イキセキズマブ(トルツ)は、インターロイキン-17A(IL-17A)に対して特異的かつ高い親和性(KD値:3pM未満)を有するヒト化免疫グロブリンG4モノクローナル抗体です。この薬剤は炎症性サイトカインであるIL-17Aを標的とし、乾癬などの炎症性疾患の病態形成に重要な役割を果たす炎症反応を抑制します。
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000241082.pdf
PMDAが承認している効能・効果は以下の疾患に対するものです。
本剤の作用機序として、IL-17Aとその受容体であるIL-17RAとの結合を阻害することで、下流の炎症性メディエーターの産生を抑制し、炎症反応を制御します。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2019/P20191120001/530471000_22800AMX00439_H100_1.pdf
添付文書に記載された標準的な投与方法は以下の通りです:
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2016/P20160725001/530471000_22800AMX00439_H100_1.pdf
初回投与: 通常、成人にはイキセキズマブとして初回に160mgを皮下投与
導入期: 2週後から12週後までは1回80mgを2週間隔で皮下投与
維持期: 以降は1回80mgを12週間隔または4週間隔で皮下投与
効果が不十分な場合には、12週時点で投与間隔を4週間隔に短縮することができます。この用法・用量の調整は、個々の患者の病状と治療反応に基づいて検討されるべきです。
投与は皮下注射により行われ、オートインジェクターまたはシリンジ製剤が利用できます。自己注射も可能ですが、適切な指導の下で実施することが重要です。
PMDAは2021年6月に重要な安全性情報の改訂を行い、「間質性肺炎」を重大な副作用として追加しました。この改訂の背景には、直近3年度の国内症例で間質性肺炎関連症例8例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例4例)が集積したことがあります。
主な重大な副作用:
日本人患者を対象とした市販後調査では、804名の患者を対象とした52週間の観察期間において、25.3%の患者で副作用が報告されました。この調査結果は、臨床試験で報告された安全性プロファイルと一致しており、実臨床での使用における安全性を支持するものです。
参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1346-8138.17695
投与前には結核などの感染症のスクリーニングが必須であり、治療中も定期的なモニタリングが求められます。
添付文書では以下の患者への投与を禁忌としています:
参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/530471_3999442G2020_1_01
絶対禁忌:
慎重投与が必要な患者:
特に、本剤は免疫抑制作用を有するため、感染症のリスクが高い患者や免疫機能が低下している患者では十分な注意が必要です。
投与開始前には胸部X線検査、血液検査、感染症マーカーの測定などの十分な検査を実施し、治療中も定期的なモニタリングを継続することが推奨されています。
PMDAが実施している市販後調査では、長期使用における安全性と有効性の継続的な評価が行われています。2016年11月から2022年9月までの市販後調査では、日本人患者804名を対象とした包括的な安全性評価が実施されました。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12056272/
調査結果の概要:
疾患別の内訳では、尋常性乾癬が72.9%、関節症性乾癬が37.7%、膿疱性乾癬が7.8%、紅皮症型乾癬が3.7%となっており、複数の病型を併存している患者も含まれています。
長期投与における特記すべき点として、重篤な感染症や悪性腫瘍の発現についても3年間にわたる追跡調査が実施されており、臨床試験で得られた安全性プロファイルとの整合性が確認されています。
また、抗薬物抗体(ADA)の発現についても継続的にモニタリングされており、免疫原性がイキセキズマブの有効性や安全性に及ぼす影響についても詳細に検討されています。これらのデータは、長期使用における薬剤の安全性を評価する上で重要な情報源となっています。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2019/P20191120001/530471000_22800AMX00439_K101_1.pdf