レキップCR錠から後発品に切り替えても、先発品より「押し出しやすい」PTPだと患者の服薬転帰が変わることがあります。
ロピニロール(Ropinirole)は、非麦角系のドパミンD2受容体作動薬です。脳内でドパミン受容体を直接刺激することで、パーキンソン病の振戦・筋固縮・無動・姿勢反射障害といった運動症状を改善します。L-ドパと異なり、ドパミン前駆物質ではなくドパミン受容体そのものを刺激するため、L-ドパ長期投与で問題となるウェアリングオフ現象の補完に利用される点が特徴です。
国内で流通しているロピニロールの先発品は、大きく3製品に分類されます。
| 製品名 | 製造販売 | 剤形 | 代表薬価 | 適応 |
|---|---|---|---|---|
| レキップ錠(0.25mg/1mg/2mg) | GSK | 速放性経口錠 | 0.25mg:19.4円/錠 | パーキンソン病 |
| レキップCR錠(2mg/8mg) | GSK | 徐放性経口錠 | 2mg:93.8円/錠、8mg:301.4円/錠 | パーキンソン病 |
| ハルロピテープ(8〜40mg) | 久光製薬/協和キリン | 経皮吸収テープ | 8mg:287.6円/枚 | パーキンソン病 |
速放性のレキップ錠は1日3回服用が基本であり、国内第III相試験ではプラセボと比較してUPDRS PartII・PartIII合計点を有意に改善し、改善率はロピニロール群55.0%に対しプラセボ群28.3%という結果でした(p<0.001)。維持量の平均は約7.12mg/日(SD±2.88)とされています。
ここで注意が必要です。レキップ錠(速放錠)には「パーキンソン病」の適応のみが設定されており、欧米ではレストレスレッグス症候群(RLS:下肢静止不能症候群)への適応が認められているケースがある一方、日本国内の添付文書上はパーキンソン病のみが効能・効果として記載されています。RLSへの使用は国内では適応外となる点を押さえておくことが重要です。
つまり先発品3種類は剤形と用法がそれぞれ異なります。
レキップ錠(KEGG医薬品情報):添付文書全文・薬物動態・臨床成績を確認できます
後発品(ジェネリック医薬品)への切り替えは、患者の薬剤費削減と医療機関の経営効率化の両面で有益です。具体的な薬価差を見てみましょう。
| 先発品 | 先発品薬価 | 代表的な後発品例 | 後発品薬価 |
|---|---|---|---|
| レキップ錠2mg | 116.5円/錠 | ロピニロール錠2mg「JG」等 | 約28〜35円/錠 |
| レキップCR錠2mg | 93.8円/錠 | ロピニロール徐放錠2mg「サワイ」 | 46.8円/錠 |
| レキップCR錠8mg | 301.4円/錠 | ロピニロール徐放錠8mg「トーワ」等 | 162.7円/錠 |
例えばレキップCR錠8mgで維持療法中の患者が後発品に切り替えた場合、1錠あたり約138.7円の差が生じます。1日1回服用で1カ月(30日)使用すると、差額は約4,161円になります。これは1日のコンビニ食事代に相当する金額が毎月節約できる計算です。長期投与が前提のパーキンソン病治療において、この差は決して小さくありません。
ただし、薬価差だけで切り替えを判断するのは原則ではありません。
生物学的同等性試験では、沢井製薬のロピニロール徐放錠2mg「サワイ」がレキップCR錠2mgとの同等性を健康成人男性を対象に2剤2期クロスオーバー試験で証明しています。AUC・Cmaxともに許容範囲(80〜125%)内であることが確認されており、薬物動態的な観点からは先発品との互換性が担保されています。
これは使えそうな情報ですね。
ロピニロール徐放錠2mg「サワイ」の生物学的同等性試験論文(診療と新薬):先発品との血中濃度比較データを参照できます
生物学的同等性が確認されていても、医療従事者が見落としがちな点があります。それはPTP(Press-Through Package)の物性の違いです。
