「腎機能が正常でも、併用薬次第でテノホビル濃度が急上昇することがあります。」
レジパスビルは、C型肝炎ウイルス(HCV)が自己複製する際に欠かせない非構造タンパク質NS5Aを直接標的とする阻害薬です。 NS5Aはウイルスのリン酸化タンパク質であり、RNA複製複合体の足場形成・ウイルス粒子の組立・細胞外への放出という3ステップすべてに関与しています。 ja.wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%B8%E3%83%91%E3%82%B9%E3%83%93%E3%83%AB)
つまり、1つの分子をつぶすだけでウイルスの3工程を同時に妨害できます。
配合相手のソホスブビルは活性代謝物(ウリジン三リン酸アナログ)となり、NS5B RNA依存性RNAポリメラーゼに取り込まれてRNA鎖の伸長を停止させます。 このNS5AとNS5Bという2つの異なる標的を同時に阻害する戦略が、ハーボニー配合錠の強力な抗ウイルス効果の根拠です。 kirishima-mc(https://kirishima-mc.jp/data/wp-content/uploads/2023/04/b13f7b485c14b4273a65ae231329ac7a.pdf)
二重遮断が原則です。
国内第III相臨床試験では、ジェノタイプ1の前治療再燃例39例・前治療無効例25例の全症例でSVR12(治療終了12週後のウイルス陰性化)を達成しており、SVR率100%という結果が報告されています。 これは従来のインターフェロン+リバビリン治療のSVR約70〜90%を大きく上回る数字です。 passmed.co(https://passmed.co.jp/di/archives/529)
これは使えそうです。
レジパスビルは経口投与後、胃酸の存在下で吸収が促進される薬剤です。 逆に言えば、胃酸分泌抑制薬(PPI・H2ブロッカー)との併用は吸収を低下させるリスクがあるため、投与タイミングの調整が必要になります。 gorokichi(https://gorokichi.com/okusuri-jouhou/374)
PPIとの同時投与はNGが原則です。
また、レジパスビルおよびソホスブビルはいずれもP糖タンパク(P-gp)およびBCRP(乳がん耐性タンパク)の基質であるため、これらの阻害剤または誘導剤と併用すると腸管内吸収量が大きく変動します。 P-gpを誘導するリファンピシン・カルバマゼピンなどと組み合わせると血中濃度が著しく低下し、治療効果が失われる可能性があります。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=65737)
| 相互作用の種類 | 代表的薬剤 | レジパスビルへの影響 |
|---|---|---|
| P-gp誘導 | リファンピシン、カルバマゼピン | 血中濃度↓→効果減弱 |
| P-gp/BCRP阻害 | アミオダロン | 相手薬の血中濃度↑→毒性増大 |
| 胃酸分泌抑制 | PPI、H2ブロッカー | レジパスビル吸収↓ |
さらに重要なのがテノホビル含有製剤との相互作用です。作用機序は完全には解明されていませんが、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩が基質となるP-gpおよびBCRPに対して、レジパスビルが阻害作用を示すと考えられています。 これによりテノホビルの血中濃度が予測以上に上昇し、腎毒性のリスクが高まります。 pins.japic.or(https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00065737.pdf)
腎機能モニタリングが条件です。
ハーボニー配合錠は当初、セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎・代償性肝硬変に対して2015年9月に承認されました。 国内ではジェノタイプ1bが最多であり、このジェノタイプに対して特に高い有効性が示されています。 passmed.co(https://passmed.co.jp/di/archives/529)
ジェノタイプ1が主な対象です。
その後2018年2月にはセログループ2(ジェノタイプ2)への適応が拡大されています。 ジェノタイプ2はソホスブビル+リバビリン12週が従来の標準治療でしたが、リバビリンの副作用(貧血、催奇形性)を避けたい症例においてハーボニーが選択肢となりました。 passmed.co(https://passmed.co.jp/di/archives/529)
