アデノウイルスの潜伏期間は、感染する型により大きく異なります。最も一般的なプール熱(咽頭結膜熱)を引き起こす3型・4型では、潜伏期間は5-7日程度とされています。
参考)https://www.marine-kodomo.jp/adenovirus/
しかし、流行性角結膜炎(はやり目)を引き起こす8型・19型・37型では、1週間以上の潜伏期間があり、型によっては2週間程度潜伏するものも存在します。
参考)https://www.kenei-pharm.com/general/learn/disinfection/7399/
特に注目すべき点は、潜伏期間中であっても他者への感染リスクが存在することです。症状が現れる2日前から感染力を持つとされており、無症状期間での感染拡大が問題となります。
参考)https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/quick-tests-for-infectious-diseases/adenovirus/
感染経路に心当たりがない場合が多いのは、この長い潜伏期間が原因の一つです。
アデノウイルス感染症の症状は、50種類以上存在する型により多様な臨床像を示します。最も特徴的なのは**咽頭結膜熱(プール熱)**で、発熱・咽頭痛・結膜炎の三大症状が現れます。
参考)https://www.dr-kumai.com/tokushu/adenovirus.html
発熱パターンでは、40℃と37℃の間を上下する弛張熱が4-5日間続くことが特徴的です。扁桃腺に白い膿が付着し、咽頭後壁が真っ赤になることも診断の手がかりとなります。
参考)https://saikazo.org/department/pediatrics_-column01/
結膜炎症状では、片側から始まる眼の充血、眼脂(目やに)、眼瞼の腫れが認められます。流行性角結膜炎では眼症状が主体となり、異物感や光をまぶしく感じる症状も現れます。
参考)https://otakanomori-cc.com/adenovirus.html
胃腸炎型では、腹痛・嘔吐・下痢が主症状となり、31型・40型・41型で多く見られます。
呼吸器症状として、咳・鼻水・鼻づまりが現れ、重篤な場合は肺炎を合併することもあります。
診断では、迅速抗原検査が有効で、咽頭粘膜や結膜から採取した検体で10-15分程度で結果が得られます。
アデノウイルスはインフルエンザと同程度の強い感染力を持つウイルスです。主な感染経路は以下の通りです:
飛沫感染:くしゃみ・咳による飛沫中のウイルスが粘膜に付着することで感染が成立します。感染者から1-2メートル以内での接触で感染リスクが高まります。
接触感染:感染者の唾液・涙・鼻汁・便に含まれるウイルスが手指を介して口・鼻・眼の粘膜に到達することで感染します。
糞口感染:便中に排出されたウイルスが手洗い不足により経口摂取されることで感染が成立します。特に乳幼児では重要な感染経路となります。
特に注意すべきはタオルの共用による感染拡大です。プール施設での感染が多いのは、プール内での感染だけでなく、脱衣所でのタオル共用が原因となることが多いためです。
感染力の持続期間も重要で、症状消失後も咽頭からは1-2週間、便からは3-5週間ウイルスが排出され続けます。このため、症状改善後も感染対策の継続が必要です。
参考)http://www.yoshida-cl.com/6-byo/adeno.html
アルコール消毒の限界:アデノウイルスはノンエンベロープウイルスのため、アルコール消毒では効果が期待できません。次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が有効とされています。
アデノウイルス感染症の診断には、迅速抗原検査が第一選択となります。検体採取は咽頭粘膜または結膜粘膜から行い、綿棒でしっかりとこすり取ることが重要です。
検査手順。
診断精度:迅速検査の感度は80-90%程度とされており、偽陰性の可能性も考慮する必要があります。臨床症状と検査結果を総合的に判断することが重要です。
血液検査所見:白血球数の軽度増加、CRP(C反応性蛋白)の上昇が認められることがあります。しかし、これらは特異的所見ではなく、確定診断には至りません。
鑑別診断。
検査時期の考慮:症状出現初期では検査感度が低下する可能性があるため、症状が明確になった段階での検査が推奨されます。
保険適用:迅速抗原検査は保険適用となっており、外来診療での実施が可能です。
アデノウイルス感染症に対する特異的な抗ウイルス薬は存在しないため、治療は完全に対症療法となります。患者の免疫力による自然治癒を待ちながら、症状の軽減と合併症の予防に重点を置きます。
発熱管理。
咽頭痛対策。
結膜炎治療。
胃腸症状管理。
隔離期間:学校保健安全法により「主要症状消失後2日間」の出席停止が規定されています。しかし、ウイルス排出は症状消失後も継続するため、手洗い等の感染対策は継続が必要です。
経過観察のポイント。