼすことが多いことから、MRCPはその診断に有用であるとされています。MRCPとERCPの比較試験では、膵がんの診断における感度と特異度に有意差を認めず、MRCP単独の検討においても膵がんの診断における感度は95%、特異度は82%と高い診断能を有していることが報告されています。
国立がん研究センター:膵臓がんの画像検査について
超音波内視鏡検査(EUS: Endoscopic Ultrasonography)は、先端に超音波装置を備えた内視鏡で胃や十二指腸から膵臓を観察し、腫瘍に針を刺して組織を採取する検査です。EUSによる膵がんの存在診断の感度は高く、他の画像診断と比較すると有意に描出することができるため、良好な予後が期待できる小膵がんの検出に特に有用です。
参考)膵臓癌の早期診断・早期治療へ 
内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP: Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography)は、主膵管の狭窄している部位の細胞を採取したり、膵液を採取してがん細胞を確認する検査です。実際の膵臓がん検査では、腹部エコー、腹部CT、MRI(MRCP)などがまず行われ、膵臓がんが疑われた場合にEUSやERCPが行われるのが一般的な流れです。
参考)消化器内科 膵がんの内視鏡診断 - 市立大津市民病院
腫瘍が10mm以下という非常に小さい段階で発見できた場合、5年生存率は80%以上と報告されており、EUSは1cm以下の腫瘍を検出するために不可欠な検査とされています。
参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ags3.12004
国立がん研究センター:EUSやERCPを使った診断治療
膵臓がんの早期発見には、リスク因子を有する患者に対する効果的なスクリーニングシステムが重要です。High-grade危険因子としては、第一度近親者(親、子、きょうだい)に2人以上の膵がん家族歴、糖尿病の新規発症や増悪、腫瘍マーカーCA19-9の上昇、膵嚢胞や膵管拡張などが挙げられます。
参考)https://amh.ako.hyogo.jp/wp-content/uploads/2025/04/%E8%86%B5%E7%99%8C%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC-%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E7%94%A8.pdf
Low-grade危険因子には、膵がん家族歴(第一度近親者に1人)、糖尿病、肥満(BMI>30kg/㎡)、喫煙、飲酒(3合以上)、膵酵素異常、膵炎の既往などがあります。Low-grade危険因子を3項目以上有する場合、またはHigh-grade危険因子を1項目有する場合は、膵臓の精密検査と経過観察が必要とされています。
早期発見するためのスクリーニング検査には、まず低侵襲である血液検査や腹部超音波検査があります。検査結果に異常がみられ、自覚症状やリスク因子がある場合に精密検査がおこなわれ、腹部CT検査やMRCP検査でより精度の高い画像診断をおこなうという段階的なアプローチが推奨されています。
参考)膵臓がんを発見する精密検査について分かりやすく解説 
膵臓がんの新しい早期診断法として期待されているのが、血液中のマイクロRNAを解析する検査です。マイクロRNAは血液、唾液、尿などの体液に分泌される遺伝子の一種で、かかった病気に由来して量が特異的に変化するため、血液中のマイクロRNAの量を測定することで膵臓がんを発見できる仕組みです。
参考)膵臓がん発覚のきっかけと早期発見するには? 腫瘍マーカーは有…
マイクロRNAはCA19-9などの既存の腫瘍マーカーよりも早い段階で変化が現れるといわれており、研究では血清マイクロRNA検査の診断精度が94.3%と、CA19-9の75.5%を大きく上回る結果が報告されています。画像検査では検出が難しいステージ0レベルの早期膵臓がんの発見にも有用とされていますが、比較的新しいバイオマーカーであるため現在は研究段階であり、保険適用では受けることができません。
PET-CT検査は放射性薬剤(FDG)を用いてがん細胞の糖代謝を画像化する検査ですが、膵臓がんはFDGの集積が弱いことがあり、診断精度が限定的です。そのため、PET-CTは膵臓がんの初期診断よりも転移や再発の評価に適しており、CTやMRIと組み合わせて使用することでより正確な診断につながります。
参考)膵臓がんの検査とは? 画像検査から血液検査まで詳しく解説 
膵臓がん発覚のきっかけと早期発見に関する最新情報