トラゾドンは1971年にイタリアで開発された抗うつ薬で、SARI(セロトニンアンタゴニスト-再取り込み阻害剤)に分類される特殊な薬理作用を持つ薬剤です。主な作用機序は以下の通りです。
参考)https://www.cocorone-clinic.com/column/sleeping_pills06.html
セロトニン再取り込み阻害作用 💊
5-HT2A・5-HT2C受容体遮断作用 🧠
ヒスタミンH1受容体・α1受容体阻害 😴
トラゾドンは各種モノアミン受容体への親和性を示しますが、ドーパミン受容体やムスカリン性アセチルコリン受容体への親和性はほとんどありません。このため抗コリン作用による副作用が少なく、前立腺肥大や便秘の合併患者にも使用可能です。
参考)https://cocoro.clinic/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%BE%E3%83%89%E3%83%B3
トラゾドンは抗うつ薬でありながら、睡眠改善作用が注目され、不眠症治療薬としても広く使用されています。睡眠への効果は以下の3点が報告されています。
入眠困難の改善 🌙
中途覚醒の改善 🛌
深い睡眠の増加 📊
コクランライブラリーの系統的レビューでは、少量のトラゾドンがプラセボより睡眠の質を改善することが示されています。ベンゾジアゼピン系睡眠薬と異なり、耐性・依存性が問題とならず、処方日数制限もありません。
参考)https://chienowa.org/?p=2295
不眠症治療における用量は個人差が大きく、25mgから200mgと幅広い設定が可能で、患者の症状や反応性に応じた細かな調整ができる利点があります。
トラゾドンはうつ病の適応外使用として、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や各種不安障害に対しても臨床応用されています。
PTSD関連症状への効果 🎯
全般性不安障害(GAD)への応用 💭
認知症に伴う興奮・攻撃性 👴
神経性大食症への効果 🍽️
ただし、これらの適応はすべて保険適応外使用となるため、十分なインフォームドコンセントと慎重な経過観察が必要です。
トラゾドンの副作用は比較的軽微で、高齢者にも使いやすい薬剤として知られています。承認時までの副作用頻度は以下の通りです。
主な副作用(発現頻度) ⚠️
重篤な副作用(頻度不明) 🚨
特徴的な副作用 📋
離脱症状への注意 ⚡
トラゾドンは制止症状や意欲低下がある場合には鎮静作用により症状を悪化させる可能性があり、使用には注意が必要です。また、双極性障害だけでなく単極性うつ病でも躁転のリスクがあり、SSRIよりも短時間で躁転する場合があることが報告されています。
トラゾドンの用法用量は、治療目標や患者背景により大きく異なり、個別化医療の重要性が高い薬剤です。
標準的用法用量 📝
個別化のポイント 🎯
特殊状況での考慮 👨⚕️
用量調整の実際 ⚖️
トラゾドンは24歳以下の患者で自殺念慮・自殺企図のリスク増加の報告があるため、若年者への処方時はリスクとベネフィットの慎重な評価が必要です。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med_product?id=00063030
併用注意薬剤として、QT延長を起こす薬剤との併用は心室頻拍のリスクがあり、定期的な心電図モニタリングが推奨されます。また、CYP3A4阻害薬との併用により血中濃度上昇の可能性があるため、用量調整が必要な場合があります。
医療従事者向けのトラゾドン使用時の要点として、効果発現には個人差が大きく、患者の症状改善度合いと副作用発現を継続的に評価し、適切な用量設定を行うことが治療成功の鍵となります。