満月様顔貌と副作用の原因と対策

満月様顔貌はステロイド療法やクッシング症候群に伴う特徴的な副作用で、顔に脂肪が沈着し丸みを帯びる症状です。発生メカニズムから予防、患者ケアまで医療従事者が知っておくべき知識を解説します。どのように対応すべきでしょうか?

満月様顔貌と副作用

📋 この記事で分かること
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発生メカニズム

ステロイド投与による糖新生亢進とインスリン分泌増加が顔面への脂肪沈着を引き起こす仕組み

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臨床症状と合併症

中心性肥満や野牛肩など満月様顔貌と同時に現れる身体変化と注意すべき副作用

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治療と予防戦略

ステロイド減量方法、食事管理、患者への精神的支援を含む包括的なケアアプローチ

満月様顔貌の発生メカニズムと副作用の理解

 

満月様顔貌(ムーンフェイス)は、ステロイド薬の長期投与や副腎皮質ホルモンの過剰分泌により顔面に脂肪が沈着し、満月のように丸くなる特徴的な副作用です。この症状は医療従事者が患者の外見変化を早期に認識し、適切に対応するために理解すべき重要な副作用の一つといえます。​
ステロイドを投与すると体内のコルチゾールが増加し、糖新生が亢進されます。すると血糖上昇を抑えるためにインスリン分泌が増加し、このインスリンが脂肪細胞の受容体に結合することで脂肪の合成を促進し、分解を抑制します。特にインスリン感受性が強い脂肪細胞が多く存在する顔面や腹部に脂肪がつきやすくなるため、これらの部位が丸く膨らむのです。投与開始後比較的早い時期、多くの場合1~2週間が経過した頃から症状が現れ始めます。​

満月様顔貌に伴うクッシング症候群の臨床症状

満月様顔貌は単独で現れることは少なく、クッシング症候群の一症状として複数の身体変化を伴います。クッシング症候群とは副腎皮質ホルモンの一種であるコルチゾールが過剰に分泌され、満月様顔貌のほか中心性肥満、野牛肩などの症状を引き起こす病態です。
参考)満月様顔貌の著者・刊行日 わかりやすく解説 Weblio辞…

主な臨床症状として以下が挙げられます:

  • 中心性肥満:体幹部、特に腹部に脂肪が異常に沈着する症状

    参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/58/1/58_KJ00005360223/_pdf

  • 野牛肩:首の後ろに脂肪が沈着し盛り上がる症状​
  • 皮膚線条:皮膚が薄くなることでひび割れのような赤紫色の筋ができる​
  • 皮下出血:皮膚が薄くなり毛細血管が透けて見え、赤ら顔や多血症様の外観を呈する​
  • 痤瘡(ニキビ)と多毛:皮脂腺の活動亢進により生じる​

女性患者では生理不順が生じることもあり、小児患者では成長遅延や低身長のリスクがあります。また、体幹に近い部分の筋力低下やあざができやすくなるといった症状も報告されています。​

満月様顔貌の副作用への予防と食事管理

満月様顔貌の予防には、ステロイド投与中の生活習慣管理が重要な役割を果たします。医療従事者は患者に対して具体的な食事指導と運動習慣の提案を行うことが求められます。​
食事管理における重要なポイントは以下の通りです:

  • 塩分制限:1日6g未満を目標とし、塩分の過剰摂取はむくみを悪化させるため加工食品を控える​
  • 糖質コントロール:ステロイドによる糖新生亢進に対応し、血糖値の急激な上昇を避ける食事を心がける​
  • エネルギー摂取の適正化:過剰なエネルギー摂取はさらなる脂肪蓄積を招き症状を悪化させる​
  • 水分摂取量の調整:適正な水分摂取により不要なむくみを防ぐ​
  • 夜食や深夜の間食を避ける:生活リズムを整え代謝の乱れを最小限にする​

運動面では、軽い筋力トレーニングやウォーキングを週2~3回継続することで血行を促進し、むくみを軽減する効果が期待できます。ただし、ステロイド減量中は副腎離脱症候群のリスクがあるため、激しい運動や過労は避けるべきです。
参考)ステロイドを15年以上使用…。離脱症状について教えて下さい …

