タスフィゴ錠35mg(一般名:タスルグラチニブコハク酸塩)は、2024年11月に販売開始されたFGFR(線維芽細胞増殖因子受容体)阻害薬です。本剤の添付文書には、がん化学療法に携わる医療従事者が理解すべき重要な安全性情報と適正使用のための詳細な指針が記載されています。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00071541
本剤は劇薬・処方箋医薬品として分類され、厳格な管理体制のもとでの使用が求められます。特に、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与することが明記されています。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med_product?id=00071541
タスフィゴ錠35mgの有効成分は、1錠中にタスルグラチニブコハク酸塩45.5mg(タスルグラチニブとして35mg)が含有されています。製剤の外観は黄色のフィルムコーティング錠で、直径8.1mm、厚さ4.2mm、重量206.0mgの円形錠剤です。
添加剤として以下の成分が配合されています。
識別コードは「TAS E35」が刻印されており、医療現場での薬剤識別を容易にしています。室温(1~30℃)での保存が可能で、有効期間は3年間設定されています。
参考)https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/guide/ph/170033_4291087F1020_1_00G.pdf
タスフィゴの標準用法用量は、成人に対してタスルグラチニブとして1日1回140mg(錠剤4錠)を空腹時に経口投与することです。空腹時投与が重要な理由は、食事による薬物吸収への影響を避け、安定した血中濃度を確保するためです。
参考)https://www.data-index.co.jp/medsearch/ethicaldrugs/searchresult/detail/?trk_toroku_code=4291087F1020
患者の状態により適宜減量することが可能であり、副作用の程度や患者の全身状態、併存疾患の有無などを総合的に判断して投与量を調整します。減量基準については、Grade 3以上の副作用発現時や肝機能障害の程度に応じた具体的な指針が添付文書に記載されています。
特に注目すべき点として、本剤は遺伝子異常を持つFGFRというタンパクの働きを阻害することにより、がん細胞の増殖を抑制する分子標的薬です。そのため、FGFR遺伝子異常の有無を事前に確認することが適応決定において極めて重要となります。
参考)https://www.qlife.jp/meds/rx52087.html
投与前には以下の検査項目の確認が必要です。
タスフィゴの添付文書には、投与時に注意すべき重大な副作用が詳細に記載されています。FGFR阻害薬としての特徴的な副作用プロファイルを理解することが、安全な薬物療法の実施において不可欠です。
最も重要な副作用として、網膜色素上皮剥離(RPE detachment)があります。この副作用は、FGFR阻害薬に特徴的な眼科系有害事象で、視力低下や視野欠損を引き起こす可能性があります。投与開始前および投与中は定期的な眼科検査が必要で、症状発現時には直ちに投与を中止し、眼科専門医による精密検査を実施する必要があります。
肝機能障害も重要な副作用の一つです。AST、ALTの上昇を伴う肝機能障害が報告されており、定期的な肝機能モニタリングが必要です。Grade 3以上の肝機能障害が発現した場合は、投与中止または減量を検討します。
その他の重要な副作用として以下が挙げられます。
これらの副作用は用量依存的に発現頻度が高くなるため、患者の状態を慎重に観察し、適切なタイミングでの減量や休薬判断が重要です。
タスフィゴの添付文書では、絶対禁忌として本剤の成分に対する過敏症の既往歴を有する患者が明記されています。タスルグラチニブコハク酸塩や添加剤のいずれかに対してアレルギー反応を示した患者では、重篤なアナフィラキシー反応のリスクがあるため投与は禁忌です。
慎重投与が必要な患者群として、以下のような状態の患者が挙げられています。
肝機能障害患者 💊
肝機能が低下している患者では、薬物代謝が遅延し血中濃度が上昇する可能性があります。Child-Pugh分類に応じた用量調整が必要で、重度肝機能障害患者では投与を避けるべきとされています。
腎機能障害患者 🔬
腎機能が著しく低下している患者では、薬物の排泄が遅延する可能性があります。血清クレアチニン値やクレアチニンクリアランスを指標とした慎重な投与が求められます。
心疾患患者 ❤️
QT延長症候群の既往や心不全の既往がある患者では、本剤による心毒性のリスクが高まる可能性があります。投与前後の心電図モニタリングが重要です。
高齢者 👴
一般的に生理機能が低下している高齢者では、副作用が発現しやすい傾向があります。より慎重な経過観察と、必要に応じた減量投与を検討する必要があります。
妊娠可能な女性患者 👶
本剤は催奇形性のリスクがあるため、妊娠可能な女性患者には投与前から投与後一定期間まで確実な避妊の実施が必要です。
タスフィゴの添付文書を活用した効果的な服薬指導は、患者の治療アドヒアランス向上と副作用の早期発見において極めて重要な役割を果たします。薬剤師は添付文書の情報を基に、患者個別の状況に応じた具体的な指導を行う必要があります。
空腹時投与の重要性説明 🕐
患者に対して、食事の2時間前または食後2時間以降での服用の重要性を具体的に説明します。食事による吸収への影響を避けるため、毎日同じ時間帯での服用を推奨し、患者の生活パターンに合わせた最適な服用時間を一緒に決定します。
副作用の早期発見のための患者教育 ⚠️
特に網膜色素上皮剥離の症状(視力低下、視野の変化、光がまぶしく感じる等)について、患者が理解しやすい表現で説明します。日常生活での変化に気づいた際の対処法や、緊急時の連絡先を明確に伝えることが重要です。
服薬記録と体調変化の記録指導 📝
患者自身が服薬状況と体調変化を記録できるツールを提供し、医師との面談時に有効活用できるよう支援します。下痢、食欲不振、皮膚症状等の主観的症状も含めて記録する習慣づけを行います。
薬剤師による継続的な服薬支援は、がん薬物療法の成功において不可欠な要素です。添付文書の情報を患者にとって理解しやすい形で伝達し、治療への不安軽減と適切な薬物療法の実施に貢献することが求められています。
エーザイ株式会社が提供するhhcホットライン(フリーダイヤル 0120-151-454)では、平日9時~18時、土日祝日9時~17時に一般的な問い合わせに対応しており、患者指導時の参考情報源として活用可能です。