指定難病の重症度分類一覧と医療費助成

指定難病の重症度分類一覧と医療費助成制度の対象基準を解説します。348疾病それぞれの診断基準と重症度判定、軽症高額該当の要件など、医療従事者が知っておくべき情報をまとめました。貴院の患者さんに最適な支援を提供できているでしょうか?

指定難病の重症度分類と医療費助成

指定難病医療費助成制度の概要
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対象疾病数と要件

2025年4月現在、348疾病が指定難病として医療費助成の対象となり、各疾病の重症度分類基準を満たす必要があります

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軽症高額該当制度

重症度分類を満たさない軽症患者でも、月額医療費総額33,330円超が年3回以上あれば助成対象となります

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難病指定医の役割

臨床調査個人票の作成には難病指定医資格が必要で、診断基準と重症度分類の正確な理解が求められます

指定難病の医療費助成制度は、難病の患者に対する医療等に関する法律に基づき、厚生労働大臣が指定した疾病の患者を支援する重要な制度です。2025年4月1日時点で348疾病が指定されており、LMNB1関連大脳白質脳症、PURA関連神経発達異常症、極長鎖アシル―CoA脱水素酵素欠損症など7疾病が新たに追加されました。医療費助成の対象となるには、指定難病と診断されることに加え、厚生労働大臣が定める重症度分類等の基準を満たすことが原則となります。
参考)令和7年4月1日施行の指定難病(告示番号1~348)|厚生労…

重症度分類の判定は、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態で、直近6ヶ月間で最も悪い状態を医師が判断することとされています。この規定により、患者が申請時にたまたま症状が落ち着いている時期であっても、過去の重篤な状態が評価に反映される仕組みとなっています。難病の慢性的な性質と症状の変動性を考慮した制度設計であり、医療従事者は患者の長期的な病状経過を把握し、最も重篤であった時期の情報を正確に臨床調査個人票に反映させる責任があります。
参考)消化器領域の指定難病:医療費助成申請のための重症度基準詳細解…

指定難病の重症度分類の基本構造

 

重症度分類は疾病ごとに詳細に定められており、各指定難病の特性に応じた評価基準が設けられています。医療費助成の対象となるのは、原則としてこれらの分類で「重症」または「中等症以上」と判定される症例です。重症度分類の内容は厚生労働省健康局長通知「指定難病に係る診断基準及び重症度分類等について」に示されており、臨床調査個人票の欄外にも記載されています。
参考)指定難病患者への医療費助成制度

指定難病の診断基準と重症度分類は、最新の医学的知見を反映してアップデートされることがあります。2025年度からの取り扱いとして、新たな診断基準は新規認定患者に適用され、既に指定難病患者と診断された患者は引き続き当該指定難病患者として取り扱われることが決定されました。一方、重症度分類については、新規申請・既認定に関わらず一律に新たな重症度分類を適用することとされています。
参考)既に指定難病と認定された患者、新診断基準に関わらず「引き続き…

各指定難病の診断基準及び重症度分類の詳細情報は、厚生労働省の公式ウェブサイトから確認できます。医療機関で使用する臨床調査個人票も同サイトからダウンロード可能であり、難病指定医が概ね3ヶ月以内に作成したものを患者が申請時に提出する必要があります。
参考)大阪市:医療費助成の対象となる疾病(指定難病)について (……

厚生労働省:指定難病の概要、診断基準等、臨床調査個人票(告示番号1~348)
※各指定難病の詳細な診断基準と重症度分類が確認できる公式資料です

指定難病の臓器別分類と代表的疾患

指定難病は臓器や疾患群ごとに分類されており、神経系、循環器系、消化器系、腎・泌尿器系、血液系、皮膚・結合組織系、内分泌系、骨・関節系など多岐にわたります。例えば神経系疾患にはパーキンソン病ハンチントン病、シャルコー・マリー・トゥース病などが含まれ、循環器系では肥大型心筋症やバージャー病などが指定されています。
参考)病気の解説・診断基準・臨床調査個人票の一覧 五十音別索引(は…

消化器領域の指定難病については、臓器別に詳細な重症度基準が設定されています。例えば顕微鏡的多発血管炎や多発血管炎性肉芽腫症では、腎臓、肺、心臓、眼、耳、平衡機能、腸管など臓器ごとに障害の内容と基準が明確に定められています。腎臓障害ではCKD重症度分類ヒートマップの赤色該当または尿蛋白0.5g/日以上、肺障害では特発性間質性肺炎の重症度分類でⅢ度以上または肺胞出血などの基準があります。
参考)指定難病|診療サポート(ツール・お役立ち)|タブネオス カプ…

複数の臓器が障害される全身性疾患も多く存在します。IgG4関連疾患は膵臓、胆管、涙腺・唾液腺、中枢神経系、甲状腺、肺、肝臓、消化管、腎臓、前立腺、後腹膜、動脈、リンパ節、皮膚、乳腺など多様な臓器に病変が生じる疾患です。全身性アミロイドーシスでは、複数の臓器が障害されることもあれば単一の臓器(心臓・腎臓・肝臓)のこともあり、疾患分類ごとに重症度評価が行われます。
参考)IgG4関連疾患(指定難病300) href="https://www.nanbyou.or.jp/entry/4505" target="_blank">https://www.nanbyou.or.jp/entry/4505amp;#8211; 難病情報…

