ディビゲルは、エストラジオールを経皮的に吸収させることにより、血中エストラジオール濃度を持続的に維持し、エストロゲン低下によって起こる症状を軽減する画期的な治療薬です 。従来の経口剤と異なり、消化管で吸収されるエストロゲンが肝臓を通過しないため、肝臓に対する負担が少ないという重要な特徴があります 。
参考)https://www.fuyukilc.or.jp/column/%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%B3%E8%A3%9C%E5%85%85%E7%99%82%E6%B3%95%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%80%8C%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%93%E3%82%B2%E3%83%AB1mg%E3%80%8D%E3%82%92%E3%81%8A%E4%BD%BF/
天然型女性ホルモンを経皮的に吸収させる仕組みにより、血中濃度を維持することで、エストロゲン低下によって起こる症状を軽減させたり、子宮内膜を増殖・肥厚させる効果が認められています 。この作用機序により、更年期障害および卵巣欠落症状に伴う血管運動神経症状(Hot flush及び発汗)の治療において、高い有効性を示しています 。
参考)https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=52048
エストラジオールは卵巣から分泌される女性ホルモンであり、40代前後から急激に減少することが知られています 。ディビゲルによる補充療法では、この不足したエストロゲンを効率的に補うことで、更年期特有の症状が改善されます 。
参考)https://gyn-md.jp/column/menopause-diagnosis-treatment/
ホットフラッシュは、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少することで、脳の視床下部にある体温調節の機能が乱れ、自律神経の働きに影響を及ぼすと考えられています 。エストロゲンの減少によって、血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経が乱れることによって起こる症状です 。
参考)https://ko-nenkilab.jp/symptom/hotflush.html
ディビゲルの効果により、更年期に欠乏するエストロゲンを補充することで、エストロゲンの血中濃度を持続的に維持し、エストロゲン低下によって起こる症状を軽減します 。ホルモン補充療法は、ホットフラッシュ、睡眠障害、関節痛、手足の痛みに改善効果があると報告されています 。
参考)https://www.lestrogel.info/indication/
更年期障害、特にホットフラッシュに対する治療としてホルモン補充療法(HRT)はとても有効であり、HRT中止後にホットフラッシュが再発する女性も少なくないため、継続的な治療が重要です 。ディビゲルによる治療では、中でもホットフラッシュは漢方薬が効きにくく、ホルモン剤を使用することが多いという臨床的な特徴があります 。
参考)https://tama.marianna-u.ac.jp/sanfu/fujinka/menopause.html
ディビゲルの効果は更年期症状の改善だけでなく、保健適応となる疾患は「更年期障害および卵巣欠落症状に伴う血管運動神経症状」ですが、骨密度増加効果も認められています 。ホルモン補充療法の重要なメリットとして、骨代謝に影響して骨密度を維持する(骨粗鬆症の予防)効果が挙げられます 。
参考)https://sakamoto-lc.com/blog/%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E8%B3%AA%E5%95%8F%EF%BC%9A%E6%9B%B4%E5%B9%B4%E6%9C%9F%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%B3%E8%A3%9C
さらに、脂質代謝の改善(高脂血症の予防)、更年期のうつ症状の改善、皮膚のしわを減らしハリを増やす効果、膣のうるおいを維持して膣の萎縮を予防する(泌尿器生殖器の症状の改善)といった多面的な効果が期待できます 。
血中のコレステロールを下げることにより動脈硬化の予防につながる可能性、また骨粗しょう症の予防や認知症の予防効果も期待できるとされており、更年期女性の総合的な健康維持に貢献します 。これらの効果により、のぼせ、発汗などの症状や萎縮性膣炎など泌尿生殖器の症状の治療、エストロゲン減少により進行する骨粗しょう症等の改善が期待されています 。
参考)https://jp.sunpharma.com/null/PDF_DVJ071MC39.pdf
ディビゲルの特徴的な効果として、ゲル状である点が皮膚に対する刺激性も少ないという利点があります 。経皮吸収型製剤の大きなメリットは、肝初回通過効果を受けないという点であり、安定した血中濃度が得られること、皮膚刺激の軽減や、肌の上に残らないという特徴があります 。
参考)https://naebo-ladies.jp/laboratory/2022/07/25/%E7%AC%AC19%E5%9B%9E%E3%80%80%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%A1%97%E3%82%8A%E6%96%B9/
皮膚からの薬の吸収について、体の部位によって薬の吸収量に差があることが報告されており、皮膚の厚さと薬物の吸収とは対応関係があることが分かっています 。ディビゲルの塗布推奨部位である大腿部や下腹部は、適切な吸収率を示す部位として選択されています。
参考)https://kompas.hosp.keio.ac.jp/about_medicine/ointment/
経皮吸収では皮膚の透過に個人差が現れることが懸念されますが、適切な部位への塗布により、このような個人差が少なくなることも期待できます 。塗布30分後にディビゲル塗布部位に軽い紅斑が認められることがありますが、これは製剤中のアルコールによる一過性のものであり、皮膚刺激指数は0.0という安全性の高い結果が報告されています 。
参考)https://jp.sunpharma.com/null/div_n10_spj_FIX.pdf
ディビゲルの副作用として、重大な副作用にはアナフィラキシー(頻度不明)、静脈血栓塞栓症、血栓性静脈炎(いずれも頻度不明)があり、下肢疼痛・下肢浮腫、胸痛、突然の息切れ、急性視力障害等の初期症状が認められた場合には使用を中止し、適切な処置を行うことが重要です 。
参考)https://hokuto.app/medicine/FBFhjTmvuWRbtqecevRD
皮膚塗布部位の副作用として、(5%以上)紅斑(11.9%)、皮膚そう痒感、(1~5%未満)皮膚刺激感、皮膚熱感、(0.1~1%未満)皮膚炎、皮膚色素沈着、塗布部位反応、湿疹、発疹、皮膚不快感が報告されています 。
血栓症に注意が必要な女性ホルモン製剤として、ディビゲルなどのエストロゲン製剤が挙げられており、血栓症の症状としては手足の突然の痛み・腫れ、手足の脱力・麻痺、激しい胸痛・胃痛、突然の息切れ、激しい頭痛などがあります 。このような症状が見られたら、処方されている女性ホルモン剤の服用を中止して、主治医に連絡することが推奨されています 。
参考)https://www.fuyukilc.or.jp/column/%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%B3%E5%89%A4%E3%81%A8%E8%A1%80%E6%A0%93%E7%97%87/