心電図モニタ算定と診療報酬の基礎知識

心電図モニタの算定要件や保険点数、診療録記載のポイントについて医療従事者向けに詳しく解説します。呼吸心拍監視との違いや特定入院料との関係も理解できていますか?

心電図モニタの算定

心電図モニタ算定の重要ポイント
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D220呼吸心拍監視での算定

カルジオスコープ等で心電図モニタリングを実施する際の基本点数と算定期間による点数変動

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診療録記載の義務

観察結果の要点記載が算定要件となり、記録の不備は査定対象となる可能性

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適応患者の判断

重篤な心機能障害または呼吸機能障害を有する患者が対象で常時監視が必要

心電図モニタの算定は、主にD220「呼吸心拍監視、新生児心拍・呼吸監視、カルジオスコープ(ハートスコープ)、カルジオタコスコープ」として行われます。この検査は、重篤な心機能障害若しくは呼吸機能障害を有する患者、またはそのおそれのある患者に対して常時監視を行っている場合に算定されるものです。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_3_3_3%2Fd220.html

心電図モニタの算定では、心電曲線及び心拍数のいずれも観察した場合に算定が可能となります。呼吸曲線を同時に観察した場合の費用は所定点数に含まれるため、別途算定することはできません。
参考)呼吸心拍監視、新生児心拍・呼吸監視、カルジオスコープ(ハート…

心電図モニタの保険点数体系

 

心電図モニタリングを実施する際の診療報酬点数は、実施時間と実施日数によって段階的に設定されています。​
基本的な点数体系:

  • 1時間以内または1時間につき:50点
  • 3時間を超えた場合(1日につき)の7日以内:150点
  • 同じく7日を超え14日以内:130点
  • 同じく14日を超えた場合:50点

この点数体系では、7日以内が最も高い点数設定となっており、急性期における密な観察の重要性が評価されています。7日を超えた場合は、検査に要した時間にかかわらず上限点数での算定となります。​
💡 重要なポイント:同一日に呼吸心拍監視、新生児心拍・呼吸監視、カルジオスコープ、カルジオタコスコープを行った場合は、主たるもののみ算定します。
参考)MC Plus Material - 診療報酬の算定方法の一…

心電図モニタ算定の具体的要件

心電図モニタを算定するためには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。​
診療録記載の必須要件:
呼吸心拍監視、新生児心拍・呼吸監視、カルジオスコープ、カルジオタコスコープは、観察した呼吸曲線、心電曲線、心拍数のそれぞれの観察結果の要点を診療録に記載した場合に算定できます。この記載がなければ算定要件を満たさないため、必ず観察結果の要点を診療録に残すことが重要です。
参考)301 Moved Permanently

対象患者の適応判断:
新生児心拍・呼吸監視、カルジオスコープ、カルジオタコスコープは、重篤な心機能障害若しくは呼吸機能障害を有する患者、またはそのおそれのある患者に対し、心電曲線及び心拍数の観察を行っている場合に算定します。​
📋 診療報酬明細書への記載:診療報酬明細書の摘要欄に、呼吸心拍監視等の算定開始日を記載する必要があります。
参考)https://rikacata.jp/iportal/CatalogPageGroupDetail.do?method=initial_screenamp;volumeID=SSH00001amp;catalogID=467450000amp;pageGroupID=49

心電図モニタの日数計算と再装着時の取扱い

心電図モニタの算定日数の計算には、特殊なルールが適用されます。​
呼吸心拍監視装置等の装着を中止した後、30日以内に再装着が必要となった場合、日数の起算日は最初に呼吸心拍監視、新生児心拍・呼吸監視、カルジオスコープ、カルジオタコスコープを算定した日となります。この場合、当該検査を中止している期間についても実施日数の計算に含めるため注意が必要です。​
特定入院料との関係:
特定入院料を算定した患者が引き続き呼吸心拍監視等を行う場合の日数の起算日についても、同様のルールが適用されます。特定入院料算定中は呼吸心拍監視の費用が包括されているため、特定入院料を算定しなくなってから改めて算定を開始する際の起算日の考え方に注意が必要です。
参考)ICUでも看護必要度A項目見直しへ、心電図モニターなどの項目…

⚠️ 算定不可の状況:人工呼吸を同一日に行った場合は、呼吸心拍監視等に係る費用は人工呼吸の所定点数に含まれるため、別途算定できません。また、マスクまたは気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔と同一日に行われた場合における当該検査の費用は、当該麻酔の費用に含まれます。​

