大黄甘草湯エキスは、大黄(ダイオウ)と甘草(カンゾウ)の2つの生薬から構成される漢方薬です。その主要な薬理作用は、大黄に含まれるアントラキノン類、特にセンノシドAによるものです。
センノシドAは大腸に到達後、腸内細菌叢の働きによってレインアンスロンに変換され、大腸の蠕動運動を促進します。この作用により弛緩性便秘の改善が期待できます。一方、甘草は大黄の強すぎる効果を緩和し、より自然な排便に近づける役割を果たします。
興味深いことに、大黄の薬効は腸内細菌叢に大きく依存するため、個人差が大きいという特徴があります。これは臨床現場で患者ごとに効果の現れ方が異なる理由の一つです。
効能・効果として、便秘症をはじめ、便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・ふきでもの・食欲不振・腹部膨満・腸内異常醗酵・痔などの症状緩和が認められています。
大黄甘草湯エキスの使用において、医療従事者が最も注意すべきは重篤な副作用です。特に偽アルドステロン症とミオパチーは頻度不明ながら重大な副作用として報告されています。
偽アルドステロン症 🚨
甘草に含まれるグリチルリチン酸による副作用で、以下の症状が現れます。
ミオパチー 💪
低カリウム血症の結果として発症し、以下の症状を呈します。
これらの副作用を早期発見するため、血清カリウム値の定期的な測定が重要です。異常が認められた場合は直ちに投与を中止し、カリウム剤の投与等の適切な処置を行う必要があります。
重篤な副作用以外にも、大黄甘草湯エキスには注意すべき一般的な副作用があります。
消化器系副作用 🍽️
これらの症状は大黄の効果が強く現れすぎた場合に生じることが多く、用量調整や投与中止を検討する必要があります。
長期使用による問題 ⏰
長期にわたって連続服用すると、以下のような問題が生じる可能性があります。
アレルギー反応 🤧
生薬に対するアレルギー反応も報告されており、以下の症状に注意が必要です。
大黄甘草湯エキスは体力に関わらず使用できる漢方薬とされていますが、特定の患者群では慎重な投与が必要です。
禁忌に近い患者 ❌
慎重投与が必要な患者 ⚠️
併用注意薬剤 💊
甘草含有製剤(芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散等)やグリチルリチン酸含有製剤との併用時は、偽アルドステロン症やミオパチーが現れやすくなるため注意が必要です。
大黄甘草湯エキスの臨床効果について、二重盲検比較臨床試験の結果が報告されています。便秘症患者を対象とした試験では、大黄甘草湯群の有効率が86.4%(38/44例)、プラセボ群が44.7%(21/47例)と、統計学的に有意な差が認められました。
投与方法の最適化 📋
効果判定のタイミング ⏱️
一般用医薬品では5~6日間服用しても症状が改善しない場合は服用を中止し、医師・薬剤師に相談することが推奨されています。医療用では患者の状態に応じて継続期間を判断しますが、長期連用は避けるべきです。
個別化医療の観点 👤
腸内細菌叢の個人差により効果に差が生じるため、患者ごとの反応を慎重に観察し、必要に応じて用量調整を行うことが重要です。また、他の下剤との併用は避け、単独での使用を基本とします。
モニタリング項目 🔍
定期的な血清カリウム値の測定に加え、血圧、体重、浮腫の有無、筋力低下の症状などを継続的に観察することで、副作用の早期発見と適切な対応が可能になります。
医療従事者向けの大黄甘草湯エキス使用に関する詳細情報
https://www.tsumura.co.jp/brand/products/kampo/daiokanzoto.html
大黄甘草湯の副作用と安全性に関する専門情報
https://mentalsupli.com/kanpo/kanpo-physical/daioukannzoutou/