トリプタン種類と選び方完全ガイド

片頭痛治療における5種類のトリプタン製剤の特徴、作用機序、使い分けを医療従事者向けに解説。効果時間や副作用、禁忌事項まで詳しく紹介します。あなたに最適なトリプタンはどれでしょうか?

トリプタン種類と特徴

🎯 トリプタン製剤5種類の基本情報
💊
スマトリプタン(イミグラン)

最速効性・多剤型・妊授乳可能

リザトリプタン(マクサルト)

口腔内崩壊錠・水不要・最速効

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エレトリプタン(レルパックス)

長時間作用・再発抑制・高有効率

日本では現在、5種類のトリプタン製剤が片頭痛治療に使用されています 。これらの薬剤は、セロトニン受容体(5-HT1B/1D)に選択的に作用することで、片頭痛発作時の血管拡張と神経原性炎症を抑制します 。
参考)https://www.kanenaka-neurosurgeryclinic.tokyo/wp/post_blog/%E9%A0%AD%E3%81%AE%E7%97%9B%E3%81%84%E6%99%82%E3%81%AE%E8%96%AC%E3%82%92%E6%95%B4%E7%90%86%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86/

 

各トリプタン製剤の特徴は以下の通りです:


  • スマトリプタン(イミグラン):内服・点鼻・自己注射の3剤型があり、妊娠中・授乳中にも使用可能

  • ゾルミトリプタン(ゾーミッグ):中枢移行性が高く、予兆を伴う片頭痛に有効

  • リザトリプタン(マクサルト):口腔内崩壊錠(OD錠)で水なしでも服用可能

  • エレトリプタン(レルパックス):最も長い作用時間と高い有効率を誇る

  • ナラトリプタン(アマージ):最長の半減期で再発予防に優れる
    参考)https://kashihara-clinic.jp/%E9%A0%AD%E7%97%9B%E3%81%AB%E5%8A%B9%E3%81%8F%E9%A3%B2%E3%81%BF%E8%96%AC

トリプタン作用機序と薬理学的特性

トリプタン製剤の作用機序は、片頭痛の病態生理に基づいて設計されています 。片頭痛発作時には、硬膜血管に分布する三叉神経終末が活性化され、CGRPなどの神経ペプチドが遊離します 。
参考)https://www.ne.jp/asahi/kobayashi/children-clinic/triptan_mechanism.htm

 

トリプタンは以下の3つの受容体に作用します:

この三重の作用機序により、トリプタンは片頭痛に伴う頭痛だけでなく、悪心・嘔吐、光過敏、音過敏などの随伴症状も改善します 。2時間後の頭痛消失率は、プラセボの20-30%に対し、トリプタン50mgでは約50-60%と有意に高い効果を示します 。
参考)https://tsujido-brain.website/disease/migraine-acute-treatment/

 

トリプタン薬物動態と効果発現時間

各トリプタンの薬物動態パラメータは、臨床選択において重要な指標となります :
参考)https://neuro-machida.jp/blog/post-74/

 

最高血中濃度到達時間(Tmax)

半減期(T1/2)


  • スマトリプタン:約2時間

  • ゾルミトリプタン:約3時間

  • リザトリプタン:約2-3時間

  • エレトリプタン:約4-5時間

  • ナラトリプタン:約6時間(最長)

代謝経路も薬剤選択に影響します。スマトリプタンとリザトリプタンはMAO-A依存、エレトリプタンはCYP3A4依存、ゾルミトリプタンとナラトリプタンはCYP1A2依存の代謝を受けるため、併用薬による相互作用に注意が必要です 。

トリプタン製剤別使い分けと臨床応用

トリプタンの使い分けは、患者の発作パターンや生活スタイルに応じて行います :
参考)https://passmed.co.jp/di/archives/6906

 

即効性重視の場合

持続性重視の場合


  • エレトリプタン:4-5時間の長時間作用、再発率が低い

  • ナラトリプタン:6時間の最長半減期、予防的効果も期待

特殊な患者背景


  • 妊娠・授乳中:スマトリプタン内服、エレトリプタンが選択可能

  • 心血管リスク患者:ナラトリプタンが比較的安全との報告

  • β遮断薬併用:リザトリプタンはプロプラノロールでAUC2倍上昇のため減量必要

トリプタン副作用と安全性プロファイル

トリプタン製剤の副作用は、血管収縮作用に起因するものが多く見られます :
参考)https://uchikara-clinic.com/prescription/rizatriptan/

 

よくある副作用

重篤な副作用(稀)

使用禁忌

運転や危険な機械操作は、服薬後24時間は避けることが推奨されています 。

トリプタン治療における最新動向と新薬展望

トリプタンに加え、新たな片頭痛治療薬として**ラスミジタン(レイボー)**が2022年に承認されました 。この薬剤は5-HT1F受容体選択的作動薬(ジタン系)で、血管収縮作用がほとんどないため、心血管疾患患者にも使用可能です 。
参考)https://medical.lilly.com/jp/answers/153724

 

ラスミジタンの特徴


  • セロトニン5-HT1F受容体にのみ作用

  • 血管収縮作用なし

  • トリプタン禁忌患者でも使用可能

  • 頭痛消失率40.6%(200mg)、改善率78.2%
    参考)https://cliniciwata.com/medical/reyvow/

片頭痛予防においては、CGRP関連薬として抗CGRP抗体製剤(エムガルティ、アジョビ)と抗CGRP受容体抗体製剤(アイモビーグ)が利用可能になりました 。これらの注射薬は、従来の内服予防薬で効果不十分な慢性片頭痛患者において、発作回数を約1/3以下に減らす効果が期待されています 。
参考)https://takase-clinic.jp/blog/2622

 

トリプタンは依然として片頭痛急性期治療の主力薬剤であり、個々の患者に最適な薬剤選択のため、複数のトリプタンを使い分ける症例も多く見られます 。頭痛専門外来での適切な薬剤選択により、患者のQOL向上が期待できます 。
参考)https://cliniciwata.com/2024/09/17/4522/