東京薬科大学の秋山らが行った比較研究(2020年・ジェネリック研究誌掲載)では、ロピニロール徐放錠2mgの先発品(レキップCR錠)と後発品2種(沢井製薬製・東和薬品製)を対象に、PTPからの押し出し強度・硬度・視認性を詳細に測定しています。
結果として、先発品のレキップCR錠は乳幼児誤飲防止を目的としたプッシュスルータイプPTPを採用しており、後発品2種と比較してPTPの押し出し強度が有意に高いことが確認されました。PTPの材質も先発品はPVC/PCTFE(2層構造)であるのに対し、後発品はPVDCまたはPP(単層構造)と異なっていました。
重要なのは、パーキンソン病患者の多くが手指の振戦・筋固縮を有する点です。
先発品の押し出し強度が高いということは、手指障害を持つ患者にとってはむしろ負担になる可能性があります。実際、健常人(薬学生10名)を対象としたアンケートでは、後発品2種の方が「押し出しやすい」という評価が有意に高く(Tukey test P<0.05)、日常的な服薬のしやすさに差があることが示されました。
先発品の錠剤視認性が高い場面もあります。
14錠PTPの裏面の視認性は先発品が最も高い評価を得ており、状況によって先発品・後発品それぞれに優位性があります。薬剤師が患者に交付する際は、PTPの切断方法・患者の手指機能・視覚機能を考慮した上で選択することが推奨されています。
ロピニロールの先発品・後発品を問わず、医療従事者が特に注意すべき副作用として衝動制御障害があります。これはパーキンソン病患者とその家族が最も気づきにくい副作用の一つです。
添付文書の8.4項には以下の記載があります。「レボドパ又はドパミン受容体作動薬の投与により、病的賭博(個人的生活の崩壊等の社会的に不利な結果を招くにもかかわらず、持続的にギャンブルを繰り返す状態)、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食等の衝動制御障害が報告されているので…患者及び家族等にこのような衝動制御障害の症状について説明すること」。
日本神経学会のパーキンソン病診療ガイドラインによれば、衝動制御障害の発現頻度はプラミペキソールとロピニロールの間で統計的に有意な差はないとされています。つまり薬剤を変えても同様のリスクがあります。
副作用の発現頻度で見ると、国内第III相試験(L-ドパ併用例)における副作用発現頻度はロピニロール群で72.7%(88/121例)と高く、主な副作用は悪心19.0%、傾眠11.6%、ジスキネジア10.7%、幻覚9.9%でした。副作用発現頻度が7割を超える点は押さえておきましょう。
衝動制御障害が原則として注意が必要です。
一方、重大な副作用に「突発的睡眠」があります。前兆なく突然眠り込む事例が海外では自動車事故と関連して報告されており、添付文書の警告欄(1項)にも明記されています。投与開始後1年以上経過してから初めて発現した例も報告されているため、長期投与中の患者にも継続的な生活指導が必要です。自動車運転・機械操作・高所作業は服用中は禁止となります。
また、薬剤離脱症候群についても注意が必要です。急激な減量・中止により悪性症候群(高熱・意識障害・高度筋硬直など)や、無感情・不安・うつ・疲労感・発汗・疼痛を特徴とする薬剤離脱症候群が発現し得ます。後発品への切り替え時に一時的に用量調整が生じる場合は漸減・漸増の原則を徹底することが条件です。
日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」第2章ドパミンアゴニスト:衝動制御障害の頻度比較・臨床的対応について記載されています
ロピニロールは主としてCYP1A2によって代謝されます。この代謝経路は薬物相互作用を引き起こす可能性があるため、先発品・後発品いずれを使用する際にも必ず確認が必要です。
CYP1A2阻害薬との相互作用は特に重要です。代表的なCYP1A2阻害薬としてシプロフロキサシン(ニューキノロン系抗菌薬)とフルボキサミン(抗うつ薬)が挙げられます。シプロフロキサシンとの併用によって、ロピニロールのCmaxが約60%、AUCが約84%増加したことが報告されています。高齢のパーキンソン病患者に感染症治療としてシプロフロキサシンが処方される場面は臨床でも起こり得るため、見落とすと副作用リスクが大幅に高まります。
