同じsGC刺激薬でも、リオシグアトとベルイシグアトは「まったく別の病気に使う薬」と理解しておくことが、処方ミス防止の第一歩です。

sGC刺激薬とは、一酸化窒素(NO)の受容体である可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を直接刺激・増感させてcGMPの産生を高め、血管拡張や心臓リモデリング抑制をもたらす薬剤クラスです。 国内で承認されているsGC刺激薬は現在2種類のみです。
関連)https://www.data-index.co.jp/kusulist/search.php?hl=AB003&ml=CD030100&ll=CD030116
以下に基本情報を一覧で示します。
| 項目 | リオシグアト(アデムパス) | ベルイシグアト(ベリキューボ) |
|---|---|---|
| 製造販売 | バイエル薬品 | |
| 承認年(日本) | 2014年 | 2021年 |
| 主な適応疾患 | 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、肺動脈性肺高血圧症(PAH) | 慢性心不全(HFrEF) |
| 用法 | 1日3回食後経口投与(0.5〜2.5mg) | 1日1回食後経口投与(2.5→5→10mg) |
| 薬価(最大用量) | 3,429.3円/錠(2.5mg) | 398.7円/錠(10mg) |
| PDE5阻害薬との関係 | 併用禁忌 | 併用注意(原則避ける) |
関連)https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=DG03006
どちらもバイエル薬品の製品です。これは覚えておくと良いですね。薬価はリオシグアトの方が大幅に高額で、2.5mg錠1錠あたり3,429円超という設定になっています。
関連)https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=DG03006
sGC刺激薬の作用を理解するには、NO-sGC-cGMP経路を整理することが不可欠です。まず体内で産生されたNOがsGCのヘム鉄に結合すると、sGCが活性化されcGMPが大量合成されます。 cGMPはプロテインキナーゼG(PKG)を介して、血管平滑筋を弛緩させ血管抵抗を低下させるとともに、心筋リモデリングの進行を抑制します。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.15106/j_naika136_432
心不全や肺高血圧症の病態では、このNO産生が著しく障害されています。つまりNOシグナルが枯渇した状態です。
sGC刺激薬はNO非依存的にもsGCを活性化できます。 これが重要なポイントで、NO産生が低下している心不全・肺高血圧の病態でも有効性を発揮できる根拠になっています。シルデナフィルなどPDE5阻害薬はcGMPの分解を抑制する薬剤ですが、sGC刺激薬はcGMP産生そのものを上流から高める点で機序が異なります。つまり上流と下流、どちらに介入するかが違います。
リオシグアトは国内外で初めて承認されたsGC刺激薬で、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)と肺動脈性肺高血圧症(PAH)の2つの肺高血圧症が適応です。 投与開始量は1回0.5mgを1日3回で、2週間ごとに1回1.0mg→1.5mg→2.0mg→2.5mgと段階的に増量します。
関連)https://yaku-tik.com/yakugaku/109-031/
増量判断の基準は血圧です。収縮期血圧95mmHg未満が続く場合は増量を見合わせます。
肺高血圧症治療において、リオシグアトはエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)やプロスタサイクリン(PGI₂)製剤との併用が認められており、特に重症例ではcombination therapyが推奨されています。 一方でPDE5阻害薬(シルデナフィル・タダラフィル)との併用は禁忌であり、これはcGMP経路への重複介入による重篤な低血圧リスクのためです。
関連)https://chigasaki-localtkt.com/kayouseiguaniruosayoukijonokaisetsu/
⚠️ 注意点まとめ
関連)https://chigasaki-localtkt.com/kayouseiguaniruosayoukijonokaisetsu/
喫煙の影響は見落としやすい点です。禁煙指導が薬効に直結する薬剤として意識しておくと、臨床判断の精度が上がります。
ベルイシグアトは慢性心不全(HFrEF)を適応とする、心不全領域初のsGC刺激薬として2021年に承認されました。 VICTORIA試験(国際共同第Ⅲ相試験)では、標準治療に上乗せしたベルイシグアトが心血管死または心不全入院の複合エンドポイントを有意に低下させることが示されています。
関連)https://passmed.co.jp/di/archives/15275
ただし、臨床試験のハザード比は0.90(95%CI: 0.82〜0.98)と、劇的な改善というよりは着実な上乗せ効果という印象です。 全体集団ではこの結果が得られた一方、日本人集団においてはプラセボ群と比較して心血管死のハザード比が2.01(0.98〜4.12)とむしろ多い傾向がみられ、審議会でも議論になった点です。 日本人データには注意が必要です。
関連)https://plaza.umin.ac.jp/~juku-PT/D/D061.pdf
用量設定は2.5mgから開始し、2週間ごとに5mg→10mgと増量します。 低血圧症状が出現した場合や収縮期血圧90mmHg未満が続く場合は減量または投与中断を検討します。 以下の点を頭に入れておくと処方確認がスムーズです。
関連)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=69677
関連)https://www.carenet.com/drugs/category/cardiovascular-agents/2190042F2028
関連)https://www.carenet.com/drugs/category/cardiovascular-agents/2190042F2028
関連)https://chigasaki-localtkt.com/kayouseiguaniruosayoukijonokaisetsu/
特に「リオシグアト投与中は禁忌」という点を確認せずに処方が重なると、重篤な症候性低血圧が起きるリスクがあります。 これが最も見落とされやすい禁忌です。
関連)https://kunota506.com/?p=33455
現状2剤のみの可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬一覧ですが、薬剤クラスとしての将来性は注目されています。かつて開発候補だったシナシグアト(BAY 58-2667)は急性非代償性心不全の試験で重篤な治療誘発性低血圧が多発し、有効性の実証に失敗しました。 この結果は「低血圧リスク」というsGC刺激薬クラスの共通課題を浮き彫りにしたとも言えます。
一方、HFpEF(左室駆出率が保たれた心不全)に対するベルイシグアトのフェーズ2試験が進められてきた経緯もあります。 HFpEFは確立した薬物療法が少ない領域であり、sGC刺激薬の応用拡大が期待される分野のひとつです。
NO-sGC-cGMP経路は心臓・肺・腎臓の多臓器に関わる重要な生理経路であり、今後は腎疾患や他の心血管疾患への応用も研究が進んでいます。sGC刺激薬の一覧が今後増えていく可能性に備え、クラスとしての特性(低血圧リスク・PDE5阻害薬との相互作用・妊婦禁忌)を体系的に理解しておくことが医療従事者にとって重要です。独立した創薬ターゲットとして今後さらに注目されるクラスです。
参考リンク:sGC刺激薬ベルイシグアトの作用機序・臨床試験データについて詳しい解説(日本内科学会雑誌)
参考リンク:ベリキューボ(ベルイシグアト)の添付文書全文・禁忌・相互作用の確認
ベリキューボ錠 添付文書(JAPIC)
参考リンク:リオシグアト(アデムパス)の薬価・適応・分類の一覧確認
KEGG MEDICUS:グアニル酸シクラーゼ活性化薬 商品一覧
ブラックキャップ [12個入] ゴキブリ駆除剤 固形物 食いつき2.5倍! 置いたその日から効く 防除用医薬部外品 【Amazon.co.jp限定】