細胞外液は何パーセント?体液分布と臨床意義

体液における細胞外液の割合は体重の何パーセントなのか、細胞内液との違いや年齢による変化、臨床での重要性について医療従事者向けに詳しく解説します。輸液療法や脱水管理に必須の知識をどう活用しますか?

細胞外液は何パーセント

この記事で分かること
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体液分布の基本比率

細胞外液は体重の20%、細胞内液は40%を占め、さらに細胞外液は血漿5%と組織間液15%に分けられます

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年齢による体液構成の違い

乳幼児では細胞外液が30-40%と多く、高齢者では細胞内液が30%まで減少するため脱水リスクが高まります

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臨床における重要性

細胞外液量の評価は輸液療法や低ナトリウム血症の鑑別、脱水管理において必須の知識です

細胞外液の割合と体液分布の基本

 

成人の体液は体重の約60%を占め、そのうち細胞外液は体重の20%、細胞内液は40%という比率で分布しています。この比率は「細胞内:細胞外=2:1」という簡潔な関係として覚えることができます。
参考)輸液の基礎知識

細胞外液はさらに毛細血管壁を境に二つのコンパートメントに分けられます。体重の15%を占める組織間液(間質液)と、体重の5%を占める血漿です。この関係を比率で表すと、細胞内液:組織間液:血漿=8:3:1となり、輸液療法を考える上で非常に重要な基礎知識となります。
参考)https://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse3443.pdf

体重60kgの成人を例にとると、総体内水分量は36L、そのうち細胞内液が24L、細胞外液が12L(組織間液9L、血漿3L)という計算になります。細胞外液は循環血液量を維持し、栄養素や酸素を細胞へ運搬する重要な役割を担っています。
参考)体液の量はどれくらい?|体液の成分と働き

体液区分 体重比(%) 60kg成人での量(L) 主な役割
総体液量 60% 36L 生命維持全般
細胞内液 40% 24L 代謝反応・エネルギー産生
細胞外液 20% 12L 循環・物質輸送
 組織間液 15% 9L 細胞環境維持
 血漿 5% 3L 循環血液量維持

細胞外液と細胞内液の組成と電解質の違い

細胞外液と細胞内液は、その電解質組成において明確な違いがあります。**細胞外液では主要な陽イオンはナトリウム(Na⁺)**であり、陰イオンは塩化物(Cl⁻)が中心です。一方、**細胞内液では主要な陽イオンはカリウム(K⁺)**であり、リン酸(HPO₄²⁻)の割合が高くなっています。
参考)生理学・生化学につながる ていねいな生物学 - 羊土社

ナトリウムは細胞外液の主要な陽イオンとして、体液の浸透圧を一定に保つ働きがあり、血圧の調整系と密接に関係しています。ナトリウムの増減はClとともに細胞外液量の増減を意味するため、循環管理において極めて重要な指標となります。
参考)電解質とは?身体のしくみと電解質異常

細胞外液の浸透圧は285±5mOsm/kgH₂Oに保たれており、この恒常性の維持が細胞の正常な機能にとって不可欠です。細胞外液の電解質濃度が高くなると浸透圧が上昇し、細胞内から細胞外へ水が移動しやすくなります。逆に細胞外液の濃度が低いと、細胞内に水が入り細胞が膨張してしまいます。​
細胞外液は原始の海の名残りともいえる存在で、0.9%食塩水に近い組成をしています。この「内部環境」の変化は細胞に大きく影響を与えるため、その量と質を一定に保つこと(恒常性の維持)が生命維持に重要となります。
参考)細胞外液と細胞内液とは?役割と輸液の目的

  • 細胞外液: Na⁺が主要陽イオン、Cl⁻が主要陰イオン
  • 細胞内液: K⁺が主要陽イオン、HPO₄²⁻の割合が高い
  • 浸透圧: 285±5mOsm/kgH₂Oで厳密に調節
  • 血漿と組織間液: タンパク質濃度以外はほぼ同じ組成