これは臨床上見逃せない情報です。
また、高用量のエストロゲン製剤との併用でも血中濃度上昇が報告されており、併用開始・中止時には用量調整を考慮する必要があります。さらに、ドパミン拮抗薬(抗精神病薬・メトクロプラミド・スルピリドなど)との併用は、ロピニロールの作用を減弱させるため、これらが処方されていないかを定期的に確認することが大切です。
腎機能・肝機能に関しては以下の点が基本です。
ロピニロールは主として肝臓で代謝(CYP1A2)され、代謝産物が主として腎臓から排泄されます。重度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/分未満)の患者については、専用の臨床試験データがないため慎重な使用が求められます。なお添付文書では、血液透析を受けている患者に対して透析による用量調節の必要性はないとも記載されています。肝障害患者についても専用試験データが乏しく、注意深いモニタリングが必要です。
食事の影響についても実用的な知識として把握しておきましょう。食後投与ではTmaxが約2.5時間遅延し、Cmaxが約25%低下しますが、AUCにはほとんど差がなく、バイオアベイラビリティには影響しないとされています(外国人データ)。一方、空腹時投与では悪心・嘔吐などの消化器症状が増加しやすいため、添付文書上も「食後投与が望ましい」と明記されています。食後が原則です。
MSDマニュアル「ジェネリック医薬品の生物学的同等性と互換性」:先発品と後発品の互換性を考えるうえでの基本的な解説が載っています
ロピニロール先発品の中で、ハルロピテープは他の2製品と性質が大きく異なります。これは、TDDS(Transdermal Drug Delivery System:経皮薬物送達システム)技術を活用した全身性の経皮吸収型製剤です。
最も重要な臨床的特徴は、24時間安定した血中濃度が維持できる点です。経口錠(速放錠)では服用間隔に応じて血中濃度が上下しますが、ハルロピテープは1日1回の貼付で血中濃度を比較的フラットに保てます。これはウェアリングオフ現象の管理において理論的なメリットがあります。
国内第III相試験では、L-ドパ併用パーキンソン病患者を対象にハルロピテープのプラセボに対する優越性と、経口剤(ロピニロール速放錠)に対する非劣性が同時に証明されました。UPDRS part III合計スコアの変化量はハルロピテープ群−9.8点に対しプラセボ群−4.3点(p<0.0001で優越)、経口剤との差は0.3点(非劣性マージン2.5以内)でした。効果は同等です。
ハルロピテープの適用部位は胸部・腹部・腹側部・大腿部・上腕部のいずれかで、24時間ごとに貼り替えます。開始用量は1日1回8mgから始め、1週間以上の間隔で8mgずつ増量し、最大1日量は64mgを超えないようにします。
一方、デメリットもあります。適用部位紅斑(16.3%)・適用部位そう痒感(13.6%)など皮膚刺激系の副作用が高頻度で発現します。また、ハルロピテープには現時点で後発品が存在しません。例えばハルロピテープ40mg(766.2円/枚)は貼付剤としての1日薬価が高めになります。経口錠と比較した場合のコスト面は処方前に確認が必要です。
嚥下困難・消化管障害・認知機能の低下で経口剤が服用困難な患者、あるいは消化器系副作用(悪心・嘔吐)が強い患者に対しては、ハルロピテープへの切り替えが一つの選択肢となります。服薬アドヒアランスの観点から、介護者が貼付剤の管理をしやすい環境が整っている場合にも有用です。
厳しいところですが、ハルロピテープには後発品がないため薬価負担が続く点は患者への説明でも触れる必要があります。
PASSMED「ハルロピテープ(ロピニロール)の作用機序:ニュープロパッチとの違い」:国内第III相試験のデータ・副作用頻度・用法用量が整理されています