免疫反応の種類と分類

人体を守る免疫反応には、自然免疫と獲得免疫、細胞性免疫と液性免疫など複数の種類と分類があります。それぞれの特徴や働き、サイトカインやケモカインの役割について詳しく知る必要がありますが、具体的にはどのような仕組みで機能しているのでしょうか?

免疫反応の種類

免疫反応の主な分類と特徴
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自然免疫と獲得免疫

生来備わる自然免疫と、学習する獲得免疫の二段階防御システム

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細胞性免疫と液性免疫

T細胞主体の細胞性免疫とB細胞・抗体による液性免疫

アレルギー反応

I〜IV型に分類される過剰な免疫応答メカニズム

免疫反応の自然免疫と獲得免疫の分類

免疫反応は大きく「自然免疫」と「獲得免疫」の2つに分類されます 。自然免疫は生まれつき体に備わっている仕組みで、ウイルスや細菌などの異物が体内に入ってくると素早く反応します 。好中球マクロファージ・NK細胞などの免疫細胞が活動し、幅広い病原体に対して迅速に対応する特徴があります 。
参考)免疫

 

一方、獲得免疫は自然免疫だけでは病原体を排除できない場合に機能します 。感染した病原体を特異的に見分け、それを記憶することで同じ病原体に再度出会った時に効果的に病原体を排除できる仕組みです 。獲得免疫には「多様性」「特異性」「記憶」という3つの重要な特徴があり、これらは自然免疫にはない特徴です 。
参考)「自然免疫」と「獲得免疫」の違いは?

 

自然免疫は反応が速いものの特異性が低く、獲得免疫は反応が遅いものの特異性が高いという相補的な関係にあります 。この2つの免疫システムは独立して働くのではなく、互いに作用しあい病原体の発見・排除を行います 。
参考)PIDの8つの分類

 

免疫反応における細胞性免疫と液性免疫の種類

獲得免疫は、さらに「細胞性免疫」と「液性免疫」に分けられます 。細胞性免疫は局所的に起こる免疫反応で、細胞傷害性T細胞(CTL)やマクロファージが直接細胞を攻撃する仕組みです 。ヘルパーT細胞の1種である「Th1細胞」が樹状細胞が提示する抗原を認識し、サイトカインを産生することで開始されます 。
参考)細胞性免疫と液性免疫

 

液性免疫はB細胞と抗体が中心となる免疫反応です 。ヘルパーT細胞「Th2細胞」の産生するサイトカインにより、B細胞が形質細胞へと分化し大量の抗体を産生します 。この抗体は体液中を循環して全身に広がり、病原体を中和・除去する役割を担います 。
両者の違いは明確で、細胞性免疫は細胞自体が病原体や感染細胞を直接攻撃するのに対し、液性免疫は血中の抗体によって病原体を無力化します 。体液性免疫は抗体による防御、細胞性免疫は細胞による防御と覚えることができます 。
参考)体液性免疫と細胞性免疫の違いとは?簡単に解説!

 

免疫反応におけるサイトカインとケモカインの種類

免疫反応において重要な役割を果たすのがサイトカインとケモカインです 。サイトカインは細胞から分泌される小さなタンパク質で、免疫反応や炎症反応を調整する重要な役割を果たします 。主なカテゴリーには、ケモカイン、造血性コロニー刺激因子、インターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)、形質転換増殖因子(TGF)、腫瘍壊死因子(TNF)があります 。
参考)炎症誘発性サイトカインの概要

 

ケモカインはサイトカインの特殊なグループで、主に免疫細胞の移動を制御する機能を持ちます 。構造面では小さな分子量を持ち、機能面では細胞の遊走や組織への浸潤を誘導します 。一方、その他のサイトカインは細胞の活性化、増殖、分化など、より広範な作用を持ちます 。
参考)サイトカインとは?サイトカインの種類や働きを徹底解説!

 

サイトカインには炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインがあり、これらのバランスが免疫反応の適切な制御に重要です 。TNF-αやインターロイキン(IL-1、IL-6)といった炎症性サイトカインは免疫応答を活性化し、一方で抗炎症性サイトカインは過剰な反応を抑制します 。
参考)https://www.wdb.com/kenq/dictionary/cytokine

 

免疫反応のアレルギー分類とメカニズムの種類

アレルギー反応は免疫の過剰反応によって起こり、I型からIV型までの4つの種類に分類されます 。I型アレルギー(即時型)はIgE抗体が原因で、アレルゲン侵入後数時間以内に反応が起こります 。花粉症アトピー性皮膚炎食物アレルギーアナフィラキシーショックなどが代表例です 。
参考)301 Moved Permanently

 

II型アレルギー(細胞障害型)は、自己の細胞や組織にIgGまたはIgM抗体が反応し、補体が結合することで細胞障害を起こします 。III型アレルギー(免疫複合体型、アルサス型)は、可溶性抗原とIgGまたはIgM抗体との結合物である免疫複合体によって組織障害が生じます 。
参考)アレルギーは免疫の過剰反応によって起こる!その種類やメカニズ…

 

IV型アレルギー(遅延型、細胞性免疫)は、感作T細胞と抗原の反応により、感作T細胞からサイトカインが放出されて細胞障害を起こします 。皮膚反応では抗原注射後24~72時間で紅斑・硬結を特徴とする炎症反応を示し、ツベルクリン反応が代表例です 。各型は異なるメカニズムと時間経過で発症するため、適切な診断と治療法の選択が重要になります。

免疫反応における細胞内分解システムと免疫チェックポイント

免疫反応には細胞内の品質管理システムとして、オートファジーという重要なメカニズムがあります 。オートファジーは細胞質成分をリソソームに輸送し分解する現象で、マクロオートファジー、シャペロン介在性オートファジー、マイクロオートファジーの3タイプが存在します 。免疫細胞の発生・分化において、オートファジーは重要な役割を果たし、T細胞やB細胞の正常な分化に必要不可欠です 。
参考)オートファジー - 脳科学辞典

 

また、現代のがん治療で注目される免疫チェックポイント阻害剤は、免疫反応の制御メカニズムを利用した治療法です 。T細胞は活性化すると、PD-1やLAG3、TIM-3などの免疫抑制受容体の発現を亢進させます 。がん細胞はこれらの受容体のリガンドの発現を上昇させることで、T細胞の機能を抑制し免疫監視から逃れようとします 。
参考)免疫による排除の回避

 

細胞毒性T細胞(CD8陽性T細胞)は、がん細胞を認識・破壊する重要な役割を担いますが、PD-L1などの免疫チェックポイント分子により活性が抑制されることがあります 。免疫チェックポイント阻害剤は、この抑制を解除することでT細胞の抗腫瘍活性を回復させ、がん治療に革新をもたらしています 。これらの発見により、免疫反応の精密な制御メカニズムの理解が深まり、新たな治療戦略の開発が進んでいます。
参考)https://pancan1.org/index.php?option=com_contentamp;view=articleamp;id=1179%3A%E6%B5%B7%E5%A4%96%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%EF%BC%9A%E5%85%8D%E7%96%AB%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%9D%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88%E9%98%BB%E5%AE%B3%E5%89%A4%E3%81%AE%E9%95%B7%E6%89%80%E3%81%A8%E7%9F%AD%E6%89%80amp;catid=113amp;Itemid=464