オメガ3脂肪酸、特にEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、心血管系の健康維持において重要な役割を果たします。これらの脂肪酸は血中の中性脂肪を20~30%、総コレステロールを5~10%減少させることが報告されており、血液をサラサラに保つ作用があります。フラミンガム心臓研究の追跡調査では、オメガ3系脂肪酸濃度が高い人は低い人に比べて死亡リスクが約33%低くなることが示されました。
参考)【医師監修】11つのオメガ3効果と摂取方法|認知機能・心血管…
心血管保護のメカニズムとして、オメガ3脂肪酸はGPR120/FFAR4受容体への結合を介して、細胞膜のリン脂質リモデリングを促進し、炎症性シグナル分子のクラスタリングを阻害します。これによりNF-κBやインフラマソームの活性化が抑制され、酸化ストレスが軽減されます。特にEPAは、DHA単独やEPA/DHA併用療法と比較して、動脈硬化性プラークの形態や内皮機能に対してより顕著な効果を示すことが明らかになっています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11990730/
国立がん研究センターの研究では、血中コレステロール値よりもオメガ3系脂肪酸レベルの方が、心疾患のリスク評価において効果的であることが判明しました。大規模臨床試験REDUCE-ITでは、EPA単独製剤が主要心血管イベントを有意に減少させることが証明され、心疾患患者へのEPA摂取が推奨されるようになりました。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10334139/
オメガ3脂肪酸の肥満および代謝性疾患への効果に関する詳細な研究報告
DHAは脳内総脂肪酸の約11%を占め、α-リノレン酸(約0.2%)やEPA(0.1%以下)と比較して圧倒的に多く含まれています。DHAは神経細胞膜の主要な構造成分であり、細胞膜の流動性を高めることで神経伝達やシナプス可塑性を促進します。これにより記憶力や判断力の向上が期待されます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4772061/
複数のメタアナリシスによると、魚やオメガ3脂肪酸の摂取は軽度認知機能障害(MCI)やアルツハイマー病の発症リスク低減と関連していることが示されています。特に中年期から摂取を開始し、適切な形態で継続することで、加齢性認知機能低下や軽度認知機能障害高齢者の認知機能低下の進行を抑制できる可能性があります。MRI画像診断では、オメガ3系脂肪酸を摂取している人は摂取していない人に比べて、主要な脳領域の萎縮が少ないことが確認されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11878108/
興味深いことに、EPA豊富なオイルを摂取した健康な若年成人では、DHA豊富なオイルと比較して全体的な認知機能が向上することが無作為化対照試験で示されました。前頭前野のヘモグロビン酸素化が減少したことから、神経効率性フレームワークの観点では、オメガ3脂肪酸が脳の効率性向上に寄与している可能性が示唆されています。ただし、すでに認知症を発症している患者に対する効果は限定的であり、予防的介入としての早期摂取が重要です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11830470/
オメガ3脂肪酸と認知機能に関する用量反応メタアナリシス
オメガ3脂肪酸の抗炎症作用は、従来考えられていたオメガ6系脂肪酸との競合的阻害だけでなく、複数のメカニズムによって発揮されます。EPAやDHAから代謝される物質であるレゾルビン、プロテクチン、マレシンなどは強力な抗炎症作用を持つことが近年の研究で明らかになっています。これらの専門的炎症解消メディエーター(SPM)は、炎症の終息過程において重要な役割を果たします。
参考)新型コロナウイルス対策ーオメガ3系脂肪酸の有用性に関するエビ…
慢性腎臓病患者87人を対象とした臨床試験では、オメガ3系脂肪酸(EPAを330mg、DHAを220mg、α-リノレン酸を100mg含有)を6ヶ月間投与した結果、動脈硬化のリスクとなるサイトカインが減少しました。人工透析患者においても、オメガ3系脂肪酸(EPAを360mg、DHAを240mg)の3ヶ月間の投与により、IL-6およびCRPの有意な低下が認められています。
