慢性腎臓病(CKD)の重症度分類は、推算糸球体濾過率(eGFR)値によるGFRステージと尿中アルブミン/クレアチニン比によるアルブミン尿ステージの組み合わせで評価されます 。この分類システムにより、腎機能の現状把握と将来のリスク予測が可能となります 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11116248/
日本腎臓学会のエビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018では、GFRとアルブミン尿によるCGA分類(原因疾患・GFR区分・アルブミン尿区分)が標準的な評価方法として採用されています 。
参考)https://cdn.jsn.or.jp/data/CKD2018.pdf
eGFR(推算糸球体濾過率)は血清クレアチニン値、年齢、性別から算出される腎機能の指標で、mL/分/1.73㎡の単位で表現されます 。健康な成人では約100mL/分/1.73㎡前後の値を示しますが、加齢とともに年間約1mL/分/1.73㎡ずつ低下するのが正常な経過です 。
参考)https://j-ka.or.jp/ckd/about.php
GFRによる6段階の分類:
アルブミン尿は糸球体基底膜の障害を反映する早期の腎障害マーカーで、尿中アルブミン/クレアチニン比(mg/gCr)で評価します 。アルブミン尿の程度は将来の腎機能低下速度や心血管疾患リスクと強く相関することが知られています 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5486452/
アルブミン尿による3段階の分類:
参考)診断基準について
このアルブミン尿分類は糖尿病性腎症の病期分類とも密接に関連しており、特にA2以上では積極的な治療介入が必要とされます 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11621156/
各GFRステージでは特徴的な臨床症状や合併症のパターンが異なるため、ステージに応じた適切な管理が重要です 。特にG3a以降では自覚症状がなくても慎重な経過観察と治療介入が必要になります。
参考)CKD保存療法(自己管理のための10ポイント)
主要な症状出現パターン:
参考)https://www.kyowakirin.co.jp/ckd/check/check.html
興味深いことに、日本人のCKD患者では欧米人と比較して心血管疾患の発症率が相対的に低い傾向が報告されており、これは遺伝的要因や食生活の違いが影響している可能性が指摘されています 。
腎機能低下に伴い、腎排泄型薬剤の投与量調整が必要となります 。特にG3a以降では薬物動態が大きく変化するため、薬剤師による処方監査と医師による慎重な投与設計が重要です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11970011/
主要な調整対象薬剤:
臨床決定支援システム(CDSS)の導入により、腎機能障害患者における薬剤関連有害事象の発生率が有意に減少することが最近の研究で示されています 。
CKDのステージ分類は単なる現状評価にとどまらず、将来の腎機能低下速度や心血管疾患発症リスクの予測において重要な意義を持ちます 。特に日本人を対象とした大規模コホート研究であるCKD-JAC研究やJ-CKD-DBの解析結果により、日本人特有のリスク因子が明らかになっています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11341658/
日本人CKD患者における腎機能低下の独立危険因子として、高血圧・糖尿病・高尿酸血症・喫煙・高度蛋白尿が特に重要であることが判明しています 。また、eGFR slope(年間腎機能低下速度)が0.5-1.0 mL/min/1.73m²/年以上の場合、長期予後不良のサロゲートエンドポイントとして有用であることが示されています 。
多職種連携による包括的CKD管理により、腎機能低下進行の抑制効果が期待できることも大規模研究で実証されており、特にG3-G5の進行したCKD患者において有効性が高いことが報告されています 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10192167/