口内炎 症状と治療方法の全てがわかる完全ガイド

口内炎は口腔粘膜に生じる炎症性病変で、様々な原因と症状をもたらします。本記事では医療従事者向けに口内炎の種類や症状、有効な治療法から予防法まで詳しく解説します。あなたの患者さんへの適切なアドバイスに必要な知識とは何でしょうか?

口内炎 症状と治療方法について

口内炎の基本情報
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定義

口腔内の粘膜に生じる炎症性の病変で、円形または楕円形の潰瘍を形成

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有病率

WHO研究によると4~5人に1人が罹患する一般的な口腔疾患

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一般的な経過

通常1~2週間で自然治癒するが、再発や慢性化する場合もある

口内炎の主な症状とその特徴

口内炎は口腔内の粘膜に生じる炎症性の病変で、多くの患者が経験する一般的な口腔疾患です。主な症状は、口腔内の特定の部位に生じる痛みや不快感で、その症状の現れ方は口内炎の種類や原因によって異なります。

 

最も一般的な症状は以下の通りです。

  • 白色または黄色の潰瘍(中心部)とその周囲の赤い炎症
  • 食事や会話時の痛み(特に酸っぱいものや辛いものを摂取した際に増強)
  • 口腔内の違和感や刺激感
  • まれに微熱を伴うことがある
  • 集中力低下、食欲減退などの日常生活への影響

口内炎の潰瘍は通常、直径5~6mm程度の円形または楕円形の形状をしています。発症部位は頬の内側、舌、口唇内側、歯肉など様々ですが、特定の種類の口内炎では好発部位があります。例えば、アフタ性口内炎は頬粘膜や舌、口唇内側に多く発生します。

 

口内炎による痛みの質も様々で、じんわりとした持続的な痛み、ピリピリとした刺激痛、刺すような鋭い痛み、しみるような痛みなどが報告されています。これらの痛みは、食事や歯磨きなどの日常活動によって増強することが特徴的です。

 

臨床所見としては、潰瘍の大きさ、深さ、数、分布パターン、周囲の炎症の程度などを観察することが重要です。特に再発性アフタ性口内炎では、同一部位ではなく様々な部位に繰り返し発症することが特徴です。

 

口内炎の種類と原因について

口内炎はその病態や原因によって複数の種類に分類されます。主な種類とそれぞれの特徴、原因について解説します。

 

1. アフタ性口内炎
最も一般的な口内炎のタイプで、口腔粘膜に白い潰瘍ができ、周囲が赤く炎症を起こします。明確な原因は特定されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。

  • ストレス
  • 免疫力の低下
  • 睡眠不足
  • ビタミンB2などの栄養素不足
  • 遺伝的素因
  • ホルモンバランスの変化

2. ヘルペス性口内炎
ヘルペスウイルス(主にHSV-1)の感染によって引き起こされる口内炎です。特徴として。

  • 小さな水疱(水ぶくれ)が複数形成される
  • 高熱を伴うことが多い
  • 所属リンパ節の腫脹がみられることがある
  • 唇外側や口腔周囲にも症状が現れることがある
  • 乳幼児(6ヶ月~3歳)に多く見られる
  • 一度感染すると体内に潜伏し、免疫力低下時に再発することがある

3. カンジダ性口内炎(鵞口瘡)
カンジダ菌による真菌感染症で、以下のような特徴があります。

  • 白色の剥離可能な偽膜(こすると剥がれる)
  • 粘膜の発赤や灼熱感
  • 免疫不全状態、抗生物質長期使用後、乳幼児や高齢者に多い
  • 舌や頬粘膜、口蓋などに広範囲に発生することがある

4. カタル性口内炎
細菌感染や物理的刺激によって引き起こされる口腔粘膜の広範囲な炎症です。

  • 口腔内全体の粘膜に発赤がみられる
  • 一般的に痛みは軽度
  • 口腔衛生不良、喫煙、アルコール摂取などが原因となることが多い

5. 薬剤性口内炎
特定の薬剤(抗がん剤、免疫抑制剤など)の副作用として発症する口内炎です。

  • 広範囲に及ぶことが多い
  • 重症化しやすい
  • 治療には原因薬剤の減量や中止が必要となることがある

口内炎の発症メカニズムは、口腔内の常在菌と粘膜防御機能のバランスの崩れによるところが大きいとされています。健康な状態では、口腔粘膜の防御機能が常在菌の侵入や増殖を防いでいますが、様々な要因でこのバランスが崩れると口内炎が発症します。

