くも膜下出血が起こったときの最も特徴的な症状は、「今までに経験したことのない突然の激しい頭痛」です。この頭痛は「バットで殴られたような」「雷が鳴ったような」と表現されるほど強烈で、ある日の何時何分に突然始まったと明確に分かるほど急激に発症します。頭痛は時間とともに改善することなく、むしろ強くなる傾向があります。
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意識障害も比較的多くみられる症状で、頭痛を感じずにいきなり意識を失う例もあります。いびきをかいて寝たようになる場合や、完全に意識不明で救急搬送される場合もあり、意識レベルによって生存率が大きく異なります。
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その他の症状として、嘔吐、項部硬直、目の痛み、けいれん発作などが現れることがあります。項部硬直は発症早期には認められないこともあるため、診断時には注意が必要です。
参考)㈵-3 くも膜下出血はどう診断するか
くも膜下出血には、本格的な発症の前に特徴的な前兆症状が現れることがあります。最も多い前兆は「警告頭痛」と呼ばれる頭痛で、片頭痛のようなズキズキとした痛みが特徴ですが、本格的なくも膜下出血ほど強くない場合もあります。
参考)くも膜下出血の前兆や生存率|表参道総合医療クリニック
警告頭痛以外の主な前兆症状には以下のものがあります:
これらの前兆症状は一時的に治まることがあり、その後にくも膜下出血が発症します。前兆症状が消失したからといって安心せず、速やかに医療機関を受診することが救命につながります。
くも膜下出血は24時間いつでも発症し得る病気ですが、朝方の発症が多い傾向があります。これは、朝起きて活動を開始することで急激に血圧が上がるため(モーニングサージ)と考えられています。発症時間に関する研究では、午前6~10時が最も多く、次いで午後16~20時で、午前0~6時は少ないことが報告されています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikisho/44/4/44_4_97/_pdf
また、排便時や性交時なども発症のタイミングになりやすく、これらは力んで脳の血圧が高まるためと考えられています。季節としては、気温や気圧の変動が激しい季節の変わり目に多い印象があるとされています。
参考)原因・症状は(くも膜下出血)
くも膜下出血の症状は、出血量や出血部位によって大きく異なります。軽症例では自力で病院に辿り着ける状態もあり、この場合の生存率は8割以上と比較的良好です。一方、意識不明で運び込まれる重症例の生存率は2割以下と極めて低くなります。
参考)くも膜下出血の治療と看護
時間経過とともに症状は刻々と変化する可能性があるため、医療従事者は意識レベルや神経学的所見(痙攣・麻痺・眼球運動など)の変化を継続的に観察する必要があります。
くも膜下出血の前兆または初期症状として、動眼神経麻痺による目の症状が現れることがあり、これは医療現場ではあまり知られていない重要なサインです。動眼神経麻痺では、両目でモノを見るとモノが二つに見える複視、片方の瞼が開かなくなる眼瞼下垂などの症状が生じます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12092147/
これらの症状は、大きくなった脳動脈瘤が動眼神経や視神経を圧迫するために起こります。視力低下や視野欠損も視神経への圧迫が原因で生じる可能性があります。特に、非動脈瘤性くも膜下出血においても、孤立性動眼神経麻痺が前駆症状として認識されない場合があるため、医療従事者は注意深く観察する必要があります。
参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1155/crnm/6786272
くも膜下出血発症後には、様々な合併症によって症状が変化する可能性があります。発症後24時間以内に最も多く起こる再出血は、死亡率が極めて高い重篤な合併症です。再出血率は発症後24時間以内が最も高く、2~3週間以内に再出血する可能性は約30%と報告されています。
参考)くも膜下出血の急性期看護
脳血管攣縮は、くも膜下出血を起こしてから3日目から2~3週間の間(ピークは8~10日)に起こる現象で、脳の血管が収縮して血液の流れが悪くなることです。その結果、意識状態が悪化したり、手足の麻痺や言語障害が悪化したりします。神経症状に何らかの悪化を来すような脳血管攣縮の発生頻度は約30%と言われており、重症例ほど起こしやすい傾向があります。
参考)くも膜下出血
正常圧水頭症は数週間から数か月後に起こる合併症で、認知機能の低下、歩行障害、尿失禁などの症状が特徴です。脳脊髄液が血液で汚染された影響で脳脊髄液の吸収がうまくいかなくなり、頭蓋内の脳脊髄液が過剰となることが原因です。
参考)続発性(正常圧)水頭症
医療従事者がくも膜下出血患者を看護する際には、脳組織循環の変調を早期に発見するための綿密な観察が不可欠です。主な観察項目として、意識レベル、バイタルサイン、頭蓋内圧亢進症状の有無、髄膜刺激症状の有無、神経学的所見(痙攣・麻痺・眼球運動など)の変化、頭痛の程度、視力障害の出現などがあります。
参考)くも膜下出血の看護計画|原因・症状・治療などの看護課程と看護…
水分出納バランスの観察も重要で、再出血防止のための血圧コントロールや、中枢性塩類喪失症候群(CSWS)や抗利尿ホルモン分泌症候群(SIADH)の早期発見に役立ちます。これらの電解質異常はくも膜下出血後の30~50%の患者に発症するため、神経学的所見も含めた観察が必要です。
安静保持のための援助として、絶対安静となる期間中は採光・温度・湿度・騒音への対処、面会制限を行い、患者に与える刺激を最小限にすることが重要です。頭蓋内圧亢進を予防するため、ベッドは10度~30度ベッドアップしておくことが望ましいとされています。