ペグイントロン添付文書で確認すべき禁忌と重大副作用

ペグイントロンの添付文書に記載された禁忌・用法用量・重大な副作用を医療従事者向けに詳しく解説。小柴胡湯との併用禁忌や精神神経障害への対応など、見落としやすい注意点を把握できていますか?

ペグイントロン添付文書で押さえるべき禁忌・用法・重大副作用

添付文書を「ざっと確認した」だけで投与を進めると、57%の患者にうつ病が発現するリスクを見落とします。


この記事の3つのポイント
🚫
禁忌は6項目あり見落としに注意

小柴胡湯との併用禁忌など、他のインターフェロン製剤と共通する禁忌事項を正確に把握することが安全投与の第一歩です。

💊
用法・用量は適応によって大きく異なる

C型慢性肝炎・C型代償性肝硬変・悪性黒色腫の3つの適応で投与量が異なり、体重換算の計算も必要です。

⚠️
精神神経障害は投与終了後も継続観察が必要

抑うつ・自殺企図は投与中のみでなく投与終了後にも発現することがあり、継続的なモニタリング体制の構築が求められます。


ペグイントロン添付文書の基本情報と販売状況の確認



ペグイントロン(一般名:ペグインターフェロン アルファ-2b〔遺伝子組換え〕)は、MSDが製造・販売するペグ化インターフェロン製剤です。通常のインターフェロンにポリエチレングリコール(PEG)を結合させることで半減期を延長し、週1回の皮下注射で十分な血中濃度を維持できるよう設計されています。


添付文書上の剤形は凍結乾燥注射用粉末であり、日本薬局方「注射用水」0.7 mLを添加して溶解後に使用する点が特徴です。規格は50 μg/0.5 mL用、100 μg/0.5 mL用、150 μg/0.5 mL用の3種類があります。薬価は150 μg製剤で1瓶46,581円と高額です。貯法は「凍結を避け、2〜8℃に保存」であり、室温放置や冷凍保存は品質劣化につながるため、医療機関の冷蔵庫管理が必須です。


有効期間は3年間です。


国内では2004年12月にC型慢性肝炎に対する適応で承認され、2011年にC型代償性肝硬変、2015年5月には悪性黒色腫における術後補助療法の適応が追加されました。しかし近年、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の登場によりC型肝炎治療の主軸が大きく変化し、また悪性黒色腫においても免疫チェックポイント阻害薬が台頭した結果、ペグイントロンに対する医療ニーズは著しく低下しました。これを受けてMSDは製造ラインを閉鎖する方針を決定し、販売中止を告知しています。現在は在庫限りでの供給状況となっており、新規処方を検討する際は在庫状況の事前確認が欠かせません。つまり処方前の在庫確認が原則です。


既に投与が継続されている患者への対応については、担当医が患者状態を考慮した上で代替治療への切り替えを検討する必要があります。


参考:日本皮膚悪性腫瘍学会によるペグイントロン販売中止に関するお知らせ
http://www.skincancer.jp/info_drug-pegintron_2021.html


ペグイントロン添付文書に記載された効能・効果と適応の注意点

添付文書に定められているペグイントロンの効能・効果は、大きく3つに分類されます。1つ目は「リバビリンとの併用によるC型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善」です。対象は「血中HCV RNA量が高値の患者」および「インターフェロン製剤単独療法で無効の患者またはインターフェロン製剤単独療法後再燃した患者」の2つのカテゴリーです。2つ目は「リバビリンとの併用によるC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」、3つ目が「悪性黒色腫における術後補助療法」です。


効能・効果に関連する注意として、添付文書(5項)は複数の重要事項を規定しています。まず、本剤を使用する際はHCV RNAが陽性であること、および組織像または肝予備能・血小板数などから慢性肝炎または代償性肝硬変であることを事前に確認することが必要です。血中HCV RNA量が高値のC型慢性肝炎に本剤を使用する場合は、RT-PCR法で10⁵ IU/mL以上またはb-DNA法で1 Meq./mL以上であることを確認しなければなりません。


悪性黒色腫における術後補助療法の場合は、ステージⅢの患者に限って投与することとされています。これは重要なポイントです。ステージⅡの患者に適用することは添付文書上の適応外使用となるため、注意が必要です。また、本剤を悪性黒色腫に使用する際は「がんに対する薬物療法について十分な知識・経験を持つ医師のもとで」施行することが義務付けられています(8.12項)。


