デスベンラファキシンは、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)として高い抗うつ効果を示す一方で、特徴的な副作用プロファイルを持っています 。国内臨床試験では1225例中1028例(81.9%)に副作用の発現が認められており、極めて高い頻度で何らかの副作用が出現することが報告されています 。
参考)https://www.cocorone-clinic.com/column/benrafakisin.html
最も頻度の高い副作用は悪心(33.5%)で、約3人に1人の患者に認められます 。次いで腹部不快感(27.2%)、傾眠(26.9%)、浮動性めまい(24.4%)、**口内乾燥(24.3%)**の順となっており、これらの副作用は治療開始初期に特に注意が必要です 。
参考)https://cocoro.clinic/%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%B3
胃腸系の副作用については、悪心以外にも嘔吐、下痢、便秘などが報告されており、患者の服薬継続に大きな影響を与える可能性があります 。これらの症状は徐放製剤の使用により軽減される傾向がありますが、完全に回避することは困難です 。
参考)https://nagoya-meieki-hidamarikokoro.jp/blog/serotonin-noradrenaline-reuptake-inhibitor/
神経系の副作用では、**傾眠(26.9%)**が最も高頻度で認められ、患者の日常生活に大きな影響を与えます 。この傾眠は投与量依存的に増加する傾向があり、特に治療開始時や増量時に顕著に現れます 。
参考)https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%BB%E3%83%AD%E3%83%88%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%AC%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%86%8D%E5%8F%96%E3%82%8A%E8%BE%BC%E3%81%BF%E9%98%BB%E5%AE%B3%E8%96%AC
**浮動性めまい(24.4%)**も高頻度で認められる副作用で、転倒リスクの増加につながる可能性があります 。特に高齢者では重篤な転倒事故につながる恐れがあるため、歩行時の注意喚起や環境整備が重要となります 。
興味深いことに、デスベンラファキシンは**頭痛(19.3%)**を副作用として引き起こす一方で、片頭痛の予防効果も報告されています 。米国頭痛学会のガイドラインでは「probably effective(有効である可能性が高い)」として片頭痛予防治療薬に位置づけられており、この二面性は臨床使用において注意深い観察が必要です 。
**不眠症(16.0%)**の発現も認められており、これはノルアドレナリン再取り込み阻害作用による覚醒作用の増強が関与していると考えられています 。就寝前の投与を避け、朝の服薬を推奨することで軽減が期待できます。
循環器系では**動悸(13.2%)**が主要な副作用として報告されており、ノルアドレナリン再取り込み阻害作用による交感神経系の亢進が原因と考えられています 。この動悸は用量依存的に増加する傾向があり、高用量での使用時には特に注意が必要です。
デスベンラファキシンの投与により血圧上昇のリスクがあることも重要な注意点です 。これは主にノルアドレナリンの血中濃度上昇による血管収縮作用によるもので、既存の高血圧患者では特に慎重な血圧モニタリングが必要となります 。
参考)https://www.shinagawa-mental.com/column/medicine/venlafaxine/
頻脈も報告されている副作用の一つで、動悸と合わせて患者の不安を増大させる可能性があります 。特に心疾患の既往歴がある患者では、定期的な心電図検査や心機能評価が推奨されます 。
参考)https://jrct.mhlw.go.jp/latest-detail/jRCT2031220238
さらに注意すべき点として、不整脈の報告もあり、重篤な循環器系有害事象につながる可能性があります 。臨床現場では投与開始前の心電図検査実施と、治療中の定期的な循環器系評価が重要となります。
最も注意すべき重篤な副作用としてセロトニン症候群があります 。この症候群は不安、焦燥、興奮、錯乱、発汗、下痢、発熱、高血圧、固縮、頻脈、ミオクローヌス、自律神経失調等の症状を呈し、生命に関わる可能性があります 。特にMAO阻害剤との併用時にリスクが著しく増加するため、併用は絶対禁忌となっています 。
参考)https://www.pmda.go.jp/RMP/www/671450/37b50110-e310-4f61-a7eb-f2f66d210cea/671450_1179055N1021_10_002RMPm.pdf
横紋筋融解症も重篤な副作用として報告されており、筋肉痛、脱力感、CK(クレアチンキナーゼ)値の異常上昇などの症状に注意が必要です 。この症候群は急性腎不全につながる可能性があり、早期発見と適切な対応が生命予後を左右します。
悪性症候群は頻度不明ながら重篤な副作用として挙げられており、高熱、筋強剛、自律神経失調、意識障害などの症状を呈します 。これらの症状が認められた場合は直ちに投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理が必要となります。
血液系の副作用では再生不良性貧血の報告があり、めまい、あざができやすいなどの症状に注意が必要です 。定期的な血液検査による早期発見が重要で、特に治療初期には慎重な観察が求められます。
妊娠・授乳期における使用では特別な注意が必要です 。妊娠第3トリメスター中の使用では新生児の離脱症候群のリスクがあり、出生後の呼吸障害や摂食困難などの症状が報告されています 。授乳期間中の使用については、母乳への移行性と乳児への影響について十分な情報が不足しており、リスクと有効性を慎重に評価する必要があります 。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/22-%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%A6%8A%E5%A8%A0%E4%B8%AD%E3%81%AE%E8%96%AC%E5%89%A4%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E7%89%A9%E8%B3%AA%E3%81%AE%E4%BD%BF%E7%94%A8/%E6%8E%88%E4%B9%B3%E6%9C%9F%E9%96%93%E4%B8%AD%E3%81%AE%E8%96%AC%E5%89%A4%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E7%89%A9%E8%B3%AA%E3%81%AE%E4%BD%BF%E7%94%A8
腎機能障害患者では薬物の体内蓄積により副作用のリスクが増加します 。デスベンラファキシンは主に腎臓から排泄されるため、腎機能に応じた用量調整が必要で、重篤な腎障害患者では投与量を半減させることが推奨されています 。
参考)https://www.jsnp.org/files/dosage_recommendations_37.pdf
肝機能障害についても注意が必要で、肝機能検査値異常(10.0%)が報告されています 。ALT、AST、γ-GTP、LDH、Al-P、血中ビリルビンの上昇等が認められるため、定期的な肝機能検査の実施が重要です 。
高齢者では薬物代謝能力の低下により副作用のリスクが増加し、特にめまいや傾眠による転倒リスクに注意が必要です 。また、併用薬との相互作用も考慮し、より慎重な投与が求められます。
参考)https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shi-guide08_11.pdf