テノゼット(テノホビル ジソプロキシル フマル酸塩)による腎機能障害は、最も注意すべき重大な副作用の一つです。腎機能不全、腎不全、急性腎障害、近位腎尿細管機能障害、ファンコニー症候群、急性腎尿細管壊死、腎性尿崩症、腎炎などの多様な腎障害が報告されています。
参考)https://www.carenet.com/drugs/category/antivirals/6250024F1030
発現メカニズムとして、テノホビルが近位腎尿細管細胞に蓄積し、細胞毒性を示すことが知られています。特に長期投与患者では、クレアチニン値の上昇や蛋白尿、多尿などの症状が徐々に現れる場合があります。臨床試験データでは、血中クレアチニン増加が3%の患者で観察されており、投与開始前と定期的な腎機能検査が必須です。
参考)https://asitano.jp/article/11146
腎機能障害の既往がある患者や腎毒性薬剤併用時は特に注意が必要で、投与量調整や代替薬の検討も重要となります。初期症状として、むくみ、尿量減少、のどの渇きが挙げられており、患者への適切な情報提供と症状観察が求められます。
参考)https://www.qlife.jp/meds/rx38900.html
乳酸アシドーシスは、テノゼット投与時に発現する可能性がある重篤な副作用です。この病態は、体内に乳酸が蓄積し、血液のpHが低下することで生命に危険を及ぼす可能性があります。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00062717.pdf
発症機序として、核酸アナログ製剤であるテノゼットがミトコンドリアDNA合成を阻害し、細胞内エネルギー代謝に影響を与えることが関与しています。特に肝機能が低下している患者や、長期投与を受けている患者でリスクが高まります。
初期症状には、過呼吸、意識障害、手足の震え、筋肉痛、脱力感、吐き気、腹痛などがあります。これらの症状が現れた場合は、直ちに投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。予防策として、定期的な血液ガス分析や乳酸値測定、肝機能検査の実施が推奨されます。
テノゼット投与により膵炎が発現する可能性があり、頻度不明の重大な副作用として位置づけられています。膵炎の発現は、血中アミラーゼ上昇、リパーゼ上昇、血中トリグリセリド上昇などの検査値変動を伴います。
臨床症状として、激しい腹痛、背部痛、吐き気、嘔吐が特徴的です。腹痛は上腹部から始まり、背中に放散する激痛として現れることが多く、前かがみの姿勢で痛みが軽減される場合があります。
診断には、血液検査での膵酵素上昇の確認とともに、画像検査(CT、MRI、超音波検査)による膵臓の炎症所見の評価が重要です。膵炎と診断された場合は、テノゼットの投与を直ちに中止し、適切な治療を開始する必要があります。絶食、輸液療法、鎮痛管理などの支持療法が基本となります。
テノゼット投与時に最も頻繁に報告される副作用は消化器症状です。主な症状として、悪心(1~5%未満)、腹痛(1~5%未満)、下痢、嘔吐、鼓腸(頻度不明)が挙げられています。
これらの消化器症状は、投与初期に現れることが多く、多くの場合は軽度から中等度で、継続投与により軽減される傾向があります。しかし、症状が持続する場合や重篤化する場合は、投与継続の可否を慎重に判断する必要があります。
患者ケアとして、食事指導が重要です。空腹時投与により胃腸症状が強くなる可能性があるため、食事と一緒に服用することを推奨します。また、十分な水分摂取を促し、脱水予防に努めることも大切です。症状が軽減しない場合は、制酸剤や消化管運動改善薬の併用を検討することもあります。
テノゼットの長期投与において、骨密度低下は見落とされがちな重要な副作用の一つです。この副作用は、テノホビルの腎尿細管への影響により、リン酸再吸収が阻害され、低リン酸血症が引き起こされることが関与しています。
骨密度低下のメカニズムとして、慢性的な低リン酸血症により骨石灰化が障害され、骨軟化症や骨粗鬆症のリスクが増大します。特に高齢者や閉経後女性、ステロイド併用患者ではリスクが高くなります。
監視体制として、投与開始前のベースライン骨密度測定と、年1回の定期的な骨密度検査(DEXA法)が推奨されます。また、血清リン、カルシウム、ALP、25-ヒドロキシビタミンD値の定期的監視も重要です。骨密度の有意な低下が認められた場合は、ビスホスホネート製剤やビタミンD製剤の併用、必要に応じて代替薬への変更を検討します。
患者指導として、適度な運動習慣、カルシウムやビタミンDの十分な摂取、禁煙・節酒の重要性を説明することが求められます。