ジヒデルゴトとは麦角アルカロイド系片頭痛治療薬の詳細解説

ジヒドロエルゴタミンは片頭痛治療に用いられる麦角アルカロイド誘導体で、血管収縮作用により片頭痛の症状を改善します。その薬理作用、副作用、使用上の注意について医療従事者向けに詳しく解説します。あなたは適切に使用できていますか?

ジヒデルゴトとは麦角系片頭痛治療薬の基礎知識

ジヒドロエルゴタミンの基本情報
💊
薬剤分類

麦角アルカロイド誘導体で片頭痛治療薬として分類される

🎯
主な適応症

片頭痛(血管性頭痛)および起立性低血圧の治療に使用

作用機序

セロトニン受容体に作用し頭蓋内血管を収縮させる

ジヒデルゴトの基本的な薬物特性と分類

ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩(Dihydroergotamine mesylate)は、麦角アルカロイドの還元誘導体として位置づけられる片頭痛治療薬です。本薬剤は、エルゴタミンからの半合成物として1946年に承認され、長い臨床使用実績を有しています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3

 

日本における商品名としては「ジヒデルゴット」や「ヒポラール」として知られており、錠剤製剤として流通していましたが、現在は販売中止となっています。海外では鼻腔スプレーや注射薬として投与される形態が主流です。
参考)http://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=2160350F1269

 

薬理学的分類では以下の特徴を持ちます。

  • 麦角アルカロイド系薬剤 💊
  • セロトニン受容体作動薬
  • 血管収縮薬
  • 抗片頭痛薬

ジヒデルゴトの詳細な薬理作用機序

ジヒドロエルゴタミンの抗片頭痛作用は、主にセロトニン(5-HT)1B、1D、1F受容体に対するアゴニスト作用によるものです。この作用により、拡張した頭蓋内血管、特に頭皮動脈を収縮させることで片頭痛症状を改善します。
参考)http://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=2160350F1307

 

主要な薬理作用

  • セロトニン受容体(5-HT1B/1D/1F)への作用 🎯
  • 血管収縮作用(特に静脈系に顕著)
  • アドレナリンα受容体への部分作動薬作用
  • ドーパミン受容体への作用

本薬剤は抵抗血管(動脈系)よりも容量血管(静脈系)に対してより強い作用を示すという特徴があります。この選択性により、起立時に不足する静脈の緊張を高めて血液の静脈停留を減少させ、心臓への還流量を増加させることで起立性低血圧の改善効果も発揮します。

ジヒデルゴト投与時の副作用と安全性情報

ジヒドロエルゴタミンの使用に際しては、多様な副作用の発現に注意が必要です。臨床試験では総症例1,912例中89例(4.7%)で何らかの副作用が報告されています。
主要な副作用

  • 消化器症状:悪心・嘔吐(2.3%)、食欲不振、腹痛 🤢
  • 精神神経症状:眠気、口渇、めまい、しびれ(1.3%)
  • 過敏症状:発疹・瘙痒、蕁麻疹、呼吸困難(0.8%)
  • 循環器症状:血圧上昇、血管収縮、末梢性虚血、動悸(0.2%)

重大な副作用として、長期連用により胸膜、後腹膜または心臓弁の線維症が報告されており、これは頻度不明ながら重篤な合併症として認識されています。
吐き気は特に経静脈投与で一般的に見られる副作用であり、制吐剤の事前投与が検討される場合があります。また、本薬剤は依存性を持たないという特徴があります。

ジヒデルゴト使用時の薬物相互作用と禁忌事項

ジヒドロエルゴタミンは主に代謝酵素CYP3A4で代謝されるため、本酵素の阻害作用を有する薬剤との併用には細心の注意が必要です。
重要な相互作用

  • トリプタン系薬剤:24時間以内の併用は冠動脈攣縮のリスクにより禁忌 ⚠️
  • CYP3A4阻害薬:血中濃度上昇による作用増強の可能性
  • 血管収縮作用を有する薬剤:相乗効果による危険性

使用上の注意点

  • 肝・腎機能障害患者では代謝・排泄遅延の可能性があるため慎重投与
  • 過度の喫煙は血管収縮作用を増強する恐れがあるため避ける
  • 自動車運転等危険を伴う機械作業時は注意が必要

ジヒドロエルゴタミンの基本的な薬理学的情報について詳細に記載されています

ジヒデルゴトの薬剤乱用頭痛との関連性と最新研究

ジヒドロエルゴタミンを含むエルゴタミン系薬剤は、薬剤乱用頭痛(MOH:Medication Overuse Headache)の原因となる可能性があることが知られています。月に10日以上の使用で薬剤乱用頭痛のリスクが増加するとされており、医療従事者による適切な使用指導が重要です。
参考)https://tanimoto-neurosurgery.com/medical/headache/moh/

 

薬剤乱用頭痛の診断基準

  • 3ヶ月を超える定期的な乱用(月10日以上)
  • 月15日以上の頭痛発生
  • 薬剤中止により頭痛の改善が期待される

最新の研究動向として、STS101という新たなジヒドロエルゴタミン製剤の開発が注目されています。これは独自の鼻腔デリバリーデバイスを用いた乾燥粉末製剤で、従来の液体点鼻薬や注射剤と比較して、迅速な自己投与や優れた薬物動態特性を有することが第3相試験で確認されています。
参考)https://www.moomoo.com/ja/news/post/24107704/satsuma-pharmaceuticals-and-snbl-announce-three-abstracts-on-sts101-for

 

近年の研究では、ジヒドロエルゴタミンが5-HT1C受容体に対する強力なアゴニスト活性を示すことが豚脈絡叢を用いた実験で明らかにされており、片頭痛治療における作用機序の詳細な理解が進んでいます。また、心臓における5-HT4セロトニン受容体およびH2ヒスタミン受容体への作用も報告されており、多面的な薬理作用を有することが示されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1908284/

 

薬剤乱用頭痛の治療において、ジヒドロエルゴタミンは離脱療法の一環として使用されることもあり、重症片頭痛や片頭痛重積発作に対する静脈内投与が有効とされています。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/07-%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E9%A0%AD%E7%97%9B/%E8%96%AC%E7%89%A9%E4%B9%B1%E7%94%A8%E9%A0%AD%E7%97%9B

 

薬剤乱用頭痛の診断基準と治療法について専門的な解説が記載されています
薬物乱用頭痛の病態と治療について包括的な医学的情報が提供されています