ウステキヌマブのBSに切り替えても、先発品と全く同じ用法・用量で投与できます。
ウステキヌマブの先発品の商品名は「ステラーラ®(Stelara)」であり、ヤンセンファーマ株式会社(販売:田辺三菱製薬)が製造・販売しています。2011年3月に国内で初めて薬価収載され、最初の適応は尋常性乾癬および乾癬性関節炎でした。
製剤は現在2種類が流通しています。
- ステラーラ®皮下注45mgシリンジ(薬価:445,131円/筒):乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎の維持療法に使用
- ステラーラ®点滴静注130mg(薬価:184,085円/瓶):クローン病・潰瘍性大腸炎の導入療法専用製剤
2種類ある点が重要です。導入療法と維持療法で剤型が完全に異なるため、クローン病・潰瘍性大腸炎に使用する際は製剤の選び間違いに注意が必要です。点滴静注製剤は導入にのみ使用し、維持には皮下注製剤へ切り替えるのが原則です。
乾癬のみを対象とする場合は、最初から皮下注製剤のみで治療を行います。これは臨床現場での処方選択の際、混乱が生じやすいポイントの一つです。
参考:ステラーラ® 製品情報(KEGG)
https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=D09214
2023年9月、日本初のウステキヌマブバイオシミラー(BS)が承認・薬価収載され、富士製薬工業による「ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「F」」が発売されました。先発品45mg皮下注の薬価が約198,887円(後の薬価改定前後で変動あり)に対し、初のBSは約147,524円と、先発品比でおよそ44%引き下げとなり注目を集めました。
2026年1月時点で承認済みのウステキヌマブBSを一覧で整理すると以下のとおりです。
| 商品名 | メーカー | 承認年月 | 薬価(皮下注45mg) |
|---|---|---|---|
| ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「F」 | 富士製薬工業 | 2023年9月 | 139,002円/筒 |
| ウステキヌマブBS皮下注90mgシリンジ「F」 | 富士製薬工業 | 2026年1月 | 未収載 |
| ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「YD」 | 陽進堂 | 2024年12月 | 139,002円/筒 |
| ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「CT」 | セルトリオン・ヘルスケア・ジャパン | 2025年3月 | 139,002円/筒 |
| ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「ニプロ」 | ニプロ | 2025年12月 | 2026年5月収載予定 |
BS品が増えていることがわかります。先発品ステラーラ®皮下注45mgの薬価(198,887円/筒)と比べると、BSは約30%低い価格水準に設定されています。1年間に12週間隔で4回投与するとすれば、BS選択により患者1人あたり年間で約24万円以上の薬剤費を削減できる計算になります。これはサーモスタット付き高機能保温ポットが約20台買える金額に相当するイメージで、医療費抑制への貢献度は小さくありません。
また、2026年1月には90mgシリンジのBS品(富士製薬工業)が新たに承認されています。乾癬において効果不十分な場合に90mg投与が必要になる症例に対し、BSによる対応が可能となりました。
ただし注意が必要です。BS品はすべて皮下注製剤のみであり、導入療法に用いる点滴静注製剤(130mg)のBSは、2026年3月時点で承認されていません。
参考:日本バイオシミラー協議会 承認品目一覧(2026年1月更新)
https://www.biosimilar.jp/pdf/biosimilar_list.pdf
ウステキヌマブは、ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤に分類されます。IL-12とIL-23はいずれもp40というサブユニットを共通して持つサイトカインであり、ウステキヌマブはこのp40に高い親和性で結合することで、両サイトカインが免疫細胞表面の受容体複合体に結合するのを阻害します。
IL-12はTh1細胞への分化を促進してINF-γ産生を誘導し、IL-23はTh17細胞を活性化してIL-17産生を引き起こします。つまりウステキヌマブは、1つの分子でTh1系とTh17系の双方の炎症経路をブロックできます。これが他の生物学的製剤と大きく異なる点です。
IL-17だけを狙う薬剤(セクキヌマブ・イキセキズマブ等)やTNF-αを標的とする薬剤(アダリムマブ・インフリキシマブ等)と比べ、ウステキヌマブは上流のIL-23・IL-12を同時に抑えることで、炎症カスケードを広く制御できます。結論は「上流を止める」薬です。
また、ウステキヌマブは12週間隔という比較的長い維持投与間隔が特徴の一つです。他の生物学的製剤の多くが4〜8週ごとの投与を必要とする中、維持療法で年間4回の投与で済む場合があることは、患者の通院負担軽減という観点から大きなメリットになります。
参考:日経メディカル ウステキヌマブ作用機序解説
ウステキヌマブが現在承認されている適応症は以下の4つです。
- 🩺 尋常性乾癬・乾癬性関節炎(2011年3月承認)
- 🩺 活動期クローン病(CD)(2017年3月承認)