心電図モニタと看護必要度評価の関係

心電図モニタは、看護必要度の評価項目として長年用いられてきましたが、近年の診療報酬改定で評価項目からの削除が進んでいます。
参考)ICU評価は「看護必要度+SOFAスコア」へ、HCU看護必要…

一般病棟用の看護必要度では、令和4年度改定で「心電図モニターの管理」が評価項目から削除されました。この背景には、自宅退院した患者について退院日もしくは退院前日まで心電図モニタに該当する患者が一定数いたこと、また心電図モニタを削除した場合のシミュレーションで看護必要度Ⅰで18.9%、看護必要度Ⅱで11.9%が評価基準を満たさなくなる結果となったことがあります。
参考)重症度、医療・看護必要度はどう変わってきた?(第7回/全8回…

HCU・ICUでの取扱い:
HCU(高度治療室)用の看護必要度についても、「心電図モニタの管理」や「輸液ポンプ管理」に該当する患者が100%近くに達しており、HCU入室時の状態や手術の有無に関係なく該当していることが明らかになりました。そのため、HCU用の看護必要度からも心電図モニタ管理が削除される方向で議論が進められています。​
一方、ICU(特定集中治療室)では、「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」のみでA項目3点を満たしている患者が5割以上もいる病院が一部にあることが指摘され、これらの項目に重み付けの見直しが行われました。
参考)ICUの重症度評価、A項目に「重み付け」導入か|2016診療…

🏥 実務上の注意点:看護必要度の評価項目としての心電図モニタと、診療報酬算定としての心電図モニタは別の概念です。看護必要度から削除されても、適切な算定要件を満たせばD220として診療報酬の算定は可能です。​

心電図モニタ管理における安全対策と記録管理

心電図モニタを適切に運用するためには、機器管理と記録管理の両面での対策が重要です。
参考)https://www.med-safe.jp/pdf/year_report_2024.pdf

無線式心電図モニタの管理上の注意点:
無線式心電図モニタでは、セントラルモニタへの入床操作や波形表示の確認が特に重要です。実際に、患者に心電図モニタを装着したがセントラルモニタに入床操作を行っておらず波形が表示されていなかった事例が報告されています。​
セントラルモニタに登録する送信機のチャネル番号を固定する、患者氏名の登録を確実に行う、モニタ装着患者の確認マニュアルを作成し手順を周知徹底するなどの対策が必要です。
参考)https://www.med-safe.jp/pdf/report_2014_2_T003.pdf

📌 記録の取扱い:心電図モニタの記録については、持続的にモニタリングしている場合に記録があることが看護必要度で評価されますが、記録用紙がカルテになくてもよいという意見もあります。しかし、診療録的には記録があるほうが望ましく、特に算定要件として観察結果の要点を診療録に記載することが求められているため、適切な記録管理が重要です。
参考)心電図モニターの記録について質問です。 持続的にモニタリング…

診療録記載の法的位置づけ:
医師法24条1項は「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない」と定めており、診療録の記載は医師法に定められた義務です。診療録は5年間の保存義務が定められており、違反した場合には刑事罰が科されています。
参考)3.カルテ記載 href="https://www.jaog.or.jp/note/3-%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%86%E8%A8%98%E8%BC%89/" target="_blank">https://www.jaog.or.jp/note/3-%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%86%E8%A8%98%E8%BC%89/amp;#8211; 日本産婦人科医会

心電図モニタの算定においても、この法的義務に基づき、観察結果の要点を適切に診療録に記載することが求められます。
参考)https://www.tokyo.med.or.jp/wp-content/uploads/application/pdf/r2jimuko_11.pdf

厚生労働省「別添6 医科診療報酬点数表に記載する診療等に関する通知」には、心電図モニタの装着時間や記録の書式、回数についての詳細な規定が記載されており、算定時の参考になります。
Clinical Support「D220 呼吸心拍監視」では、呼吸心拍監視の算定要件や通知の全文が確認でき、実務での疑問点の解決に役立ちます。
PMDA「一般病棟における心電図モニタの安全使用確認ガイド」には、心電図モニタの安全使用のための教育・訓練プログラムや確認事項が詳しく記載されており、医療安全の観点から重要な資料です。

 

 


とにかく使える モニター心電図