これは知っておきたいですね。
適応拡大にあたっては、ジェノタイプ2でのNS5A阻害効果の検証が改めて行われており、特に代償性肝硬変合併症例での有効性データが蓄積されています。 医療従事者としては「ジェノタイプ1専用」という先入観を捨て、適応確認を最新の添付文書で行うことが重要です。 sakai-med(http://www.sakai-med.jp/CMS/data/img/1216-1-094600.pdf?1774742400033)
最新の添付文書確認が必須です。
NS5A阻害剤には耐性関連置換(RAS:Resistance-Associated Substitution)が問題になります。レジパスビルに関連する代表的な耐性変異としてY93H変異およびL31M/V変異が知られています。 これらの変異を持つウイルスでは、レジパスビルの阻害効果が最大100倍以上低下するとされています。 g-station-plus(https://www.g-station-plus.com/ta/hcv/harvoni/mechanism)
100倍の耐性差は厳しいですね。
ただし、ソホスブビルに対する耐性変異は非常に生じにくいという特徴があります。NS5Bポリメラーゼに作用するソホスブビルはヌクレオチドアナログ型であるため、核酸塩基レベルでの取り込みが起こり、耐性変異が生じても複製能力が著しく低下します。 そのため、NS5A側に耐性があっても、NS5B阻害が下支えすることである程度の抗ウイルス効果が維持されます。 g-station-plus(https://www.g-station-plus.com/ta/hcv/harvoni/mechanism)
つまり二重阻害で耐性リスクを補完しているということですね。
臨床的には、前治療(特にNS5A阻害剤含む治療)で再燃した症例では、治療開始前にNS5A領域の耐性変異検査を実施することが推奨されます。変異パターンによっては治療期間を12週から24週に延長するか、グレカプレビル/ピブレンタスビルなど別クラスの薬剤への変更が検討されます。
事前の耐性検査が現場では大切です。
ソホスブビルとの配合薬であるハーボニー配合錠は、eGFR 30 mL/min/1.73m²未満の重篤な腎機能障害患者には原則として使用できません。 ソホスブビルの主代謝物GS-331007が腎から排泄されるため、腎機能が低下していると代謝物が蓄積し安全性データが不十分とされています。 sakai-med(http://www.sakai-med.jp/CMS/data/img/1216-1-094600.pdf?1774742400033)
eGFR30が一つの目安です。
一方でレジパスビル単独は肝代謝・胆汁排泄が主であるため腎障害の影響を受けにくいという特性があります。 この点が、後発のグレカプレビル+ピブレンタスビル(マヴィレット)がすべての腎機能ステージに使用可能であることと対比されます。高度腎機能障害を持つHCV患者に対しては、同薬への切り替えが現在の標準的なアプローチです。
腎機能に合わせた薬剤選択が原則です。
また、先述のテノホビル含有製剤との相互作用は、HIV/HCV重複感染患者で問題になりやすいです。 このような患者では腎機能を定期的に確認しながら(例:4週ごとの血清クレアチニン・eGFR測定)、テノホビル腎毒性の早期検出を心がける必要があります。腎機能悪化が疑われる場合は速やかに感染症科・腎臓内科と連携することが求められます。 pins.japic.or(https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00065737.pdf)
参考リンク(NS5A/NS5B作用機序の詳細解説。ハーボニーの作用機序の部分に対応)。
ハーボニー配合錠(レジパスビル/ソホスブビル)の作用機序 - PassMed DI
参考リンク(ハーボニーの臨床使用情報・相互作用・禁忌事項。薬物相互作用の部分に対応)。
ハーボニー配合錠(レジパスビル/ソホスブビル)の特徴・作用機序 - ごろ暗記薬学
参考リンク(NS5Bポリメラーゼ阻害とNS5A阻害の組み合わせ解説。霧島市立医師会医療センター薬剤部DIニュース)。
薬剤部DIニュース(ハーボニー配合錠) - 霧島市立医師会医療センター