治療しなければ、あなたの患者の余命は診断から3年以内に尽きる可能性が高いです。
CTEPHの予後は、肺動脈圧の数値によって劇的に変わります。これは重要です。
平均肺動脈圧(PAP)が50mmHg以上の患者では、5年生存率がわずか10%と非常に厳しい数字です。 一方、41〜50mmHgでは35%、30〜40mmHgでは50%と、圧が下がるにつれて生存率が向上します。PAP30mmHg以下に到達できた症例では、5年生存率が90%以上という良好な結果が得られています。 medicalnote(https://medicalnote.jp/diseases/%E8%82%BA%E9%AB%98%E8%A1%80%E5%9C%A7%E7%97%87/contents/170111-002-KZ)
つまり、PAP30mmHg以下への到達が予後改善の大きな目標です。
この差は「ほぼ別の疾患」と言えるほど大きく、診断時の重症度が余命予測の最重要因子になります。医療従事者として患者への説明にこの数字を活用することで、治療へのモチベーション向上にもつながります。意外ですね。
国立循環器病研究センターのデータでは、1980〜1999年(初期)には65%もの患者が適切な治療を受けられていませんでしたが、2010〜2023年(後期)ではわずか3%にまで減少しました。 これにより死亡リスクは初期と比べて87%も低下しています。 ncvc.go(https://www.ncvc.go.jp/pr/release/pr_48223/)
以下は、肺動脈圧と5年生存率の関係をまとめた表です。
| 平均肺動脈圧(PAP) | 5年生存率 |
|---|---|
| 50mmHg以上 | 約10% |
| 41〜50mmHg | 約35% |
| 30〜40mmHg | 約50% |
| 30mmHg未満 | 90%以上 |
慢性血栓塞栓性肺高血圧症の予後評価には、この圧データが原則です。
参考:MedicalNoteによるCTEPH症状・検査・治療・予後の解説ページ(肺動脈圧と5年生存率の関係を詳述)
https://medicalnote.jp/diseases/肺高血圧症/contents/170111-002-KZ
肺動脈血栓内膜摘除術(PEA)は、CTEPHにおける第一選択治療です。 中枢部の血栓に対して外科的に血栓を摘除することで、肺高血圧そのものの根治が期待できる唯一の手段です。 ncvc.go(https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/cvm/pulmonary/cteph/)
PEAを施行した場合、5年生存率は82〜95%、10年生存率は75〜93%と報告されています。 これは薬物療法単独の5年生存率87%と大きく変わらない数字に見えますが、PEAでは根治が期待できる点が本質的に異なります。これは使えそうです。 ubie(https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/4z22ghcv0g0y)
ただし、PEAには適応条件があります。以下の3点が主な適応基準として考えられています。
末梢型の病変や高リスク患者では、バルーン肺動脈形成術(BPA)や薬物療法が選択されます。 irdph(http://irdph.jp/cteph/index.php)
手術適応の判断には、右心カテーテル検査や肺動脈造影(PAG)が必須です。これらの検査で「取れる血栓か、取れない血栓か」を見極めることが、余命改善への第一歩になります。
参考:国立循環器病研究センター病院によるCTEPH治療(PEA・BPA・薬物療法)の詳細解説
https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/cvm/pulmonary/cteph/
BPAは、PEAが適応できない末梢型CTEPHに対する切り札的存在です。カテーテルを肺動脈に挿入し、バルーンで狭窄・閉塞部位を拡張する低侵襲治療です。 ncvc.go(https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/pph/)
BPA施行例における1〜2年生存率は97%以上と非常に高い数値が報告されています。 ただし、5年・10年といった長期生存率のエビデンスはまだ蓄積途上にあり、長期予後の評価は今後の課題です。 ubie(https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/4z22ghcv0g0y)
これは重要な注意点です。
BPAは1回の治療で終わらないことも特徴です。複数回(一般的に5〜10セッション)のカテーテル手技を繰り返しながら徐々に肺血管抵抗を下げていくアプローチで、患者への事前説明が不可欠です。
日本はBPA治療の先進国として世界的に認知されており、国内施設が確立したプロトコルが海外にも広まっています。意外ですね。
参考:国立循環器病研究センターによるPEAとBPAの位置付けと治療成績の紹介
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/pph/
薬物療法単独の場合でも、5年生存率は87%程度と報告されています。 ただし、肺動脈圧や血管抵抗が高い症例では予後が悪化するため、薬物療法は「根治治療の補助」あるいは「適応外患者の維持治療」として位置づけられます。 ubie(https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/4z22ghcv0g0y)
CTEPHに唯一承認されている経口薬が、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬のリオシグアト(アデムパス®)です。PEA術後の残存肺高血圧症や、手術・BPA不適応例に使用されます。
結論は薬単独では根治できないということです。
以下に薬物療法の主な位置づけをまとめます。
重要なのは、「薬を出したから大丈夫」という思い込みです。薬物療法はあくまでも補助的手段であり、手術・BPAの適応評価を怠ると患者の余命を縮める可能性があります。医療従事者として、専門施設への紹介タイミングを逃さないことが求められます。
参考:難病情報センターによるCTEPH(指定難病88)の治療方針・薬物療法の公式解説
https://www.nanbyou.or.jp/entry/192
CTEPHで最も見落とされがちな問題が「診断遅延」です。これは独自視点で重要な論点です。
症状は労作時の息切れや易疲労感から始まり、COPDや心不全、うつ病などと誤診されることが少なくありません。CTEPHの診断確定までに平均14ヶ月かかるという報告もあり、その間に肺高血圧が進行・固定化してしまうリスクがあります。
14ヶ月は長いです。
診断遅延が起きやすいケースとして、以下のパターンが挙げられます。
急性肺塞栓症(APE)後の患者のうち、約3〜4%がCTEPHに移行するとされており、APE経験患者への定期的なフォローアップが診断早期化の鍵を握ります。 APE既往患者を診ている医療従事者は、3〜6ヶ月後の心エコーフォローを標準化することが推奨されます。 irdph(http://irdph.jp/cteph/index.php)
肺動脈圧が上がり切る前に診断できるかどうか。それが、患者の余命に直接影響します。早期診断のためのアルゴリズムとして、日本肺高血圧・肺循環学会のガイドラインに示されたフローチャートを参照することを強くお勧めします。
参考:日本肺高血圧・肺循環学会 CTEPH診療ガイドライン2018年版(診断・治療のアルゴリズム掲載)
http://jpcphs.org/publiccomment/cteph_guideline2018.pdf
参考:国立循環器病研究センターによるCTEPH治療進歩と長期生存率改善に関する最新研究発表(European Respiratory Journal掲載)
https://www.ncvc.go.jp/pr/release/pr_48223/