C型代償性肝硬変に対するリバビリン併用療法はウイルス血症の改善を目的としたものであり、肝硬変そのものを治療するものではない点も明記されています。これが基本です。


ペグイントロン添付文書の用法・用量と体重別投与量の早見表

用法・用量は適応によって大きく異なり、正確な理解と計算が求められます。まず、いずれの適応においても投与経路は皮下注射のみです。静脈内投与はできません。


〈C型慢性肝炎〉


リバビリンと必ず併用し、通常、ペグインターフェロン アルファ-2b として「1回1.5 μg/kg」を週1回皮下投与します。通常の投与期間は、セログループ1(ジェノタイプⅠまたはⅡ)かつHCV RNA高値の患者では48週間です。それ以外の患者では24週間が標準です。なお、24週間以上投与しても効果が認められない場合は投与中止を考慮します。


体重別の投与量の目安は次の通りです。


| 体重(kg) | 投与量(μg) |
|---|---|
| 35〜45 | 60 |
| 46〜60 | 80 |
| 61〜75 | 100 |
| 76〜90 | 120 |
| 91〜120 | 150 |


〈C型代償性肝硬変〉


リバビリン併用で「1回1.0 μg/kg」を週1回皮下投与します。慢性肝炎より1段階少ない投与量です。こちらも通常の投与期間は48週間です。


〈悪性黒色腫〉


投与量が他の適応と大きく異なります。8週目までは「1回6 μg/kg」を週1回、9週目以降は「1回3 μg/kg」を週1回、皮下投与します。例えば体重60 kgの患者では、8週目まで360 μg/週、9週目以降は180 μg/週の投与量となります。これはC型慢性肝炎への投与量(同体重で100 μg/週)の約3〜4倍に相当する高用量であり、副作用の発現頻度や重篤度も高くなることを念頭に置く必要があります。高用量だけは特に注意が必要です。


投与開始前のヘモグロビン濃度が14 g/dL未満、好中球数2,000/mm³未満、あるいは血小板数120,000/mm³未満の患者、高齢者および女性は減量が必要な頻度が高い傾向にあるため、投与開始から2週間は原則として入院させることが添付文書(7.7項)に定められています。


参考:PMDAに掲載されているペグイントロン添付文書(carenet掲載版)
https://www.carenet.com/drugs/materials/pdf/170050_6399420D1021_1_29.pdf


ペグイントロン添付文書の禁忌6項目と見落としやすい注意事項

禁忌の正確な把握は、投与前の最重要確認事項です。ペグイントロンの添付文書(2項)には以下の6つの禁忌が規定されています。


- 本剤または他のインターフェロン製剤に対する過敏症の既往歴がある患者:過去に他のインターフェロン製剤でアナフィラキシー等を起こしたことがある場合も該当します。


- ワクチン等生物学的製剤に対して過敏症の既往歴がある患者:ワクチン接種歴と副反応のスクリーニングが必要です。


- 小柴胡湯を投与中の患者:インターフェロン アルファ製剤と小柴胡湯の併用で間質性肺炎が報告されており、機序は不明ですが、併用は絶対禁忌です。


- 自己免疫性肝炎の患者:投与により自己免疫性肝炎が悪化するおそれがあります。


- 非代償性肝疾患の患者:肝疾患がさらに悪化するリスクがあります。


- C型慢性肝炎およびC型代償性肝硬変の場合、妊婦または妊娠している可能性のある女性:なお悪性黒色腫の場合は禁忌ではなく「慎重投与・要相談」に分類されます(適応によって異なる点に留意が必要です)。


医療現場で特に見落とされやすいのが「小柴胡湯」です。漢方薬は患者が自己判断で服用していることも多く、問診票に記載がない場合があります。インターフェロン製剤の投与前には、市販薬・漢方薬を含めた全ての薬剤使用歴を確認することが基本です。


次に慎重投与(添付文書9項「特定の背景を有する患者に関する注意」)に相当する患者群は非常に広範にわたります。中枢・精神神経障害またはその既往歴のある患者、高度の白血球減少・好中球減少・血小板減少のある患者、心疾患またはその既往歴のある患者、自己免疫疾患またはその素因がある患者、甲状腺機能異常またはその既往歴のある患者、アレルギー素因のある患者、高血圧症の患者、糖尿病またはその既往歴・家族歴のある患者、痙攣発作のある患者、間質性肺炎の既往歴のある患者、慢性腎不全またはクレアチニンクリアランスが50 mL/分以下の腎機能障害のある患者、などが対象となります。


これらに該当する患者はかなり多く、実臨床では慎重投与対象となる患者が大半を占めることも珍しくありません。投与前の全身評価とベースラインデータの記録が重要です。


ペグイントロン添付文書に記載された重大な副作用と発現頻度

ペグイントロンの添付文書(11.1項)に記載されている重大な副作用は多岐にわたります。医療従事者が特に意識すべき主要なものを以下に整理します。


精神神経障害(抑うつ・うつ病、自殺企図、躁状態、攻撃的行動)


