ラクトミンは乳酸菌の一種であり、元々人間を含む動物の腸内に存在する生菌です。その主要な効果メカニズムは、小腸下部・大腸において腸内にやってきた糖を分解することにあります。この分解過程で乳酸・酢酸が産生され、腸内のpHが適正に整えられます。
酸性環境の形成により、以下の効果が期待できます。
ラクトミンは腸内で増殖しやすいタイプの乳酸菌であり、腸内環境を持続的に改善する特徴があります。なんらかの原因(腸炎や下痢など)で腸内細菌のバランスが崩れた際に、乳酸菌を補うことで腸内細菌のバランスを整え、胃腸症状を改善させます。
ラクトミンの主成分は私達が毎日摂取する食品に普通に存在する菌であるため、服薬による副作用はほとんどありません。実際、先発品の「ビオフェルミン配合散」の添付文書には、「本剤は安全性が高く、常用量をこえて長期投与しても副作用があらわれることは少ないと考えられる」と記載されています。
一般的な副作用。
重篤な副作用。
極めて稀ですが、免疫機能が極端に低下している患者では菌血症のリスクが報告されています。フィンランドの研究(1989-1992年、約250万人対象)では、4年間で乳酸菌による菌血症は8例のみと報告されており、その発生頻度は極めて低いことが示されています。
菌血症の症状には以下があります。
ラクトミンの効能又は効果は「腸内菌叢の異常による諸症状の改善」と記載されています。具体的な適応症は以下の通りです。
主要適応症。
整腸剤の特徴として、腸内細菌のバランスの乱れが原因であれば下痢・便秘のどちらにも効果を発揮します。これは腸内環境を正常化することで、過度な蠕動運動の抑制や適切な水分吸収の促進を図るためです。
用法・用量。
ラクトミンを使用する際の重要な注意点として、抗生物質との併用があります。抗生物質は菌を殺菌する作用があるため、ラクトミンの主成分である乳酸菌も同時に殺菌してしまい、整腸作用を発揮できなくなります。
抗生物質併用時の対応。
特別な注意を要する患者群。
約2週間服用しても症状の改善がみられない場合は、服用を中止して医師や薬剤師に相談することが推奨されています。
ラクトミンの効果発現時間については、その主成分が食品にも含まれる乳酸菌であるため、一般的な医薬品のような厳密な薬物動態試験は行われていません。しかし、臨床的な観察では以下のような傾向が報告されています。
効果発現の目安。
ラクトミン1g中には約1億~10億個の菌が含まれており、これらの菌が腸内で定着・増殖することで持続的な整腸効果を発揮します。食品由来の乳酸菌と同様に、継続的な摂取により腸内フローラの改善が期待できます。
投与継続のポイント。
胃酸による菌の死滅を最小限に抑えるため、食後服用が推奨されます。食後では胃内に食事が残っているため胃内の酸性度が弱まり、生きた乳酸菌を腸に届けることができます。
医療従事者として、ラクトミンの安全性の高さと効果の穏やかさを理解し、患者の症状や併用薬を考慮した適切な処方提案を行うことが重要です。特に抗生物質との併用時には、耐性菌株を含む製剤への変更を検討し、患者の腸内環境を総合的にサポートする治療戦略を立てることが求められます。