 

また、口腔内の乾燥(ドライマウス)も口内炎の発症リスクを高める要因となります。唾液には抗菌作用や粘膜保護作用があるため、唾液分泌量の減少は口腔内環境の悪化につながります。

 

口内炎の効果的な治療方法と対策

口内炎の治療アプローチは、その種類や原因、重症度によって異なります。医療従事者として、患者の状態に応じた適切な治療法の選択が重要です。以下に主な治療法と対応策を解説します。

 

局所療法
口内炎の局所療法は最も一般的な対処法です。

  • ステロイド軟膏・貼付剤: 炎症を抑制し、痛みを緩和します。トリアムシノロンアセトニド(ケナログ)やデキサメタゾン(デキサルチン)などが使用されます。
  • 口腔内パッチ剤: 潰瘍部位を保護し、薬剤の効果を持続させます。
  • 含嗽剤(うがい薬): アズレンスルホン酸ナトリウム水和物(アズノール)などの抗炎症作用のあるうがい薬で口腔内を清浄に保ちます。
  • 局所麻酔薬: リドカイン含有製剤などを用いて一時的に痛みを緩和します。
  • 硝酸銀による焼灼療法: 難治性の口内炎に対して行われることがあります。

全身療法
全身的な治療が必要な場合は以下のアプローチが考えられます。

  • ビタミン剤: ビタミンB2、B6、B12、葉酸などの欠乏が疑われる場合は補充療法を行います。
  • 抗ウイルス薬: ヘルペス性口内炎に対してはアシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス薬が有効です。
  • 抗菌薬・抗真菌薬: 二次感染の予防や真菌性口内炎の治療に使用します。
  • 免疫調整薬: 重症の再発性アフタ性口内炎に対しては、コルヒチンやサリドマイドなどが使用されることがあります。

漢方薬による治療
漢方医学的アプローチも口内炎治療に有効とされています。

  • 半夏瀉心湯: 特に口内炎の痛みの緩和に効果があるとされています。局所塗布または内服で使用されます。
  • 柴胡桂枝湯: 体力中等度で、のどの痛み、口内炎などがある場合に使用されます。
  • 黄連解毒湯: 熱症状を伴う口内炎に効果的とされています。

対症療法と生活指導
患者の苦痛を軽減するための対症療法と生活指導も重要です。

  • 刺激物(辛い食べ物、熱い飲食物、アルコールなど)の回避
  • 柔らかく冷たい食事の推奨
  • 適切な口腔衛生管理の指導
  • ストレス管理法の提案

治療期間としては、一般的なアフタ性口内炎は適切な治療を行うことで1~2週間程度で改善することが多いです。しかし、2週間以上症状が持続する場合は、より詳細な検査を行い、背景に重大な疾患がないか検討する必要があります。

 

日本口腔科学会雑誌による口内炎治療に関する最新研究

口内炎の予防法と生活習慣の改善

口内炎の予防は、その発症リスクを低減するだけでなく、再発防止にも重要です。医療従事者として患者に適切な予防法をアドバイスすることで、口内炎に関連する苦痛を軽減することができます。

 

栄養面からの予防アプローチ
口内炎の予防には、バランスのとれた栄養摂取が不可欠です。

  • ビタミンB群: 特にB2(リボフラビン)、B6(ピリドキシン)、B12(コバラミン)の摂取が重要です。これらは魚類、乳製品、緑黄色野菜、豆類などに多く含まれています。
  • 葉酸: 緑黄色野菜、豆類、レバーなどに含まれる葉酸も口内炎予防に有効です。
  • 鉄分: 鉄欠乏も口内炎のリスク因子となるため、赤身肉、レバー、ほうれん草などの摂取を勧めます。
  • 亜鉛: 免疫機能の維持に重要で、牡蠣、赤身肉、ナッツ類などに多く含まれています。
  • ビタミンC: 粘膜の健康維持に寄与し、柑橘類、キウイ、ブロッコリーなどに豊富です