アナフィラキシー・ショック症状・原因・治療・二相性反応対策

アナフィラキシー・ショックの症状や原因、治療法から二相性反応まで医療従事者が知るべき重要な情報を詳しく解説しています。救急対応はこれで万全ですか?

アナフィラキシー・ショック

アナフィラキシー・ショック概要
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症状の特徴

皮膚・呼吸器・循環器・消化器症状が急激に現れる全身性アレルギー反応

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主要原因

食物・薬物・昆虫毒・造影剤による即時型過敏反応

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治療方針

アドレナリン筋注を第一選択とした迅速な救急対応

アナフィラキシー・ショックの症状・重症度分類

アナフィラキシー・ショックの症状は複数の臓器に同時に現れるのが特徴です。症状は通常アレルゲン曝露後15分以内に発症し、重篤な場合は1~2分で急速に悪化します。
参考)https://www.kango-roo.com/learning/4943/

 

皮膚症状(最も頻度が高い)

  • じんましん・発赤・かゆみ 🔥
  • 全身性の皮疹・湿疹
  • 血管性浮腫(口唇・眼瞼・舌の腫脹)

呼吸器症状

  • 喘鳴(ヒューヒュー、ゼイゼイ音)
  • 呼吸困難・息苦しさ 💨
  • 喉頭浮腫による声のかすれ
  • 犬吠様咳嗽(重症例)

循環器症状

  • 血圧低下・頻脈 📉
  • 意識障害・失神
  • ショック状態

消化器症状

  • 激しい腹痛・下痢
  • 嘔吐・吐き気
  • 血便(重症例)

アナフィラキシーの**重症度分類(グレード1-3)**では、最も高い重症度を示す器官で判定します。グレード3では呼吸停止や心停止のリスクが高く、迅速な対応が生命を左右します。
日本アレルギー学会公式のアナフィラキシー症状詳細

アナフィラキシー・ショックの原因・アレルゲン特定

アナフィラキシー・ショックの原因は年齢により異なる傾向があります。
参考)https://mymc.jp/clinicblog/204274/

 

食物アレルゲン(頻度最多)

  • 0-3歳:鶏卵 🥚
  • 4-6歳:牛乳
  • 7-19歳:落花生・ナッツ類
  • 20歳以上:小麦・甲殻類

特定原材料7品目(卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに)は表示義務があり、これらが小児期の主要アレルゲンです。
参考)https://smartdock.jp/contents/symptoms/sy078/

 

薬物性アレルゲン

薬物性アナフィラキシーは投与後5分以内の発症が多く、最も危険とされています。
昆虫毒

  • スズメバチ・アシナガバチ 🐝
  • ミツバチ
  • ヒアリ・ムカデ

ハチ刺傷による死亡例は年間20名程度報告されており、2回目以降の刺傷で重篤化リスクが高まります。夏から秋(8月ピーク)が好発時期です。
参考)https://allergy72.jp/cause/factor.html

 

特殊な病型

  • 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
  • アルコール依存性アナフィラキシー
  • 寒冷誘発性アナフィラキシー

アナフィラキシー・ショックの治療法・救急対応

アナフィラキシー・ショックの治療は**「一にも二にもアドレナリン」**が基本原則です。
第一選択薬:アドレナリン筋注

  • 用量:0.01ml/kg(最大0.3ml)
  • 投与部位:大腿外側中央部 💉
  • 再投与:5-15分毎に効果を見て判断
  • 効果:α・β受容体刺激による血管収縮・気管支拡張

初期対応(ABCDE approach)

  • A:Airway(気道確保)
  • B:Breathing(呼吸管理・酸素投与)
  • C:Circulation(循環管理・輸液)
  • D:Disability(神経学的評価)
  • E:Exposure(全身観察)

補助的治療

  • 抗ヒスタミン薬:皮膚症状軽減(即効性なし)
  • ステロイド:二相性反応予防(エビデンス限定的)
  • β2刺激薬:気管支拡張作用
  • 急速輸液:ショック時10-20ml/kg