これが添付文書上でも「警告」(1項)に記載される最重要副作用です。悪性黒色腫への術後補助療法の海外第Ⅲ相試験(EORTC18991試験)では、うつ病の発現率がペグイントロン群で57%(359/627例)に達しました。また、精神神経障害は投与期間48週間を超えて初めて発現するケースも8例(Grade 3以上)に認められており、投与終了後も観察を継続することが添付文書に明記されています。投与後も油断はできません。


血液毒性(貧血、無顆粒球症、白血球減少、顆粒球減少、血小板減少、再生不良性貧血、汎血球減少


EORTC18991試験における血液毒性の発現率は非常に高く、好中球数減少が80%(493/620例)、白血球数減少が62%(384/623例)、血小板数減少が50%(310/623例)に達しています。Grade 3以上の好中球数減少も26%(163/620例)に認められており、感染症や出血リスクに直結します。好中球数500/mm³未満となった場合には投与を休薬し、500/mm³以上に回復してから再開(1段階減量)する基準が添付文書(7.10項)に規定されています。


間質性肺炎、肺線維症、肺水腫


発熱・咳嗽・呼吸困難が出現した際には即座に疑う必要があります。間質性肺炎の既往歴がある患者は特に再発リスクが高く、定期的な胸部X線と聴診が推奨されています。発症した場合は投与を中止し、必要に応じて副腎皮質ホルモン剤を投与します。


網膜症(1〜5%未満)


投与期間中は定期的な眼底検査が必要です。糖尿病または高血圧の既往がある患者では発症リスクが高まります。網膜症が発現または悪化した場合は投与を中止します。


心臓障害(心筋症、心不全、心筋梗塞、狭心症、不整脈)


EORTC18991試験ではペグイントロン群の3%(19/627例)に心臓障害関連有害事象が認められました。定期的な心電図検査が必要です。


その他、溶血性尿毒症症候群(HUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、重篤な肝障害、急性腎障害、消化管出血、脳出血・脳梗塞、敗血症、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、横紋筋融解症なども重大な副作用として列挙されています。副作用の種類はきわめて多いということですね。


参考:MSDコネクト掲載のペグイントロン適正使用ガイド(悪性黒色腫・術後補助療法)
https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2021/10/properuse_guide_pegintron.pdf


ペグイントロン添付文書の相互作用と独自視点:ワルファリン管理の盲点

ペグイントロンの添付文書(10項)には、併用禁忌と併用注意の2段階で薬物相互作用が規定されています。


併用禁忌は小柴胡湯のみです。前述のとおり、間質性肺炎が発現するリスクがあります。


併用注意として規定されている薬剤は複数存在します。代表的なものは次の通りです。


- ワルファリン:インターフェロン製剤がヒトの肝チトクロームP450分子種CYP1A2の量と活性を低下させるため、ワルファリンの血中濃度が上昇し、抗凝固作用が増強されます。PT-INRの変動には特に注意が必要です。


- テオフィリンチザニジン(CYP1A2の基質となる薬剤):同様のメカニズムで血中濃度が上昇します。


- メトプロロール・アミトリプチリン(CYP2D6で代謝される薬剤):CYP2D6を介した代謝が変動し、血中濃度が上昇する可能性があります。


- ジドブジン製剤(HIV治療薬):骨髄機能抑制作用の増強、白血球減少等の血球減少が増悪するおそれがあります。HIV/HCV重複感染患者では特に注意が必要です。


- 免疫抑制剤:免疫抑制効果が弱まる可能性があります。臓器移植後の患者での使用は慎重な判断が求められます。


ここで医療現場で意識されにくい盲点を一つ指摘します。それはワルファリン管理の問題です。C型慢性肝炎やC型代償性肝硬変の患者は、肝線維化の進行に伴い凝固系の変化が起きやすい状態にあります。そこにペグイントロン投与によるCYP1A2抑制が加わると、ワルファリンの作用が二重に増強されるリスクがあります。これは使えそうな情報です。


具体的には、肝硬変に伴うPT延長がある患者がワルファリンを内服している場合、ペグイントロン投与開始後にPT-INRが急上昇する事例が報告されています。肝疾患既往のある患者でワルファリンを使用している場合は、ペグイントロン開始後の初期2〜4週は特に頻回なINRモニタリングを検討することが賢明です。


また、C型慢性肝炎患者の一部は、肝疾患治療中にSSRI等の抗うつ薬が処方されることがあります。アミトリプチリンのようなCYP2D6基質となる薬剤は血中濃度上昇に注意が必要ですが、SSRI(特にフルボキサミンパロキセチン)との相互作用についても個別に添付文書を確認する習慣が大切です。


参考:ペグイントロン医薬品ガイド(MSDコネクト)
https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2022/01/ppi_pegintron_injn.pdf






【第2類医薬品】アレジオン20 48錠