- 🩺 潰瘍性大腸炎(UC)(2020年3月承認)
- 🩺 小児の潰瘍性大腸炎(2歳以上)(2026年1月に製造販売承認)※最新情報
適応症ごとに用法・用量が大きく異なります。
乾癬・乾癬性関節炎の場合は、皮下注製剤(45mg)のみを使用します。初回および4週後に投与し、以降は12週間隔で維持します。効果不十分な場合は90mgへの増量が可能です。
クローン病・潰瘍性大腸炎の成人の場合は、導入療法として点滴静注製剤130mgを体重換算用量で1回静脈内投与します。具体的な体重別目安は次のとおりです。
| 体重 | 導入用量 |
|---|---|
| 55kg以下 | 260mg |
| 55kgを超え85kg以下 | 390mg |
| 85kgを超える場合 | 520mg |
導入投与から8週後に皮下注(90mg)へ切り替え、以降12週間隔で維持します。効果が不十分な場合は8週間隔に短縮することもあります。体重換算による用量設定が原則です。
2026年1月に承認された小児の潰瘍性大腸炎については、体重40kg以上では体重別、40kg未満では体表面積換算別での用量が設定されています。成人と用量算出方法が異なるため、小児例への投与時は改めての確認が必要です。
ウステキヌマブはIL-12/23を選択的に抑制するため、感染リスクを高める可能性があります。添付文書の「警告」には、結核や重篤な感染症の誘発・悪化に関する注意が明記されており、投与前の十分なスクリーニングが不可欠です。
投与前に確認すべき主な事項
- ✅ 結核の既往歴・感染歴:胸部X線、インターフェロン-γ遊離試験(IGRA)やツベルクリン反応の実施
- ✅ B型肝炎ウイルス(HBV)感染の有無:HBs抗原・HBs抗体・HBc抗体の検査
- ✅ 活動性感染症の有無:細菌・ウイルス・真菌による重篤な感染症の有無を確認
- ✅ 悪性腫瘍の既往:本剤との因果関係は明確ではないが、悪性腫瘍の発現リスクへの注意が必要
- ✅ アナフィラキシーの既往:過去にウステキヌマブで過敏反応を起こした患者には禁忌
主な重大な副作用
| 副作用の種類 | 具体的な症状・状態 |
|---|---|
| 重篤な感染症 | 肺炎、蜂窩織炎、骨髄炎、真菌感染など |
| 結核の再燃 | 既往歴のある患者で活動性結核が顕在化する可能性 |
| 間質性肺炎 | 咳嗽・呼吸困難・発熱・肺音異常が出現した場合は速やかに精査 |
| ウイルス性肝炎の再活性化 | HBV再活性化に伴う劇症肝炎・肝炎の増悪 |
| アナフィラキシー | 投与中・投与後に出現する場合がある |
感染症のモニタリングは継続が基本です。投与中も咳嗽・発熱・倦怠感等の症状が出現した場合は、速やかに胸部X線・CT・血清マーカー等の検査を行うことが推奨されています。
他の生物学的製剤との併用については安全性・有効性が確立されていないため、原則として行いません。また、生ワクチンの接種は治療期間中・治療終了後しばらくの間は禁忌となります。これは見落としやすいポイントなので注意が必要です。
参考:富士製薬工業 ウステキヌマブBS 投与前確認事項
https://www.ustekinumab-fuji.com/proper-use/before-administration/
参考:PMDA ステラーラ®適正使用ガイド
https://www.pmda.go.jp/RMP/www/800155/c214b028-3776-4fa2-9773-ab62b9bb6fb5/800155_3999431A1022_03_006RMPm.pdf
バイオシミラーへの切り替えは、単に「安い薬」に変えるだけではありません。医療機関にとって薬価差益という経済的側面と、患者への適切な説明義務という倫理的側面の双方に関わる問題です。この点は意外と整理されていないポイントです。
バイオシミラー切り替えのメリット(医療機関・患者・社会)
国の方針として、バイオシミラーの使用促進は医療費適正化の重要施策に位置づけられています。政府は2029年度までにバイオシミラーの医薬品費に占める割合を「金額ベースで50%以上」とする目標を掲げています。現状では医療従事者のバイオシミラーに対する正確な知識が不足しているという指摘もあり、普及の阻害要因の一つとなっています。
ウステキヌマブBSへの切り替えは、同じ一般名の製剤である以上、適応・用法・用量・投与経路はすべて先発品と同一です。つまり切り替えに際して新たな処方設計は不要であり、薬剤師・医師ともに処方作業の変更は最小限で済みます。
一方で切り替えにあたっては患者への十分な説明が前提になります。「効果・安全性は先発品と同等と確認されており、国が承認した製剤である」という点を具体的に伝えることが、患者の不安軽減と治療継続率の維持につながります。
また、BS各社の販売名末尾の記号(「F」「YD」「CT」「ニプロ」など)は製造メーカーを区別するためのものです。電子カルテや院内採用リストでの混乱を防ぐため、院内で採用するBSを一本化し、薬剤師・看護師・医師間で統一した情報共有を行っておくことを推奨します。
なお、厚生労働省の資料によれば、バイオシミラーに関して「正確な知識を持ち合わせている医療従事者は少ない」という現場の声も報告されています。現時点でBS切り替え実績のある施設とそうでない施設で、薬剤費の差が年間数百万円規模になることも珍しくありません。これは施設にとって大きな差です。
参考:厚生労働省 バイオシミラーをめぐる最近の話題(2026年1月更新)
https://www.mhlw.go.jp/content/001653001.pdf
参考:日本バイオシミラー協議会 医療関係者向けQ&A
https://www.biosimilar.jp/qa_medical.html