電子カルテの種類と選び方のポイント

電子カルテには、クラウド型やオンプレミス型、レセコン一体型など様々な種類があります。医療機関の規模や診療科に応じて、どのタイプを選ぶべきでしょうか?

電子カルテの種類

電子カルテの主な分類
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導入形態別

クラウド型・オンプレミス型・ハイブリッド型の3種類に分類されます

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施設規模別

クリニック向け・中小病院向け・大規模病院向けに区分されます

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診療科別

汎用タイプと診療科専用特化タイプがあります

電子カルテは、医療機関のニーズに応じて複数の観点から分類されています。導入形態、施設規模、診療科、そしてレセプトコンピュータとの連携方式により、最適なシステムが異なります。医療機関が電子カルテを選択する際には、これらの種類の特徴を理解し、自院の診療スタイルや運用体制に適したものを選定することが重要です。
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電子カルテの導入形態による種類

 

電子カルテの導入形態は、クラウド型、オンプレミス型、ハイブリッド型の3種類に大別されます。クラウド型は、インターネット経由でクラウドサーバー上のシステムを利用する形態で、院内にサーバーを設置する必要がありません。初期費用が0~10万円程度と低く抑えられる点が大きなメリットです。一方で、月額利用料が継続的に発生するため、長期的なランニングコストを考慮する必要があります。インターネット環境が必須であり、回線の状況によっては動作が不安定になる可能性もあります。
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オンプレミス型は、院内にサーバーや専用機器を設置して運用するタイプです。初期費用は300万~500万円程度と高額になりますが、独自のカスタマイズ性に優れ、セキュリティ対策を自院で管理できる点が特徴です。大規模病院のように、高度なカスタマイズや安定した動作を求める医療機関に適しています。また、ベンダーのサポートが手厚く、24時間365日のサポート体制が整っている製品も多く存在します。
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ハイブリッド型電子カルテは、クラウド型とオンプレミス型の特性を組み合わせたシステムです。患者の医療情報の一部は院内サーバーに保存し、他の部分はクラウド上で管理することで、セキュリティの高さとアクセスの利便性を両立します。災害時のリスク管理にも有効で、物理的なサーバーが損傷した場合でも、クラウド上のバックアップデータを用いて迅速に業務を再開できます。医療機関の成長に合わせてシステムを柔軟に拡張できる点も、ハイブリッド型の大きなメリットです。
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電子カルテの施設規模による種類

電子カルテは、対象とする施設規模によって「クリニック向け」「中小病院向け」「大規模病院向け」に区分されます。病院向けは更に、約200床を目安として「中小」と「大規模」に分けられます。クリニック向け電子カルテは、少人数での運用を前提とした使いやすいインターフェースと、比較的低価格な導入費用が特徴です。レセプトコンピュータと一体型であることが多く、受付から会計までの業務を効率的に行えます。
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中小病院向け電子カルテは、複数の診療科や部門間での情報共有機能が充実しています。外来診療だけでなく、入院管理や看護記録、検査結果の管理など、病院運営に必要な機能を網羅しています。200床未満の中小病院や有床診療所を対象とした「標準型電子カルテ」が政府主導で開発されており、比較的安価なコストで導入できるよう配慮されています。
参考)【2024年最新】政府が推進する「電子カルテの標準化」「標準…

大規模病院向け電子カルテは、数百床以上の医療機関に対応する高度なシステムです。多数の診療科、複雑な検査・手術の管理、地域医療連携など、大規模病院特有の要件に対応する必要があります。24時間365日のサポート体制が不可欠であり、システムトラブル時の迅速な復旧が求められます。オンプレミス型が採用されることが多く、高度なカスタマイズ性とセキュリティ対策が施されています。
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電子カルテの診療科による種類

電子カルテは診療科の観点から、汎用タイプと診療科専用特化タイプに分類されます。汎用型電子カルテは、複数の診療科で利用することを想定して設計されており、あらゆる診療科の項目にある程度対応できます。院内の複数の診療科で同じ電子カルテを使用する場合、情報共有がスムーズになるメリットがあります。ただし、特定の診療科に特化しているわけではないため、診療科特有のニーズに対応するには適宜カスタマイズが必要になります。
参考)眼科向け電子カルテおすすめ9選!専用型のメリットとは?

