脳血管障害は、脳の血管に生じる病気の総称であり、主に虚血性脳血管障害と出血性脳血管障害の2つに大きく分類されます 。この分類は、病態の基本的な発生メカニズムに基づいており、治療法や予後も大きく異なることから臨床的に重要な意味を持ちます 。
参考)脳血管障害とは 
虚血性脳血管障害は、脳の血管が狭窄や閉塞により血流が悪くなって症状を呈する疾患群です 。一方、出血性脳血管障害は、血管が破れて出血して症状を呈する疾患群として区別されています 。CVD-Ⅲ(Classification of Cerebrovascular Diseases Ⅲ)という国際的な分類基準では、脳血管障害を無症候性、局所脳機能障害、血管性認知症、高血圧性脳症の大項目に分類しています 。
参考)脳血管障害 
虚血性脳血管障害は、血管閉塞の原因や病態により複数の病型に細分化されます 。最も一般的に使用されているTOAST分類では、アテローム血栓性、心原性、ラクナ、その他、原因不明の5病型に分類されています 。この分類により、各病型に適した治療戦略を選択することが可能になります 。
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脳梗塞の3つの主要病型として、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症があり、それぞれが約3分の1ずつの割合で発症しています 。しかし、高齢化の進行とともに心原性脳塞栓症の割合が増加傾向にあることが報告されています 。各病型は発症メカニズム、症状の進行パターン、重症度が異なるため、正確な分類が治療方針決定に欠かせません 。
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出血性脳血管障害には、脳出血とくも膜下出血が含まれ、それぞれ異なる病態と治療アプローチが必要です 。脳出血は脳内の血管が破れて出血する病気で、出血部位により被殻出血、視床出血、脳葉出血、小脳出血、橋出血に分類されます 。各部位の出血により特徴的な症状が現れ、予後も大きく異なります 。
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被殻出血は高血圧性脳出血の中で最も頻度が高く、出血と反対側の手足の麻痺と感覚障害が主症状です 。視床出血では感覚障害や手足の麻痺のほか、瞳孔反射異常など眼症状が特徴的です 。くも膜下出血は脳動脈瘤の破裂が原因の80-90%を占め、突然の激しい頭痛で発症することが多く、50-60歳代の女性に2倍多く発症します 。
参考)くも膜下出血(破裂脳動脈瘤) 
一過性脳虚血発作(TIA)は、脳への血液供給が一時的に遮断されるために起こる脳機能障害で、典型的には症状は1時間以内に消失します 。TIAの原因と症状は虚血性脳卒中と同じですが、症状が短時間で回復し恒久的な脳損傷を残さない点で区別されます 。画像診断では脳梗塞の病変が認められないのがTIAの特徴です 。
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TIAは脳梗塞の前兆として極めて重要で、TIA発症後90日以内に脳梗塞を発症する危険性は15-20%と高く、約半数は48時間以内に脳梗塞を発症します 。小さな血栓が一時的に血管を閉塞させると神経症状が出現しますが、何らかの理由で再び流れ出すと症状は回復するという病態です 。この発作は動脈硬化や心疾患の存在を示すため、迅速な専門医受診が必要です 。
参考)https://rehademy.com/column/detail/98
脳血管障害の重症度評価において、NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)が広く使用されています 。NIHSSは急性期脳梗塞患者の神経学的重症度を評価するために開発されたスケールで、検査者間の信頼性が高く、病巣の大きさとの妥当性も確認されています 。評価は11項目から構成され、各項目は0点から2-4点で採点し、合計42点満点で評価します 。
参考)脳卒中理学療法評価:National Institutes …
重症度分類では、軽症が0-5点、中等症が6-14点、重症が15-24点、最重症が25点以上として分類されます 。意識水準、意識障害(見当識・記憶)、注視、視野、顔面神経麻痺、両上下肢運動、運動失調、感覚、発語、消去現象と注意障害の11項目を体系的に評価します 。このスケールにより、脳卒中患者の症状の重症度を定量化し、治療効果や予後を客観的に評価することが可能になります 。
参考)【NIHSS】評価方法と計算の注意点 (脳卒中、脳梗塞、脳出…