日本では現在、5種類のトリプタン製剤が片頭痛治療に使用されています 。これらの薬剤は、セロトニン受容体(5-HT1B/1D)に選択的に作用することで、片頭痛発作時の血管拡張と神経原性炎症を抑制します 。
参考)https://www.kanenaka-neurosurgeryclinic.tokyo/wp/post_blog/%E9%A0%AD%E3%81%AE%E7%97%9B%E3%81%84%E6%99%82%E3%81%AE%E8%96%AC%E3%82%92%E6%95%B4%E7%90%86%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86/
各トリプタン製剤の特徴は以下の通りです:
トリプタン製剤の作用機序は、片頭痛の病態生理に基づいて設計されています 。片頭痛発作時には、硬膜血管に分布する三叉神経終末が活性化され、CGRPなどの神経ペプチドが遊離します 。
参考)https://www.ne.jp/asahi/kobayashi/children-clinic/triptan_mechanism.htm
トリプタンは以下の3つの受容体に作用します:
この三重の作用機序により、トリプタンは片頭痛に伴う頭痛だけでなく、悪心・嘔吐、光過敏、音過敏などの随伴症状も改善します 。2時間後の頭痛消失率は、プラセボの20-30%に対し、トリプタン50mgでは約50-60%と有意に高い効果を示します 。
参考)https://tsujido-brain.website/disease/migraine-acute-treatment/
各トリプタンの薬物動態パラメータは、臨床選択において重要な指標となります :
参考)https://neuro-machida.jp/blog/post-74/
最高血中濃度到達時間(Tmax)
半減期(T1/2)
代謝経路も薬剤選択に影響します。スマトリプタンとリザトリプタンはMAO-A依存、エレトリプタンはCYP3A4依存、ゾルミトリプタンとナラトリプタンはCYP1A2依存の代謝を受けるため、併用薬による相互作用に注意が必要です 。
トリプタンの使い分けは、患者の発作パターンや生活スタイルに応じて行います :
参考)https://passmed.co.jp/di/archives/6906
即効性重視の場合
持続性重視の場合
特殊な患者背景
トリプタン製剤の副作用は、血管収縮作用に起因するものが多く見られます :
参考)https://uchikara-clinic.com/prescription/rizatriptan/
よくある副作用
重篤な副作用(稀)
使用禁忌
運転や危険な機械操作は、服薬後24時間は避けることが推奨されています 。
トリプタンに加え、新たな片頭痛治療薬として**ラスミジタン(レイボー)**が2022年に承認されました 。この薬剤は5-HT1F受容体選択的作動薬(ジタン系)で、血管収縮作用がほとんどないため、心血管疾患患者にも使用可能です 。
参考)https://medical.lilly.com/jp/answers/153724
ラスミジタンの特徴
片頭痛予防においては、CGRP関連薬として抗CGRP抗体製剤(エムガルティ、アジョビ)と抗CGRP受容体抗体製剤(アイモビーグ)が利用可能になりました 。これらの注射薬は、従来の内服予防薬で効果不十分な慢性片頭痛患者において、発作回数を約1/3以下に減らす効果が期待されています 。
参考)https://takase-clinic.jp/blog/2622
トリプタンは依然として片頭痛急性期治療の主力薬剤であり、個々の患者に最適な薬剤選択のため、複数のトリプタンを使い分ける症例も多く見られます 。頭痛専門外来での適切な薬剤選択により、患者のQOL向上が期待できます 。
参考)https://cliniciwata.com/2024/09/17/4522/