診療科専用特化タイプは、眼科、産婦人科、歯科など、特定の診療科での利用を目的として開発された電子カルテです。例えば眼科専用電子カルテでは、視力や色覚などの眼科特有の検査項目や診療に適したテンプレートが標準装備されており、検査機器との統合も容易です。産婦人科向けでは、不妊健診や不妊治療管理などに最適化された機能を持ち、産婦人科特有の業務に対応しています。
参考)【2025年版】眼科におすすめ電子カルテ5選!特徴、選び方を…

汎用型と専用型のどちらを選ぶかは、医療機関の診療内容や規模によって異なります。単科のクリニックであれば専用型の方が効率的な診療をサポートできますが、複数の診療科を持つ医療機関では汎用型の方が情報共有の観点で有利です。サポート体制やカスタマイズの容易さも含めて、総合的に判断することが推奨されます。
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電子カルテのレセコン連携による種類

電子カルテは、レセプトコンピュータ(レセコン)との連携方式により、一体型と分離型に分類されます。レセコン一体型電子カルテは、1つの端末で電子カルテとレセコンの両方を操作でき、患者の診察・検査情報をもとに、受付から会計、レセプト請求業務までを一貫して行えます。データ入力の二重化を防ぎ、人的ミスを削減できる点が大きなメリットです。多くのクリニックにとって、効率的な請求業務とヒューマンエラーの削減、データの一元管理が可能になるため、レセコン一体型は重要な選択肢となります。
参考)【電子カルテ】レセコン一体型とレセコン分離型を比較|違いと特…

レセコン分離型は、電子カルテとレセコンがそれぞれ別の端末・システムで動作し、ソフトウェアも異なります。両システム間で情報を連携させる必要がありますが、それぞれのシステムを独立してアップグレードできる柔軟性があります。既に優れたレセコンを導入している医療機関が、新たに電子カルテを追加する場合などに適しています。
参考)https://www.phchd.com/jp/medicom/park/tech/ehr-receipt-computer

レセコン一体型と分離型のどちらを選ぶべきか迷う医療従事者も多いですが、重要なのは「レセコンの性能」です。電子カルテとレセコンがシームレスに連携できるのであれば、一体型でも分離型でも問題ありません。ただし、システムは目的に応じて選ぶことが重要であり、自院の業務フローや既存システムとの相性を考慮した選定が求められます。​

電子カルテの標準化による新しい種類

政府は医療DX政策の一環として、電子カルテ情報の標準化を推進しており、2025年度から「電子カルテ情報共有サービス」の運用が開始されています。電子カルテの標準化とは、医療機関ごとに異なるデータ形式や内容を統一し、医療機関間での情報交換を円滑にするための取り組みです。この標準化に対応した「標準型電子カルテ」が政府主導で開発されており、200床未満の中小病院や有床診療所、無床診療所が対象となっています。
参考)【2025年いよいよ運用開始】電子カルテ情報共有サービスとは…

標準型電子カルテは、電子カルテの導入に抵抗がある小規模医療機関でも比較的安価に導入できるよう設計されています。2024年時点で電子カルテの普及率は49%と半数に満たない状況ですが、標準型電子カルテの提供により、情報共有基盤の活用が促進されることが期待されています。電子カルテ情報共有サービスでは、「診療情報提供書」「退院時サマリー」「健康診断結果報告書」の3文書と、「傷病名」「感染症」「薬剤アレルギー」「検査」「処方」などの6情報が全国で共有される予定です。
参考)https://www.phchd.com/jp/medicom/park/tech/ehr-karte-standardization

