ムーンフェイスとステロイド治療の関係

ステロイド治療による副作用として医療従事者が知っておくべきムーンフェイスのメカニズムや発現時期、患者ケアのポイントを詳しく解説します。適切な観察と心理的支援を提供するために必要な知識とは?

ムーンフェイスとステロイド

この記事のポイント
💊
ステロイド副作用のメカニズム

糖新生亢進によるインスリン分泌増加が顔面への脂肪蓄積を引き起こす

⏱️
発現時期と改善の見込み

治療開始1~2週間後から出現し、減量により後遺症なく改善可能

🤝
患者への心理的ケア

外見変化への不安に寄り添い、改善可能性を伝える支援が重要

ムーンフェイスのステロイド投与による発生メカニズム

 

ムーンフェイス(満月様顔貌)は、ステロイド治療において特に頻度の高い副作用の一つです。ステロイドを投与すると体内のコルチゾール濃度が上昇し、糖新生が亢進されます。この糖の上昇を抑制するため、膵臓からインスリンの分泌が増加します。インスリン受容体は脂肪細胞に多く存在し、インスリンが結合することで脂肪の合成が促進され、分解が抑制されるため、身体に脂肪が蓄積しやすくなります。​
特にインスリン感受性が強い脂肪細胞が集中している顔面や腹部では、脂肪が顕著につきやすくなり、顔が丸く膨らむ満月様の外観を呈します。この現象はステロイドの内服や点滴投与時に発生する可能性があり、外用薬の使用でムーンフェイスが生じることは極めて稀です。
参考)ムーンフェイス(満月様顔貌)とは? 原因や看護のポイントを解…

医療従事者は、このメカニズムを正確に理解し、患者への説明や観察ポイントの把握に活かすことが求められます。
参考)ステロイドパルス療法とは?副作用のチェックは看護師の役割!

ムーンフェイスの発現時期と症状の経過

ステロイド治療を開始してからムーンフェイスが出現するまでの期間は、一般的に1~2週間程度です。投与開始後比較的早い時期から症状が現れ、治療期間が長期化するほど顕著になる傾向があります。ステロイドの用量が1日10mg前後から満月様顔貌が出現するとされています。
参考)https://www.ns-pace.com/glossary/moon-face

発現の程度は個人差が大きく、使用量や使用期間によっても変わります。短期間(2週間以内)の投与では発生頻度は低めですが、中期間(2~4週間)では用量が高い場合に影響が見え始め、長期間(1か月以上)の投与では高い頻度でムーンフェイスが生じます。
参考)顔が丸くなった(ムーンフェイス)が気になる方へ~考えられる原…

重要なのは、ステロイド薬の減量により、この副作用は後遺症を残さずに改善するという点です。医療従事者は患者に対し、この改善可能性を適切に伝えることで不安の軽減につなげることができます。
参考)ステロイド治療|東京女子医科大学病院 腎臓内科

ムーンフェイスと併発する副作用症状

ムーンフェイスは単独で現れることは少なく、他のステロイド副作用と併発することが多くあります。代表的な併発症状として、腹部に脂肪が蓄積する「中心性肥満」や、首の後ろに生じる「野牛肩」が挙げられます。これらはいずれも脂肪の代謝障害と食欲亢進によって引き起こされます。
参考)クッシング症候群 - MSDマニュアル家庭版

さらに以下のような全身性の副作用にも注意が必要です。
参考)https://www.jstct.or.jp/uploads/files/facility/ltfu_leaf_06.pdf

  • 骨粗鬆症(骨密度の低下)
  • 高血糖血糖値の上昇による糖尿病リスク)
  • 易感染(免疫抑制作用による感染症リスク増加)
  • 消化管症状(胃潰瘍、便秘など)
  • 精神症状(不眠、興奮、抑うつ状態
  • 高血圧や不整脈
  • 筋力低下

