アサコールとリアルダは、いずれもメサラジン(5-ASA)を有効成分とする潰瘍性大腸炎治療薬ですが、薬物放出機構に明確な違いがあります。
参考)https://www.fpa.or.jp/johocenter/yakuji-main/_1635.html?mode=0amp;classId=0amp;blockId=184772amp;dbMode=articleamp;searchTitle=amp;searchClassId=0amp;searchAbstract=amp;searchSelectKeyword=amp;searchKeyword=amp;searchMainText=
アサコールはpH依存性放出機構を採用しており、5-ASAを高分子ポリマーでコーティングすることで、pH7以上となる回腸末端から大腸全域に5-ASAが放出されます。胃や小腸の酸性環境ではコーティングが溶けないため、大腸に到達してから薬剤が放出される仕組みです。
参考)https://ibd.qlife.jp/uc/meds-uc/story3083.html
一方、リアルダはマルチマトリックス放出機構という独特のシステムを採用しています。外側にpH依存性のコーティングを施し、内側の5-ASAを親水性基剤および親油性基剤からなるマトリックス中に分散させています。このため、大腸でコーティングが溶けた後も、基剤の働きにより5-ASAがゆっくりと持続的に放出されます。
参考)https://www.yoshiokaclinic.or.jp/blog/2016/12/post-2033.html
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この違いにより、アサコールはpH上昇と同時に薬剤が一気に放出されるのに対し、リアルダは大腸全域に渡って持続的に薬剤を放出できるという特徴があります。youtube
両薬剤の作用部位には重要な違いがあります。アサコールは回腸末端から大腸にかけて薬剤を放出しますが、放出が比較的短時間で完了するため、直腸部への薬剤到達量が限定的になる場合があります。
対照的に、リアルダの持続放出機構により、大腸全域、特に直腸部により多くの薬剤が到達することが確認されています。これは、マトリックス基剤が腸液の浸透を制御し、薬剤をゆっくりと放出するためです。
参考)https://ishidaibd.com/article/2017-11-28/
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臨床的には、この違いが治療効果に影響を与える可能性があります。従来のメサラジン製剤で効果が不十分だった直腸病変を有する患者において、リアルダの有効性が期待されています。
製剤の放出部位を比較すると。
服薬回数は患者の治療継続に大きく影響する要素です。アサコールは1日3回(朝・昼・夕食後)の服薬が必要ですが、リアルダは1日1回の服薬で治療効果が得られます。
この服薬回数の違いは、患者の服薬アドヒアランス(処方通りに薬剤を服用する度合い)に大きく影響します。一般的に、服薬回数が少ないほど飲み忘れが減少し、より良好なアドヒアランスが期待できます。
臨床試験では、リアルダの1日1回投与でも寛解期だけでなく活動期においても十分な治療効果が確認されています。これは、持続放出機構により大腸内で長時間にわたって有効濃度が維持されるためです。
ただし、リアルダは1錠あたりの有効成分量が多いため(1200mg)、錠剤サイズが大きく、一部の患者では服薬困難を感じる場合があります。
服薬スケジュール比較。
臨床試験では、アサコールとリアルダの有効性と安全性が比較検討されています。活動期潰瘍性大腸炎患者を対象とした比較試験において、両薬剤間で有効性に有意差は認められませんでした。youtube
しかし、副作用プロファイルには若干の違いが観察されています:youtube
リアルダ特有の副作用。
共通する副作用。
これらの酵素上昇は、腎機能障害や肝機能障害の指標となるため、定期的なモニタリングが重要です。特にリアルダでは肝機能と膵機能の監視がより重要とされています。youtube
両薬剤とも死亡例は報告されておらず、メサラジンの特徴である「内服量増加に伴う副作用増加がない」という安全性プロファイルを維持しています。
薬物動態学的観点から見ると、両薬剤の大腸内薬物濃度推移に興味深い違いがあります。アサコールはpH変化による急速な薬剤放出により、大腸上部で高い薬物濃度を示しますが、時間経過とともに濃度が低下します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1378698/
一方、リアルダのマルチマトリックス機構では、大腸内での薬物濃度がより平坦に維持されることが報告されています。この持続的な薬物放出により、特に大腸遠位部(直腸・S状結腸)での薬効持続が期待されます。
最大投与量の比較では、リアルダが最も多い4.8g/日まで投与可能であり、これはメサラジンの「用量依存性効果」の観点から治療上有利とされています:
興味深いことに、メサラジン製剤は体内に吸収されることで副作用が現れるため、大腸局所での作用が重要です。リアルダの持続放出機構は、この局所作用を最大化する設計となっています。
また、長期服用による大腸癌予防効果も両薬剤で報告されており、この点では共通の利点を有しています。
日本病院薬剤師会の詳細な製剤比較情報
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