患者がマイナ保険証を使用することで、全国のどの医療機関でも過去の診療歴やアレルギー情報を瞬時に確認できるようになり、救急医療でも「マイナ救急」として医療情報の取得・共有が可能になります。各電子カルテベンダーは自社製品の標準化対応を進めており、医療従事者にとっても情報共有の効率化により、より質の高い医療提供に集中できる環境が整備されています。標準化への対応は、今後の電子カルテ選定における重要な判断基準の一つとなっています。​

電子カルテのセキュリティ管理の種類

電子カルテのセキュリティ管理については、「3省2ガイドライン」と呼ばれる指針が定められています。厚生労働省が医療機関向けに「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」を、経済産業省と総務省が事業者向けにそれぞれガイドラインを制定しています。これらのガイドラインは、電子カルテをはじめとする医療情報システムが取り扱う個人情報の保護、データの安全な取り扱い、サイバー攻撃からの保護を目的としています。
参考)https://www.phchd.com/jp/medicom/park/idea/management-2g3m

電子カルテを含む医療情報システムは、真正性・見読性・保存性の3つの基準を満たす必要があります。真正性とは、記録された情報が正確で改ざんされていないこと、見読性とは情報を必要な時に容易に読み出せること、保存性とは法定保存期間中データが保存され続けることを意味します。クラウド型電子カルテでは、クラウド管理者による強固なセキュリティ対策が施されている一方、オンプレミス型では医療機関が独自のセキュリティ対策を実施できます。
参考)電子カルテとは?導入によるメリット・デメリットを徹底解説!

病院や診療所、薬局、介護事業者、訪問看護ステーション、医療情報連携ネットワーク運営事業者などの医療機関が3省2ガイドラインの対象であり、情報管理を担う責任者が遵守する必要があります。レセプト業務などを受託するベンダーも対象に含まれます。技術面の進化やセキュリティインシデントの発生を受けて、ガイドラインは定期的に見直されており、医療従事者は最新版のガイドラインに準拠したシステムを選定することが求められます。
参考)3省2ガイドラインとは? 押さえるべきセキュリティ対策をご紹…

電子カルテ導入で医療従事者が確認すべき独自の視点

電子カルテ導入の際、医療従事者が見落としがちな重要なポイントとして、停電や災害時の対応策があります。電子カルテはパソコンなどの端末使用が必須であるため、停電や機器故障時にはカルテを使用できなくなります。そのような万一の事態を想定し、無停電電源装置(UPS)の設置や、紙カルテへの一時的な切り替え手順など、バックアップ体制を整えておく必要があります。
参考)電子カルテとは?メリット・デメリットと導入までの流れや注意点…

また、電子カルテの運用開始までには、紙カルテの情報を1件ずつ入力する作業が必要であり、操作方法に慣れるまで時間がかかります。医療従事者全員が直感的に操作できるユーザーフレンドリーなインターフェースを備えているシステムを選ぶことで、研修時間の短縮や業務効率の向上が期待できます。無料デモ体験が可能な電子カルテで実際に操作してみることが推奨されます。
参考)https://www.tokyo-medicom.co.jp/contents06.html

さらに、訪問・在宅医療を行う医療機関では、マルチデバイス対応とオフライン入力機能が極めて重要です。医師や看護師が患者の自宅や施設で診療を行う際、インターネット接続がない環境でもカルテ入力ができる必要があります。自由診療を行う医療機関では、患者との長期的な関係構築(CRM)や集患・増患のためのマーケティング機能が電子カルテに統合されているか、連携できるかが重要な選定ポイントとなります。これらの医療現場特有のニーズを事前に明確にし、自院に最適な電子カルテを選定することが成功の鍵となります。
参考)https://www.phchd.com/jp/medicom/park/tech/ehr-schedule

 

 


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