高尿酸血症の症状と治療薬の特徴と選び方

高尿酸血症は痛風や腎障害のリスク因子となる病態です。本記事では高尿酸血症の症状と治療薬の種類や特徴について詳しく解説します。あなたはご自身の尿酸値を知っていますか?

高尿酸血症の症状と治療薬

高尿酸血症の基本情報
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定義

血清尿酸値が7.0mg/dL以上の状態

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主なリスク

痛風発作、腎障害、尿路結石など

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治療法

生活習慣改善と薬物療法の組み合わせ

高尿酸血症の定義と無症候性高尿酸血症の危険性

尿酸血症は、性別・年齢を問わず血清尿酸値が7.0mg/dLを超える状態と定義されています。尿酸は体内のプリン体が代謝されて生成される物質で、通常は腎臓から約2/3、腸管から約1/3が排泄されています。この尿酸の産生と排泄のバランスが崩れると、血中の尿酸値が上昇し、高尿酸血症となります。

 

注目すべき点は、高尿酸血症の多くは「無症候性高尿酸血症期」と呼ばれる自覚症状のない状態で進行することです。自覚症状がないため見過ごされがちですが、この時期から尿酸値のコントロールを始めることが重要です。なぜなら、放置すると痛風発作や腎障害などの深刻な合併症を引き起こす可能性があるからです。

 

近年の研究では、高尿酸血症は単に痛風の原因となるだけでなく、高血圧や糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、心血管疾患などの危険因子となる可能性が指摘されています。特に若年者、肥満者、女性では高尿酸血症があると高血圧を発症しやすいとされています。

 

高尿酸血症が引き起こす痛風発作と腎障害の症状

高尿酸血症が長期間続くと、体内に蓄積された尿酸が結晶化し、関節内に沈着することで痛風発作を引き起こします。痛風発作の特徴は、足の親指の付け根(第一中足趾関節)に多く発症する激しい痛みで、関節が赤く腫れ上がります。

 

初期の痛風発作は数日から2週間程度で収まることが多いですが、発作を繰り返すごとに痛みの持続期間が長くなる傾向があります。痛風発作の症状が進行すると、足だけでなく、膝、腰、肩、肘、手などの関節にも痛みが現れるようになります。

 

また、高尿酸血症は腎臓にも影響を及ぼします。尿酸塩結晶が腎臓内に沈着することによる腎障害だけでなく、尿酸自体が酸化促進作用や内皮機能障害などを引き起こし、腎機能を低下させることが明らかになっています。さらに、高尿酸血症は尿路結石のリスクも高めます。特に尿量低下(水分摂取不足)、持続する酸性尿(尿pH6.0未満)、尿中尿酸排泄量の増加が危険因子となります。

 

高尿酸血症の治療薬の種類と作用機序の違い

高尿酸血症の治療薬は、主に作用機序によって2つのカテゴリーに分類されます。

 

1. 尿酸合成阻害薬(尿酸生成抑制薬)
これらの薬は尿酸の合成自体を抑制し、血中の尿酸値を下げます。主にキサンチンオキシダーゼという酵素の働きを抑えることで、プリン体から尿酸への変換を阻害します。

 

  • ザイロリック(アロプリノール:長年使用されてきた薬剤で、1日2回服用します。腎臓の機能が低下した患者では減量が必要です。
  • フェブリク(フェブキソスタット:1日1回服用で済むという利点があります。肝代謝のため腎機能低下患者でも用量調節が不要です。
  • トピロリック(トピロキソスタット:1日2回服用。こちらも肝代謝のため腎機能低下患者に適しています。

これらの尿酸合成阻害薬は主に腎負荷型の高尿酸血症や、既に尿路結石がある患者、腎障害を合併している患者に使用されます。

 

2. 尿酸排泄促進薬
これらの薬剤は腎臓での尿酸の再吸収を阻害し、尿中への尿酸排泄を促進します。

 

  • ベンズブロマロン:強力な尿酸排泄作用を持ちます。
  • プロベネシド:米国で入手可能な唯一の尿酸排泄促進薬です。
  • ユリス(ドチヌラド):選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)として開発された新しい薬剤です。

尿酸排泄促進薬は主に尿酸排泄低下型の高尿酸血症に対して使用されますが、尿路結石のリスクが高まるため、服薬中は水分をしっかり摂ることが重要です。また、予防のために尿アルカリ化薬が併用されることもあります。

 

3. 尿酸分解酵素薬

  • ラスブリカーゼ:主に腫瘍崩壊症候群(TLS)による高尿酸血症に使用されます。

高尿酸血症の治療薬の選び方と副作用への対策

高尿酸血症の治療薬を選ぶ際は、病型分類、合併症の有無、副作用リスクなどを考慮する必要があります。

 

