エピペンの基本的な使用者は、医師から処方を受けた本人とその家族です 。エピペンは本人または保護者が自ら注射する目的で作られており、注射の方法や投与のタイミングについて医師から処方時に十分な指導を受けています 。処方対象となるのは、過去にアナフィラキシーを起こして医療機関で検査や治療を受けた経験がある方が多く、特に「アナフィラキシーの既往があり、症状の進展が早く時間的な猶予がない方、致死的なアナフィラキシーを経験されている方、近隣の医療機関が遠く緊急時にすぐに対応してもらえない方」に処方されることが一般的です 。
参考)https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/syouboukikan_houkoku.pdf
エピペンの処方は、安全性や有効性等について事前に講習を受けて登録された医師のみが行うことができる制度となっており、適切な医学的判断のもとで処方が決定されます 。
参考)どういう人がエピペンを処方されていることが多いのですか。-山…
学校の教職員も、一定の条件を満たせばエピペンを使用することが法的に認められています 。エピペンの注射は法的には「医行為」にあたりますが、医師でない者(本人と家族以外の第三者)であっても、緊急やむを得ない措置として行われる場合は医師法第17条違反とはなりません 。
参考)https://www.ken-ei.co.jp/wp/wp-content/uploads/2015/12/dcfeccbe633363b3d1b2f2b14947ea63.pdf
学校での使用には事前の研修が重要とされており、教職員がアナフィラキシーの状態を判断し、エピペンの使用ができることを目的とした講習会が各地で実施されています 。実際の学校現場では、「迷ったらエピペンを打つ」という方針のもと、5分以内の迅速な判断と対応が求められています 。
参考)https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/zenbun1
保育園の職員についても、学校と同様に緊急時のエピペン使用が認められています 。保育所におけるエピペンの使用は、保護者の同意を得た上で事前に地域の消防機関に情報共有を行い、緊急やむを得ない措置として行われるものであり、医師法第17条違反とはなりません 。
参考)エラー
消防職員についても、救急対応の一環としてエピペンの使用が可能とされています 。ただし、これらの使用はいずれも緊急時の応急措置として位置づけられており、日常的に医行為を行うことを意図したものではありません 。
参考)医師法とエピペン - 寺島行政書士事務所
エピペンの第三者による使用が法的に認められる根拠は、医師法の解釈にあります 。医師法で禁止されているのは「医業」であり、「業」とは基本的に反復継続する意思をもって行うことを指します。現にアナフィラキシーショックを起こしている患者に対するエピペン注射は特異なケースであり、反復継続する意思をもって行う人はいないため、医師法の観点ではクリアになると考えられています 。
AEDの使用と同様に、非医療従事者によるエピペン使用についても、以下の4つの条件を満たす場合には医師法違反とはならないとされています。
参考)https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_04medical/240426_02/medical01_7_1.pdf
エピペンを適切に使用するためには、継続的な研修とシミュレーション練習が不可欠です 。学校や保育園では、エピペントレーナーを使用した実技研修が広く行われており、緊急時の役割分担や具体的な手順について習熟することが重要視されています 。
参考)輝け! CAI! 第3回深谷亜矢さん(看護師、CAI) - …
研修では、まず青色の安全キャップを外し、エピペンを太ももの前外側に垂直に当て、オレンジ色のニードル(針)カバーの先端を「カチッ」と音がするまで強く押し付けて数秒間待つという基本手順を習得します 。また、エピペン使用後は必ず救急車を要請し、医療機関での継続的な観察と治療を受けることが必要です 。
参考)知っておこう!手当の仕方 「アナフィラキシーショック」編
シミュレーション研修では、実際の緊急場面を想定したロールプレイが効果的とされており、発見者、エピペン使用者、介助者、連絡担当者などの役割分担を明確にして練習することで、実際の緊急時に迅速かつ適切な対応ができるようになります 。
参考)エピペン研修のシミュレーションネタとデブリーフィングツールを…