関節リウマチの診断では、2010年に発表されたACR/EULAR分類基準が現在最も重要な指標として使用されています 。この基準を適用する前提条件として、以下の2つが必須となります 。
参考)関節リウマチの診断
適用対象の必須条件。
この基準は従来の1987年ACR基準と異なり、関節破壊が起こる前の早期診断を可能にする目的で開発されました 。従来基準では6週間以上の症状持続が必要でしたが、新基準では早期治療開始を重視した設計となっています 。
参考)診断基準一覧
診断には4つの項目(罹患関節数、血清学的検査、急性期反応物質、症状持続期間)の合計点数で判定し、6点以上で関節リウマチと分類されます 。ただし、この基準を満たさない関節リウマチ患者も約10~20%存在するため、臨床所見や画像検査を総合的に判断することが重要です 。
参考)関節リウマチの診断 - 医療法人社団 髙志館 レイクタウン整…
2010年ACR/EULAR分類基準では、4つのカテゴリーそれぞれにスコアが設定され、合計6点以上で関節リウマチと診断されます 。
A: 罹患関節数による配点。
大関節は肩、肘、股、膝、足関節を指し、小関節は手関節、2-5指PIP・MCP関節、母指IP関節、2-5趾MTP関節を含みます 。評価対象から除外される関節は、2-5指DIP関節、母指CM関節、母趾MTP関節です 。
B: 血清学的検査(自己抗体)。
正常上限値の3倍以上を高値陽性として採点します 。
C: 急性期反応物質。
D: 症状の持続期間。
この配点システムにより、早期段階でも自己抗体陽性や多関節炎があれば高得点となり、早期診断が可能になります 。
関節リウマチの診断において、自己抗体検査は極めて重要な位置を占めています。特に抗CCP抗体は早期診断の切り札として注目されており、従来のリウマチ因子(RF)より高い特異性を示します 。
参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/44.html
抗CCP抗体の特徴。
抗CCP抗体は関節リウマチの滑膜に存在するCCPという抗原を排除しようと形成される自己抗体で、血液検査で検出可能です 。この検査は2007年4月に保険収載され、「RAが強く疑われるが確定できない場合」に算定できます 。
参考)抗CCP抗体陽性と早期リウマチ治療-シーズンズ東京リウマチク…
リウマチ因子(RF)との比較。
抗CCP抗体陽性患者では、変形の進行を防ぐために早期治療開始が必要とされており、MTXや生物学的製剤の投与タイミングの決定にも重要な指標となります 。症状があり抗CCP抗体陽性の場合、先手を打った治療が不可欠です 。
関節リウマチの正確な診断には、類似症状を呈する他疾患の除外が極めて重要です。日本リウマチ学会では鑑別疾患を難易度別に分類し、体系的な除外診断を推奨しています 。
参考)関節リウマチの診断と分類基準 - 国府台病院リウマチ膠原病科
鑑別難易度の高い疾患群。
鑑別難易度が中程度の疾患群。
結晶誘発性関節炎は急性単関節炎を呈することが多く、関節リウマチの慢性多発関節炎とは臨床像が異なります 。痛風は閉経前女性にはほとんど見られず、偽痛風は高齢者の膝関節に好発する特徴があります 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/99/10/99_2478/_pdf
鑑別診断のポイント。
感染性関節炎については、急性単関節炎として発症することが多く、関節液検査による細菌の検出が診断の決め手となります 。鑑別診断の質を高めるため、問診票や画像検査を組み合わせた総合的な評価が必要です 。
参考)https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14238
2010年ACR/EULAR分類基準は早期診断を目的として開発されましたが、実際の臨床応用においては注意すべき点があります。この基準は「分類基準」であり「診断基準」ではないため、基準を満たすことは「暫定的に関節リウマチとみなしてよい」ことを意味します 。
分類基準の特性と限界。
早期関節リウマチ診断基準(ERA基準)も提案されており、血液検査とMRIでの検査結果が重要な意味を持ちます 。しかし、この基準はリウマチ専門施設のみで診断可能であり、専門医が慎重に用いるべき基準とされています 。
参考)リウマチの診断、早期診断
実臨床での課題。
臨床医は分類基準のスコアに頼りすぎず、臨床所見、血液検査、X線検査に加え、MRIや超音波などの画像検査を組み合わせて総合的に判断することが重要です 。特に関節エコー検査は滑膜炎の可視化に有用で、診断精度の向上に寄与します 。
参考)関節リウマチ(rheumatoid arthritis: R…
診断の質を高めるためには、継続的な医師教育と専門医との連携が不可欠であり、疑わしい症例では積極的に専門医への紹介を検討する必要があります 。