指定難病の軽症高額該当制度の詳細

重症度分類を満たさない軽症患者であっても、高額な医療を継続することが必要な場合には医療費助成の対象となる「軽症高額該当」制度があります。この制度は、指定難病に関する月ごとの医療費総額が33,330円を超える月が、支給認定申請月以前の12月以内に3回以上ある場合に適用されます。医療保険3割負担の場合、医療費の自己負担がおよそ1万円となる月が年3回以上ある場合が該当します。
参考)指定難病患者への医療費助成制度のご案内 href="https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460" target="_blank">https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460amp;#8211; 難病…

軽症高額該当の判定に用いる33,330円には入院時食事(生活)療養の標準負担額は含まれません。また、算定対象となる期間は、申請日の属する月から起算して12月前の月、または支給認定を受けようとする指定難病の患者が当該指定難病を発症したと難病指定医が認めた月を比較し、いずれか後の月から申請日の属する月までの期間とされています。
参考)https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/keikasoti180117.pdf

複数の指定難病にり患している場合、軽症高額該当で申請をする際に算定する医療費は、複数の指定難病に係る医療費をすべて合算することができます。確認方法としては、新規申請の場合は医療費申告書に領収書等を添付する方法があり、医療費管理票を用いることも可能です。新規申請に併せて軽症高額の申請をしておくと、審査の結果軽症と判断された場合であっても特例として支給認定される仕組みとなっています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000212742.pdf

難病情報センター:指定難病患者への医療費助成制度のご案内
※軽症高額該当制度の詳細な説明と計算例が掲載されています

指定難病の臨床調査個人票と難病指定医の要件

指定難病の医療費助成を申請するには、難病指定医が作成した臨床調査個人票が必要です。難病指定医は、診断又は治療に5年以上従事した経験を有する医師のうち、厚生労働大臣が定める認定機関が認定する専門医の資格を有する者など、臨床調査個人票を作成するのに必要な知識と技能を有すると認められる者です。難病指定医の職務には、指定難病の患者が指定難病にかかっていること及びその病状の程度を証する臨床調査個人票の作成と、国が講ずる難病に関する情報収集に関する施策に資する情報提供があります。
参考)新規申請について【指定難病】|香川県

臨床調査個人票は、医療費助成制度における診断基準、重症度分類等を正確に理解した上で作成する必要があります。作成された臨床調査個人票は概ね3ヶ月以内のものが有効とされており、作成から6か月を超えているものは審査不能のため受理されず取り直しが必要となります。2025年1月からは、臨床調査個人票に「診断年月日」欄が追加され、診察や検査結果等から当該指定難病の診断基準を満たし、かつ重症度分類を満たしていると総合的に診断した場合、速やかに臨床調査個人票を記載することが求められています。
参考)難病医療費助成制度について

臨床調査個人票は研究利用に供されるため、申請者は「臨床調査個人票の研究利用に関するご説明」を確認した上で申請を行う必要があります。各指定難病の臨床調査個人票の様式は、厚生労働省のウェブサイトから疾病ごとにダウンロードできます。難病指定医は、最新の診断基準・重症度分類にアクセスできる環境を整備し、専門性の維持・向上に努めることが制度の公平性と正確性を保つ上で不可欠です。​

指定難病医療費助成制度の更新と今後の課題

指定難病の医療費助成を受けている患者は、現在年に1回の更新手続きを行う必要があります。更新時には医学的状態に変化はないか、所得に変化はないかなどを確認しますが、医学的状態の確認について「2年、3年に1回の確認」が可能かどうか研究が進められています。更新申請時には、指定医が作成した臨床調査個人票の提出が必要であり、様式は医療機関に発行を依頼する必要があります。
参考)指定難病等の「診断基準・重症度分類のアップデート」の取り扱い…

2025年度には既存の指定難病のうち70~83疾病について診断基準及び重症度分類等のアップデートが行われました。特定の疾病(ミトコンドリア病、全身性ALアミロイドーシス、全身性エリテマトーデス、下垂体性PRL分泌亢進症、成人GH分泌不全症)については、2025年4月1日以降に作成された臨床調査個人票による更新申請では、過去に認定済であることをもって診断基準を満たしているものとし、指定医が臨床調査個人票の「症状の概要、経過、特記すべき事項など」欄に「認定済」と記載することにより確認する取り扱いとなっています。
参考)【パブリック・コメント募集】指定難病に係る診断基準及び重症度…

軽症高額該当者の医療費助成は、申請日から遡り軽症高額の基準を満たした月から適用されます。支給認定の有効期間は1年以内の期間を都道府県知事が定め、過去12月以内に医療費総額が33,330円を超えた月が3月以上あるため更新対象となる患者には継続的な支援が提供されます。高額な医療が長期的に継続する患者については「高額かつ長期」の認定制度もあり、指定難病及び小児慢性特定疾病に係る月ごとの医療費総額が5万円を超える月が申請日の月以前12月で既に6回以上ある患者が対象となります。​
難病情報センター:病気の解説・診断基準・臨床調査個人票の一覧
※五十音別に各指定難病の詳細情報を検索できるデータベースです
指定難病の医療費助成制度は、患者の経済的負担を軽減し適切な医療を継続的に受けられるようにする重要な社会保障制度です。医療従事者は各疾病の診断基準と重症度分類を正確に理解し、臨床調査個人票を適切に作成することで、患者が必要な支援を受けられるよう努める必要があります。診断基準や重症度分類は医学の進歩に応じて更新されるため、常に最新の情報にアクセスし知識を更新することが求められます。
参考)大阪市:大阪市指定難病医療費助成に係る指定医の指定事務取扱要…

 

以下のような構成で医療従事者向けブログ記事を作成します。

 

 


難病医療専門員による難病患者のための難病相談ガイドブック 〔改訂2版〕