テノーミンの有効成分であるアテノロールは、心臓に多く存在するβ1受容体を選択的に遮断するβ遮断薬です。通常、交感神経が興奮すると、アドレナリンやノルアドレナリンといったカテコールアミンがβ1受容体に結合し、心拍数の増加や心収縮力の増強を引き起こします。
参考)https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=50182
アテノロールはこれらのカテコールアミンと競合的に拮抗し、β1受容体と結合することで本来の興奮作用を阻害します。この選択的遮断作用により、以下の効果が期待できます:
参考)https://sokuyaku.jp/column/atenolol-tenormin.html
β受容体にはβ1とβ2のサブタイプがあり、β2は主に気管支や血管に存在しますが、アテノロールはβ1受容体への選択性が高いため、気管支への影響が少ないという特徴があります。
テノーミンは本態性高血圧症(軽症~中等症)の治療に広く使用されており、高血圧患者の約85%を占める本態性高血圧に対して効果を発揮します。本態性高血圧は原因が特定できない高血圧で、生活習慣や体質など複数の因子が関連して発症すると考えられています。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=50120
高血圧治療におけるテノーミンの効果メカニズム。
興味深いことに、アテノロールは世界保健機関(WHO)によってエッセンシャルドラッグ(世界の基準薬)に指定されており、現在80カ国以上で製造販売されている信頼性の高い薬剤です。
狭心症は心筋への血流不足により引き起こされる胸痛発作ですが、テノーミンは心筋酸素需要を減少させることで症状の改善と発作の予防に効果を示します。
参考)https://uchikara-clinic.com/prescription/tenormin/
狭心症治療における具体的な効果。
テノーミンは運動負荷や薬剤負荷による心拍数上昇に拮抗し、心仕事量を減少させることが健康男性や狭心症患者での研究で確認されています。これにより、労作性狭心症の患者さんでも安全に日常活動を行えるようになります。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00050120.pdf
テノーミンは洞性頻脈や期外収縮などの頻脈性不整脈に対して優れた治療効果を発揮します。心臓の刺激伝導系に対する抑制効果により、異常な電気的興奮を安定化させます。
不整脈治療における作用メカニズム。
特に甲状腺機能亢進症による頻脈や動悸に対しては、抗甲状腺薬の効果が現れるまでの補助的治療として使用されることがあります。この場合、甲状腺ホルモン値が正常化してくると段階的に減量・中止が検討されます。
参考)https://kobe-kishida-clinic.com/endocrine/endocrine-medicine/atenolol/
テノーミンは循環器疾患だけでなく、内分泌疾患の症状管理にも重要な役割を果たしています。特に甲状腺機能亢進症やバセドウ病における症状コントロールでは、その選択的β1遮断作用が有効です。
内分泌疾患での応用効果。
褐色細胞腫やパラガングリオーマの患者では、必ずα遮断剤で初期治療を行った後にテノーミンを投与し、常にα遮断剤を併用する必要があります。これは単独使用により血圧が急激に上昇する危険性があるためです。
甲状腺機能亢進症の治療では、根本的な治療である抗甲状腺薬と並行して症状緩和を目的として使用され、甲状腺ホルモンレベルが安定してくると徐々に減量されます。