満月様顔貌発生時のステロイド減量と離脱症候群

満月様顔貌はステロイド薬の減量により改善することが知られていますが、急激な減量や中止は重篤な副腎不全や離脱症候群を引き起こす危険性があります。医療従事者は慎重な減量スケジュールを理解し、患者の状態を注意深く観察する必要があります。
参考)満月様顔貌

標準的な減量方法として、初期に中等量以上を使用している場合は治療反応性を確認しながら2~4週ごとに10%ずつ減量します。プレドニゾロン換算で10~15mg以下からは数カ月に1mgずつなど、より慎重な減量が推奨されます。生理量である3~4mgを切る頃には副腎離脱症候群のリスクが特に高まります。
参考)https://autoinflammatory-family.org/drag.html

離脱症状としては以下が報告されています:

  • 強い倦怠感
  • 微熱​
  • 血圧低下​
  • 発熱、悪心、嘔吐​
  • 脱力感​

長期間ステロイドを使用している患者では副腎機能が高度に低下しており、急激な減量や中止により副腎クリーゼという重篤な状態に陥る可能性があります。また、感染症や全身麻酔の手術など身体的ストレスがかかる場合には、一時的にステロイドを増量する補充療法が必要となることもあります。​

満月様顔貌患者への看護ケアと精神的支援

満月様顔貌は患者の外見に顕著な変化をもたらすため、心理的負担が大きく、医療従事者による精神的支援が不可欠です。特に若年女性や社会生活を営む患者にとって、顔の丸みや体型の変化は自尊心の低下やボディイメージの悪化につながります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/37/2/37_20140207009/_pdf/-char/en

看護ケアにおける重要なポイント:

  • 患者の心情を理解し共感的態度で接する:外見変化による不安や苦痛を受け止め、治療の必要性とともに改善の可能性を丁寧に説明する​
  • 症状の可逆性を強調する:ステロイド減量により後遺症なく改善することを伝え、希望を持てるよう支援する​
  • 具体的な対処法を提案する:食事管理や運動習慣など患者が実践できる予防策を共に考える​
  • 潜在的ニードの把握:患者が言語化しにくい心理的負担や社会生活上の困難について積極的に聴取する​

全身性エリテマトーデスなどの膠原病患者では、満月様顔貌に加えて皮膚線条や多毛などの外見変化が複合的に生じるため、より包括的な心理社会的支援が求められます。医療チーム全体で患者のQOL維持に取り組む姿勢が重要です。​

クッシング病の診断と治療方針の実際

クッシング病は下垂体腫瘍からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)過剰分泌により引き起こされ、満月様顔貌の原因疾患として医療従事者が理解すべき重要な病態です。下垂体の異常によりACTHが大量に産生されると副腎が過剰に刺激され、結果としてコルチゾールの過剰分泌が生じます。​
診断には血中コルチゾール値やACTH値の測定、画像検査による下垂体腫瘍の確認が必要です。クッシング病は指定難病に該当し、自己負担分の治療費の一部または全部が国または自治体により賄われる場合があります。
参考)クッシング病の場合、主にどのような治療をしますか? |クッシ…

治療の第一選択は経蝶形骨洞的下垂体腫瘍摘出術であり、鼻から脳の蝶形骨洞を通って下垂体腫瘍を摘出する高度な技術を要する手術です。術後は副腎機能低下により一定期間ステロイド(グルココルチコイド)の補充が必要となります。
参考)クッシング病:どんな病気?検査や治療は?手術は必要?完治でき…

手術で腫瘍が完全に切除できない場合や手術適応がない場合には、以下の治療法が選択されます:

  • 放射線治療:ガンマナイフやサイバーナイフを用いた治療​
  • 薬物療法:ACTH抑制薬(パシレオチド)やコルチゾール抑制薬(メチラポン、オシロドロスタット)​

副腎腫瘍が原因の副腎性クッシング症候群の場合は腫瘍摘出が行われます。​
看護roo!「患者さんに満月様顔貌(ムーンフェイス)が生じた!」
満月様顔貌の発生メカニズムと看護のポイントについて詳しく解説されています。

 

マイナビ看護師「ムーンフェイス(満月様顔貌)とは?原因や看護のポイントを解説」
クッシング症候群の臨床症状と看護ケアについて包括的な情報が記載されています。

 

 


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