全身性自己免疫疾患は、体内のさまざまな臓器や組織に影響を及ぼす疾患群で、膠原病とも呼ばれています。これらの疾患では、免疫系が全身のあらゆる組織に存在する抗原に反応することで、複数の臓器に同時に炎症が発生します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3864070/
代表的な疾患には以下があります。
📝 関節リウマチ:関節の滑膜組織を攻撃し、関節痛・腫れ・朝のこわばりを引き起こします。
参考)自己免疫疾患 - 15. 免疫の病気 - MSDマニュアル家…
📝 全身性エリテマトーデス(SLE):皮膚・腎臓・心臓などに蝶形紅斑や腎機能障害をもたらします。
参考)自己免疫疾患とは?原因・症状・代表的な病気をわかりやすく解説…
📝 全身性強皮症:皮膚の硬化・血管症状・内臓障害が特徴的です。
📝 血管炎症候群:多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎などが含まれます。
参考)疾患と検査
臓器特異的自己免疫疾患は、特定の臓器内の特定の細胞のみを攻撃対象とする疾患群です。これらの疾患では、それぞれの臓器固有の抗原に対して自己免疫反応が起こります。
参考)免疫が暴走するとき 〜膠原病とは?膠原病の発症を防ぐには?〜…
内分泌系の臓器特異的疾患。
🎯 1型糖尿病:膵臓のβ細胞を攻撃し、インスリン分泌不全を起こします。
🎯 バセドウ病:甲状腺を過剰に刺激し、甲状腺機能亢進症を引き起こします。
参考)https://medicalnote.jp/diseases/%E8%87%AA%E5%B7%B1%E5%85%8D%E7%96%AB%E7%96%BE%E6%82%A3
🎯 橋本病(慢性甲状腺炎):甲状腺組織を破壊し、甲状腺機能低下症をもたらします。
消化器系では、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患が代表的で、腹痛・下痢・血便などの症状が現れます。肝臓では自己免疫性肝炎が起こり、AST・ALTの上昇と高ガンマグロブリン血症が特徴的です。
参考)自己免疫性肝疾患について href="https://www.m.ehime-u.ac.jp/hospital/liver/?page_id=143" target="_blank">https://www.m.ehime-u.ac.jp/hospital/liver/?page_id=143amp;laquo; 肝疾患診療相談セン…
自己免疫疾患の診断は、血液検査による自己抗体の検出が中心となります。多くの自己免疫疾患では、自分の体の成分と反応する自己抗体が産生されるため、これらの検出により診断が可能です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9114879/
主要な検査項目。
🔬 自己抗体検査:抗核抗体(ANA)、リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体など疾患特異的な抗体を測定します。
参考)膠原病とは href="https://www.rheum.kuhp.kyoto-u.ac.jp/kougennbyou" target="_blank">https://www.rheum.kuhp.kyoto-u.ac.jp/kougennbyouamp;#8211; 京大病院免疫・膠原病内科
🔬 炎症マーカー:CRP、ESRなどの炎症反応の程度を評価します。
🔬 組織生検:肝生検や腎生検により、組織への炎症細胞浸潤を確認します。
画像検査では、X線・CT・MRI・超音波などにより、関節や臓器の異常を詳細に評価します。最近では、湿式タンパク質アレイを用いた包括的な自己抗体スクリーニングも開発され、565種類の自己抗体を同時に検出できるようになっています。
自己免疫疾患の治療は、従来の免疫抑制療法から、根本的な免疫系の正常化を目指す免疫寛解療法への転換が進んでいます。
参考)自己免疫疾患に対する新規治療法を発見
従来の治療法。
💊 ステロイド療法:強力な抗炎症作用により急性期の症状を抑制します。
参考)自己免疫性疾患
💊 免疫抑制薬:メトトレキサート、アザチオプリンなどにより免疫反応を抑制します。
💊 生物学的製剤:TNF-α阻害薬、IL-6阻害薬などサイトカインを標的とした治療です。
新しい治療アプローチでは、PD-1などの免疫チェックポイント分子を活性化することで、過剰な免疫反応を抑制する方法が注目されています。また、制御性T細胞(Treg)の増加やTh17細胞の減少を誘導する免疫寛解療法により、関節リウマチや多発性硬化症の疾患モデルでの治療成功が報告されています。
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自己免疫疾患の発症には遺伝的要因と環境要因が複雑に関与するため、完全な予防は困難ですが、生活習慣の改善により発症リスクを軽減し、症状の悪化を防ぐことが可能です。
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栄養管理による予防策。
🥗 抗炎症食品の積極摂取:オメガ3脂肪酸を含む青魚、抗酸化物質豊富な野菜・果物、発酵食品により腸内環境を改善します。
参考)自己免疫疾患と寿命の関係性
🥗 避けるべき食品:加工食品、高脂肪食品、精製糖質は体内炎症を悪化させるため控えめにします。
🥗 必須栄養素の確保:セレン・鉄・亜鉛・マグネシウムなどのミネラルは免疫バランスの維持に重要です。
生活習慣の最適化では、適度な運動により血流促進と筋力維持を図り、十分な睡眠とストレス管理により免疫系の安定化を促進します。特に禁煙は血管や免疫系への悪影響を防ぐため必須で、定期的な専門医の受診により早期発見・早期治療を実現することが重要です。