乳酸リンゲル液の添付文書において、最も重要な副作用として アナフィラキシーショック が記載されています。この重大な副作用は頻度不明とされており、呼吸困難、血圧低下、頻脈、蕁麻疹、潮紅等の症状が現れた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。
添付文書によると、アナフィラキシーショックの症状は以下のような特徴があります。
実際の副作用報告例では、投与開始後短時間でアナフィラキシーショックが発現するケースが複数報告されており、医療従事者は投与開始時の観察を特に慎重に行う必要があります。
日本薬局方の乳酸リンゲル液添付文書には副作用の詳細な記載があります
添付文書に記載されているその他の副作用は、主に 過敏症 と 大量・急速投与 による症状に分類されます。
過敏症による副作用(頻度不明)。
大量・急速投与による副作用(頻度不明)。
これらの副作用は、投与速度が速すぎる場合や過剰投与により循環血液量が急激に増加することで発現します。特に心不全患者や腎機能障害患者では、より注意深い観察が必要です。
添付文書において、乳酸リンゲル液の使用が 禁忌 とされている最も重要な病態は 高乳酸血症 です。高乳酸血症の患者に投与すると、症状が悪化するおそれがあるため絶対に使用してはいけません。
特定の背景を有する患者への注意事項。
妊婦・授乳婦への注意。
妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされています。
乳酸リンゲル液による副作用の発現機序を理解することは、適正使用において極めて重要です。特に アナフィラキシーショック の発現には、即時型アレルギー反応(I型アレルギー)が関与していると考えられています。
アナフィラキシーの発現機序。
乳酸リンゲル液の成分(特にマルトース加製剤の場合)に対するIgE抗体が関与し、肥満細胞や好塩基球からヒスタミンなどの化学伝達物質が大量放出されることで、血管透過性亢進、血管拡張、気管支収縮などが引き起こされます。
循環動態への影響。
大量・急速投与による副作用は、主に Frank-Starling機序 の破綻によるものです。循環血液量の急激な増加により。
電解質・酸塩基平衡への影響。
乳酸リンゲル液に含まれる乳酸イオンは肝臓で代謝されて重炭酸イオンに変換されるため、肝機能障害患者では乳酸の蓄積により 代謝性アシドーシス が悪化する可能性があります。
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添付文書に基づく適正な乳酸リンゲル液の使用において、医療従事者が注意すべき 臨床的監視項目 は多岐にわたります。
投与前の必須確認事項。
投与中の重要な監視項目。
バイタルサイン。
臨床症状。
検査値監視。
投与速度の調整指針。
高齢者では投与速度を緩徐にし、減量するなど特別な注意が必要とされています。一般に生理機能が低下しているため、若年者と同様の投与では副作用リスクが高まります。
特殊な監視項目。
マルトース加乳酸リンゲル液使用時は、グルコース脱水素酵素(GDH)法による血糖測定では、マルトースが測定結果に影響を与え実際の血糖値より高値を示す場合があるため、血糖管理において注意が必要です。これはインスリンの過量投与による低血糖のリスクにつながる可能性があります。