細胞外液の割合は年齢によってどう変化するか

体液分布は年齢によって大きく変化し、この違いを理解することは小児や高齢者の輸液管理において極めて重要です。乳幼児では細胞外液量が体重の30-40%と成人の20%より著しく高く、細胞内液量は40%とほぼ同等です。これは新生児期には細胞外液の割合がさらに高く、成長とともに減少していくためです。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspen/32/3/32_1126/_pdf

一方、高齢者では細胞外液量は20%と成人と変わりませんが、細胞内液量が30%まで減少します。これは加齢に伴う筋肉量の減少が主な原因であり、筋肉組織は体内で最も水分含有量が高い組織であるためです。高齢者や女性、脂肪が多い体型では全身の体液量が少ないことが予測できます。​
乳幼児では細胞外液の割合が高いため、下痢や嘔吐などによる体液喪失の影響を受けやすく、脱水症になりやすい特徴があります。また、乳幼児は自発的に飲水できないため、高張性脱水のリスクも高くなります。
参考)脱水症の症状と治療|医療コラム|新百合ヶ丘総合病院

高齢者の場合、細胞内液が少ないため、脱水症により細胞外液を喪失した際に細胞内液からの補正の限界が早く、組織へのダメージが大きくなります。さらに、口渇感の低下により水分摂取が不十分になりがちで、これも高張性脱水のリスク因子となります。​

年齢区分 総体液量(%) 細胞外液(%) 細胞内液(%) 特徴
乳幼児 約70-80% 30-40% 40% 脱水になりやすい
成人 60% 20% 40% 標準的な体液分布
高齢者 約50% 20% 30% 細胞内液減少、補正能力低下

細胞外液量の評価方法と臨床的意義

細胞外液量の正確な評価は、低ナトリウム血症の鑑別診断や輸液療法の選択において極めて重要です。しかし、軽度の細胞外液の変化は判断が難しいケースも多く、複数の指標を総合的に評価する必要があります。
参考)M-Review|低Na血症の診断アプローチ—体液量評価をど…

臨床で用いられる評価項目には、(1)体重、(2)バイタルサイン(血圧・脈拍・尿量)、(3)中心静脈圧(カテーテルによる測定、頸静脈による推定、下大静脈径)、(4)脱水・溢水を示唆する身体所見、(5)血液・尿検査所見があります。​
細胞外液量減少の所見としては、皮膚ツルゴール低下、口腔粘膜・舌の乾燥、腋下乾燥、眼球陥没、爪の毛細管再充満時間延長(成人で2-3秒以上)、頸静脈虚脱、起立性低血圧、脈拍数増加などがあります。検査所見では、ヘマトクリット値上昇、血中BUN・クレアチニン値上昇、ANP・BNP低下、下大静脈径の虚脱などが認められます。
参考)低ナトリウム血症の診断|SIADH.JP 〜「抗利尿ホルモン…

細胞外液量増加の所見としては、四肢の浮腫、腹水、胸水、頸静脈怒張、体重増加、血圧上昇などがあり、検査所見ではヘマトクリット値低下、ANP・BNP上昇、下大静脈径拡張などが見られます。
参考)https://www.niigatah.johas.go.jp/about/archives/200304.html

低ナトリウム血症の鑑別において、細胞外液量減少では脱水症、細胞外液量増加では心不全・腎不全・肝硬変、細胞外液量がほぼ正常ではSIADHや副腎機能低下などが考えられます。
参考)低ナトリウム血症 - 10. 内分泌疾患と代謝性疾患 - M…

  • 身体所見: 皮膚ツルゴール、粘膜湿潤度、頸静脈の状態
  • バイタルサイン: 起立性低血圧、脈拍数変化
  • 画像検査: エコーによる下大静脈径測定
  • 検査所見: ヘマトクリット、BUN/Cr比、ANP/BNP
  • 輸液負荷試験: 反応性を見る動的評価