病型による選択
高尿酸血症の病型に応じた治療薬の選択が重要です。

  • 尿酸産生過剰型:尿酸合成阻害薬が第一選択
  • 尿酸排泄低下型:尿酸排泄促進薬が第一選択
  • 混合型:両方の薬剤の併用や、状況に応じた選択が必要
  • 腎外排泄低下型:新しく認識された病型で、個別の対応が必要

尿酸値による開始タイミング
一般的には以下の基準で薬物療法の開始が検討されます。

  • 尿酸値が8.0mg/dL未満で痛風発作がない場合:生活習慣改善で経過観察
  • 尿酸値が8.0mg/dL台:合併症や体質を考慮して薬物療法を検討
  • 尿酸値が9.0mg/dL以上:多くの場合で薬物療法が必要

副作用と対策
各薬剤には特有の副作用があり、注意が必要です。

  • アロプリノール:重度の過敏反応が稀に発生するリスクがあります。腎機能低下患者では開始量を減らすことが推奨されています。
  • 尿酸排泄促進薬:尿路結石のリスクが高まるため、水分摂取の増加と尿アルカリ化薬の併用が必要です。
  • フェブキソスタット:心血管系疾患のリスクについて議論がありますが、最新のガイドラインでは一定の条件下での使用が認められています。

痛風発作時の治療としては、鎮痛薬(NSAIDsコルヒチン、グルココルチコイドなど)が使用されます。発作時に尿酸降下薬を開始すると発作が悪化する可能性があるため、通常は発作が治まってから開始します。

 

高尿酸血症とメタボリックシンドロームの関連性と統合的管理

高尿酸血症は、一見独立した病態のように見えますが、メタボリックシンドロームと深い関連性があることが研究で明らかになっています。メタボリックシンドロームの診断基準に高尿酸血症は含まれていないものの、血清尿酸値が高いほどメタボリックシンドロームを有する頻度は高く、逆にメタボリックシンドロームの因子数が多いほど血清尿酸値も高くなる傾向があります。

 

特に注目すべき点は、高尿酸血症と内臓肥満、高血圧、高中性脂肪血症、インスリン抵抗性の間に相互関係があることです。これらの病態は互いに影響を及ぼし合い、悪循環を形成していることが考えられます。

 

最新の研究によれば、高尿酸血症の治療は単に尿酸値を下げるだけでなく、メタボリックシンドロームの各要素に対する包括的なアプローチが重要であることが示唆されています。例えば、新薬ドチヌラド(ユリス)を用いた尿酸低下治療が、慢性腎臓病(CKD)と高尿酸血症を持つ患者の腎機能を改善する可能性が報告されています。

 

高尿酸血症の治療において、薬物療法だけでなく生活習慣の改善も極めて重要です。具体的には以下のような対策が推奨されます。

  • 動物性タンパク質やビールなどのアルコール摂取を控える
  • 野菜や果物などの植物性タンパク質や乳製品を積極的に摂取する
  • 十分な水分摂取を心がける
  • 適度な運動を行い、過度な運動を避ける
  • 規則正しい睡眠とストレス管理

このような統合的なアプローチによって、高尿酸血症とメタボリックシンドロームの両方を効果的に管理することが可能になり、将来的には薬の減量や中止につながる可能性もあります。

 

高尿酸血症の新しい病型分類と最新治療ガイドライン

高尿酸血症の病型分類は近年見直され、従来の「尿酸産生過剰型」「尿酸排泄低下型」「混合型」の3分類に加え、「腎外排泄低下型」が新たに認識されるようになりました。この変更は、尿酸の排泄経路についての理解が深まったことに基づいています。

 

腎外排泄低下型とは、腸管からの尿酸排泄が減少することで、代償的に腎臓からの尿酸排泄が増加する病型です。従来はこれが「尿酸産生過剰型」と誤って分類されていましたが、実際には産生過剰ではなく排泄パターンの変化であることが明らかになりました。

 

さらに、従来の「尿酸産生過剰型」に分類されていた症例の中には、腎外(腸管)からの尿酸排泄が減少する結果、見かけ上、腎臓からの尿酸排泄が増加する「腎負荷型高尿酸血症」が含まれていることも分かってきました。

 

2022年に改訂された高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版追補版では、これらの新知見を踏まえた治療戦略が示されています。主な推奨事項

  • 急性痛風関節炎(痛風発作)には、NSAIDs・グルココルチコイド・コルヒチン(低用量)が条件付きで推奨されています。
  • 高尿酸血症合併高血圧患者や心不全患者への予後改善を目的とした尿酸降下薬の投与に関しては、エビデンス不足が指摘されており、今後の研究が待たれています。
  • 尿酸降下薬の選択に際しては、病型分類だけでなく、各薬剤の特性、患者の腎機能、合併症などを総合的に判断することが重要とされています。

最新のガイドラインでは、高尿酸血症に対する薬物療法だけでなく、生活習慣の改善も含めた包括的なアプローチが強調されています。特に食事療法、適度な運動、体重管理、飲酒制限などが重要な治療の柱とされています。

 

高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版[2022年追補版]- より詳細な治療推奨が記載されています