体位管理

  • 仰臥位・下肢挙上30cm
  • 意識消失時は側臥位
  • 呼吸困難時は半座位

林寛之先生の「ABCD基準」は有名で、全身じんましんに加えて以下のいずれかがあればアドレナリン投与を推奨しています:

  • A:Airway(喉頭浮腫)
  • B:Breathing(喘鳴)
  • C:Circulation(ショック)
  • D:Diarrhea(下痢・腹痛)

日本アレルギー学会アナフィラキシーガイドライン2022

アナフィラキシー・ショックの二相性反応・経過観察

二相性反応は一度症状が改善した後、アレルゲンへの追加曝露なしに再度症状が出現する現象です。この反応は医療従事者が特に注意すべき重要な合併症です。
参考)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f07694a888da7d1f2a19e4c76a5228878456ad9a

 

二相性反応の特徴

  • 発生頻度:0.4-23%(報告により大きく異なる)
  • 発症時期:初回症状から72時間以内(多くは4-8時間後)
  • 重症度:初回より軽度が多いが、致命的になることもある 📊

日本の実態調査結果
横浜労災病院と日本大学附属板橋病院の共同研究(2016-2019年)では、救急部門でのアナフィラキシー患者における二相性反応の実態が明らかになりました。
経過観察の原則

  • アドレナリン使用例:最低24時間入院観察 🏥
  • 重症例:48-72時間の観察を検討
  • 軽症例でも最低4-6時間の経過観察

観察項目

  • バイタルサイン(血圧・脈拍・呼吸・体温)
  • 酸素飽和度
  • 意識レベル
  • 皮膚症状の再出現
  • 呼吸器症状

二相性反応の予防策

  • ステロイド投与(プレドニゾロン1-2mg/kg)
  • 抗ヒスタミン薬の継続投与
  • 原因アレルゲンの完全除去
  • 患者・家族への教育

退院時指導

  • エピペン®の処方・使用指導 💉
  • アレルゲン回避の徹底
  • 症状再出現時の対応方法
  • 緊急時連絡先の確認

アナフィラキシー・ショックの予防・患者教育戦略

アナフィラキシー・ショックの予防には、アレルゲン回避と緊急時対応準備が不可欠です。医療従事者による継続的な患者教育が重要な役割を果たします。

 

アレルゲン回避戦略

  • 食物アレルギー:成分表示の確認・外食時の申告 🍽️
  • 薬物アレルギー:アレルギー手帳・医療情報カードの携帯
  • 昆虫アレルギー:野外活動時の防護対策
  • 職業性アレルゲン:労働環境の改善

エピペン®(アドレナリン自己注射薬)

  • 適応:アナフィラキシー既往者・高リスク患者
  • 使用方法:大腿部外側への筋肉注射
  • 有効期限:18ヶ月(定期的な確認が必要)
  • 使用後は必ず救急受診

患者・家族教育のポイント

  • 症状の早期認識
  • エピペン®の正しい使用法
  • 緊急時の行動計画(アクションプラン)
  • 学校・職場への情報共有

医療機関での体制整備

  • 救急カートの定期点検
  • スタッフへの継続教育
  • アナフィラキシー対応プロトコルの整備
  • 患者情報の適切な管理

近年では、遅発性赤身肉アレルギーα-Galアレルギーなど新しいタイプのアナフィラキシーも報告されており、医療従事者は最新の知見を常に更新する必要があります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8346007/

 

意外な事実として、アナフィラキシーの約10-20%は原因不明(特発性)であり、完全な予防は困難です。そのため、症状認識と迅速な対応がより重要になります。
また、職業関連アナフィラキシーでは、林業・農業・建設業・養蜂業従事者のハチ刺傷リスクが高く、産業医との連携による予防対策も重要です。
医薬品によるアナフィラキシー対応マニュアル(PMDA)
医療従事者は、アナフィラキシー・ショックが予測不可能で急激に悪化する可能性があることを常に念頭に置き、迅速かつ的確な対応を心がけることが患者の生命予後を決定する重要な要因となります。日々の臨床現場で遭遇する可能性がある緊急事態として、継続的な学習と準備が不可欠です。