細胞外液量と輸液療法の選択

輸液療法の目的は、(1)血管内volumeを速やかに補正し、血圧を維持し、末梢臓器血流を保つこと、(2)1日の水分量や電解質を保つことの2つに分類されます。脱水や出血など急性期の循環血漿量減少が想定される場合は細胞外液補充液を中心に投与し、急性期を脱した後は維持液を中心に投与します。
参考)第10回 一歩進んだ輸液の考え方 - 総合内科流 一歩上を行…

細胞外液補充液(生理食塩水、乳酸リンゲル液など)は、投与後に細胞内へは移動せず、細胞外に分布して細胞外液量を増加させます。救急外来や急変時の輸液は原則として細胞外液のみで良く、高クロール性代謝性アシドーシスなどのリスクを鑑みて、生理食塩水よりも乳酸リンゲル液を第1選択とする施設が多くなっています。
参考)水・電解質輸液

細胞外液の分布を理解することは、輸液の効果を予測する上で不可欠です。例えば、1000mLの生理食塩水を投与した場合、細胞外液(血管内:組織間液=1:3)に分布するため、実際に血管内に留まるのは約250mLのみで、残りの750mLは組織間液に移行します。この比率8:3:1を理解していれば、循環血液量を増やすためにどの程度の輸液量が必要か計算できます。
参考)https://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse2992.pdf

脱水症の治療においても、高張性脱水では低張液の輸液が、等張性脱水では細胞外液補充液が、低張性脱水では電解質補正が中心となり、細胞外液の状態に応じた適切な輸液選択が求められます。うっ血性心不全など細胞外液量過剰の患者では、血管内に多くの水分を投与したくない場合にルート確保目的で5%ブドウ糖液を緩徐に投与することもあります。
参考)点滴・輸液の考え方

病態 細胞外液量 推奨輸液 理由
脱水・ショック 減少 細胞外液補充液 循環血液量の迅速な回復
維持輸液 正常 維持液 1日の水分・電解質維持
心不全 増加(浮腫) 5%ブドウ糖液(少量) 細胞外液量増加回避
高張性脱水 減少(高Na) 低張液 浸透圧補正

細胞外液量の測定法と研究的アプローチ

細胞外液量の測定には、古典的には色素希釈法や放射性同位元素を用いた方法が研究レベルで行われてきました。臨床研究では、⁵¹Cr-EDTA法やインジゴカルミン法などが細胞外液量の定量に使用されてきた歴史があります。
参考)細胞外液量の測定法 (臨床検査 9巻13号)

しかし、これらの測定方法は時間がかかり、実際の臨床現場での迅速な判断には適していません。そのため、現在の臨床では前述した身体所見、バイタルサイン、検査所見、画像検査などを組み合わせた総合的評価が主流となっています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/f0352a21c0ffddb41a18d7d4f659dee97084c269

近年では、バイオインピーダンス法(体組成計の原理)を用いた体液量測定も研究されていますが、細胞外液と細胞内液を正確に区別することの難しさが課題となっています。臨床的には、体重変化、尿量、in-outバランスの経時的なモニタリングが実用的なアプローチとして重要です。​
集中治療領域では、より精密な循環管理のために、肺動脈カテーテルによる肺動脈楔入圧(PCWP)測定や、経肺熱希釈法による血管外肺水分量(EVLW)測定などが行われることもあります。これらは特に重症患者における細胞外液分布の詳細な評価に有用です。
参考)302 Found

細胞外液量の評価は「複数の指標を複合的に評価し、診断率を上げることが重要」とされており、単一の指標だけでなく、臨床経過を含めた総合的判断が求められます。​

  • 研究的測定法: ⁵¹Cr-EDTA法、色素希釈法
  • 臨床的評価: 身体所見+バイタル+検査所見の総合判断
  • 経時的モニタリング: 体重、尿量、in-outバランス
  • 画像評価: 下大静脈径のエコー測定
  • 侵襲的測定: PCWP、EVLW(集中治療領域)

 

 


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