肥満は慢性炎症性疾患として捉えられており、オメガ3多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)がこれを緩和することが報告されています。また、国立がん研究センターのメタアナリシスでは、オメガ3系脂肪酸を摂取した群は摂取していない群と比較して不安症状が軽減されることが明らかになり、効果量は0.374と中程度でした。特に1日2,000mg以上の摂取で抗不安効果が認められ、身体疾患や精神疾患の臨床診断を抱えている人で効果が大きいことが示されています。
参考)https://www.mdpi.com/2072-6643/17/7/1253
国立がん研究センターによるオメガ3系脂肪酸の不安症状軽減効果に関するメタアナリシス
オメガ3脂肪酸には主にEPA(20:5)、DHA(22:6)、DPA(22:5)が含まれますが、それぞれ異なる生理機能を持ちます。EPAとDHAは化学構造が類似していますが、体内では異なる役割を担っており、EPAは主に抗炎症作用や心臓の健康維持で知られ、中性脂肪値を下げる可能性があります。一方、DHAは脳細胞の主要な構造成分であり、認知機能や記憶力のサポート、さらに網膜の健康維持に貢献します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5963985/
分子動力学シミュレーション研究によると、EPA、DHA、DPAは膜組織内での相互作用が異なり、これが臨床効果の差異に寄与している可能性があります。EPA含有リン脂質は、DHA含有リン脂質よりも膜秩序が低く、コレステロール添加後の秩序増加も少ないことが示されています。このような膜動態の違いが、EPAとDHAの特異的な生理作用を生み出していると考えられます。
α-リノレン酸は植物由来のオメガ3脂肪酸で、アマニ油、エゴマ油、くるみなどに含まれます。体内でα-リノレン酸はEPAやDHAに変換されますが、その変換効率は限定的です。そのため、EPAとDHAを直接摂取できる海産物からの摂取が効率的とされています。医薬基盤・健康・栄養研究所と東京大学の共同研究では、腸内細菌によりα-リノレン酸がユニークな飽和化代謝を経てαKetoAに変換され、新たな機能性を持つことも報告されています。
参考)腸内細菌により作られるオメガ3脂肪酸代謝物αKetoA(アル…
腸内細菌により作られるオメガ3脂肪酸代謝物に関するAMEDの研究成果
厚生労働省の「日本食事摂取基準2020年版」によると、オメガ3脂肪酸の摂取目安量は成人一人当たり一日1.6g~2.2gとされています。アマニ油はオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)の含有率が高いため、小さじ一杯(約4.6g)を摂取すれば一日の摂取目安量をクリアできます。海産物では、サバ、マグロ、サーモン、イワシなどの青魚にEPAとDHAが豊富に含まれています。
参考)オメガ3脂肪酸の摂取量の目安は?豊富に含まれる食品の効果・効…
医療従事者が患者に指導する際の重要なポイントとして、オメガ3脂肪酸は空気・光・熱にさらされることで酸化による劣化が進みやすいという性質があります。酸化が進んだ脂質は体内で過剰な活性酸素を発生させる原因となるため、保存方法や調理法に注意が必要です。冷暗所での保管や、加熱調理よりも生食が推奨されます。
参考)オメガ3サプリのおすすめ人気ランキング【2025年10月】
サプリメントを利用する場合、オメガ3系脂肪酸の摂取量を1日2,000mg以上に設定すると抗不安効果が期待できます。ただし、過度な摂取は健康に悪影響を及ぼす可能性もあるため、摂取目安量の上限を超えない範囲での摂取が重要です。主な副作用として軽度の消化器症状が報告されています。
参考)【オメガ3脂肪酸の摂取量上限】適切な量で健康効果を得るために
患者への栄養指導では、脂肪酸バランスの重要性も強調すべきです。現代の欧米型食事では、食用油に多く含まれるリノール酸などのオメガ6系脂肪酸の摂取量が増加しており、オメガ3系脂肪酸が相対的に欠乏する傾向にあります。オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸のバランスが崩れると、心血管系機能だけでなく中枢神経系の機能も低下し、脳の発達障害やうつ病、認知症などの発症要因になる可能性があります。
参考)オメガ3とは?│含まれる食品や上手な摂り方も解説!
厚生労働省「統合医療」情報発信サイト:オメガ3脂肪酸について知っておくべき7つのこと

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