医療従事者は、ムーンフェイスだけでなく、これらの併発しやすい副作用を総合的に観察し、早期発見と適切な対処を行うことが重要です。​

ムーンフェイスの予防対策と生活指導

残念ながら、ムーンフェイスを完全に予防する方法は確立されていませんが、症状の悪化を防ぐための対策は存在します。
参考)関節リウマチとステロイド薬

まず、体重管理が重要です。体重増加がムーンフェイスを悪化させる可能性があるため、適度な運動とバランスの取れた食事により健康的な体重を維持することが推奨されます。ムーンフェイスは顔面への脂肪蓄積であるため、過剰なエネルギー摂取はさらなる脂肪蓄積を招きます。
参考)https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/388/

次に、減塩が効果的です。塩分の過剰摂取は体内に水分を貯留させ、浮腫を悪化させます。加工食品を控え、塩分摂取量を抑えることで腫れの軽減が期待できます。
参考)視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)のムーンフェイスの…

また、十分な睡眠とストレス管理も重要な要素です。睡眠不足や過度なストレスはコルチゾールの過剰分泌を促進し、顔の腫れや炎症を悪化させる恐れがあります。医療従事者は患者に対し、これらの生活指導を丁寧に行うことが求められます。​

ムーンフェイス患者への心理的ケアのポイント

ムーンフェイスは外見に大きな変化をもたらすため、患者に強い心理的負担を与えます。特に若年層や女性患者では、顔の変化により「誰にも会いたくない」といった社会的回避行動につながることもあります。
参考)ドクターに聞いてみました 病気や治療について 気になっている…

医療従事者は患者の心情を十分に理解し、共感的な態度で接することが重要です。ステロイドパルス療法を行う際には、特に小児患者の心に寄り添い、精神的なケアを行うことが大切です。患者の言動に注意しながら看護を行い、不眠や精神の不安定が見られた場合には速やかに対処する必要があります。​
また、ムーンフェイスはステロイドの減量により改善することを明確に伝え、改善可能性への希望を持たせることが心理的支援の要となります。全身性エリテマトーデスなどの慢性疾患患者では、治療生活や社会生活において継続的な心理的変容プロセスを経験するため、長期的な心理的支援が求められます。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjghp/31/3/31_274/_pdf/-char/en

ムーンフェイスとクッシング症候群の鑑別診断

ムーンフェイスは、ステロイド治療以外にもクッシング症候群(コルチゾールの過剰分泌を伴う内分泌疾患)でも出現します。医療従事者は、これらの鑑別診断を適切に行う必要があります。
参考)クッシング症候群 (くっしんぐしょうこうぐん)とは

クッシング症候群は、副腎からのコルチゾール過剰分泌が原因で、満月様顔貌、中心性肥満、野牛肩、皮膚の菲薄化などの特徴的な症状を示します。この疾患では、下垂体からのACTH分泌亢進(クッシング病)や副腎腫瘍が原因となることがあります。
参考)クッシング病(下垂体性ACTH分泌亢進症)(指定難病75) …

一方、ステロイド投与による医原性のムーンフェイスは、薬剤の減量や中止により改善します。鑑別にあたっては、ステロイド使用歴の有無、血中コルチゾール値やACTH値の測定、画像診断(副腎や下垂体のCT・MRI)などが重要となります。​
医療従事者は、患者の病歴を詳細に把握し、必要に応じて専門医への紹介を検討することが求められます。​
患者さんに満月様顔貌(ムーンフェイス)が生じた際の観察ポイントとケア方法についての詳細
東京女子医科大学によるステロイド治療の副作用と対策に関する医療従事者向け資料
日本造血・免疫細胞療法学会によるステロイド内服中の注意点と副作用対処法の解説

 

 


[シチズン] CITIZEN ムーンフェイズ アナログ クオーツ メンズ 腕時計 AK5006-58A シルバー×ピンクゴールド 海外モデル [並行輸入品]