「流涎」は「りゅうぜん」または「りゅうせん」と読みます。よく「りゅうえん」と誤読されることがありますが、これは正しくありません。流涎は医学用語で、英語では「sialorrhea」と表現され、涎(よだれ)を垂れ流すことを指します。
📚 医学的定義
流涎には広義の意味があり、口唇からの唾液の流出だけでなく、口腔後部への唾液の停留も含まれます。これは通常なら嚥下反射を誘発するはずの唾液が下咽頭に流入し、そのまま停留する状態を指します。
流涎の原因は複雑で、主に以下の4つのカテゴリーに分類されます。
🔬 唾液分泌過多による流涎
🧠 神経系疾患による流涎
💪 口腔・咽頭機能障害による流涎
⚙️ 機械的要因による流涎
パーキンソン病患者では、自発的な唾液嚥下回数が正常の1.18回/分から0.8回/分に減少することが報告されており、これが流涎の主要な原因となっています。また、唾液量自体は正常または減少していることが多く、分泌量の問題ではないことが明らかになっています。
流涎の症状評価には、重症度と頻度の両面からアプローチする必要があります。
📊 重症度の評価基準
⏰ 頻度による分類
医療従事者は、流涎の背景にある原疾患を特定するため、以下の点を詳細に評価する必要があります。
🩺 評価項目
パーキンソン病患者における研究では、流涎スコアと口腔咽頭通過時間の間に有意な相関関係(r=0.659)が認められており、嚥下機能の低下が流涎の主要因であることが示されています。
流涎の治療は原因に応じて選択され、薬物療法が第一選択となることが多いです。
💊 薬物療法の選択肢
🏥 侵襲的治療法
33歳男性の症例では、感冒後に流涎が出現し、従来の薬物療法や肉毒素注射、神経阻断術、心理治療が効果不十分であったため、超音波ガイド下微波消融が施行された事例が報告されています。
治療効果の判定には、患者の主観的症状改善と客観的な流涎量の減少を総合的に評価することが重要です。また、薬物療法では副作用(口渇、便秘、視覚障害など)の監視も必要不可欠です。
看護現場では、流涎患者に対する包括的なケアが求められます。
🩺 看護ケアの基本方針
🏃♂️ リハビリテーション技法
小児の流涎に対するアプローチでは、遊びを取り入れた訓練が効果的です。吹き戻しや音のなるおもちゃを使ったブローイング、ストローでの吹き絵など、楽しみながら取り組める方法が推奨されています。
⚠️ 注意すべき合併症
リハビリテーション訓練では、療法士が頻繁に流涎を拭き取る必要があり、運動療法や作業療法の進行に支障をきたす場合もあります。そのため、事前の十分な準備と環境整備が重要です。
介護現場では、軟膏を塗布しても唾液で流れてしまうため、綿花での清拭や痰吸引など、患者の安楽性を重視したケアが必要です。また、無意識に流涎がある場合は、背景に重篤な疾患が隠れている可能性があるため、医師への早期相談が推奨されます。
流涎患者のケアには、医師、看護師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士などの多職種連携が不可欠であり、患者の QOL 向上を目指した総合的なアプローチが求められています。