アストラゼネカ製ワクチンを「安全だから2回打てばOK」と患者に伝えていると、初回と2回目で血栓リスクが異なることを見落とすことがあります。

ウイルスベクターワクチンとmRNAワクチンは、どちらもコロナのスパイクタンパク質を標的にしています。しかし、遺伝情報を細胞に届ける「運び屋」が全く異なります。
mRNAワクチン(ファイザー・モデルナ)は脂質ナノ粒子にmRNAを封入する方式です。一方、ウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ、ヤンセン)は、ヒトに対して無毒性または弱毒性に改変したウイルス本体を「運び屋」として使用します。
関連)https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/10182-492r06.html
具体的には、アストラゼネカのAZD1222はチンパンジーのアデノウイルス(ChAdOx1)を使用しています。チンパンジー由来を選んだ理由が重要です。ヒトのアデノウイルスを使うと、体内に既存免疫が存在することがあり、ワクチンが効かなくなる「vaccine failure」が起こるリスクがあります。チンパンジー由来であればヒトへの既存免疫は極めて稀なため、このリスクが回避できます。
関連)https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/10182-492r06.html
つまり「どのウイルスをベクターにするか」が設計上の重要な選択肢です。
| 比較項目 | ウイルスベクターワクチン | mRNAワクチン |
|---|---|---|
| 運び屋 | 改変アデノウイルス等 | 脂質ナノ粒子 |
| 細胞性免疫 | 強く誘導 | 誘導可能 |
| 既存免疫の影響 | ベクターの種類による | ほぼなし |
| 保存温度 | 冷蔵(2〜8℃)で安定 | 超低温冷凍が必要(一部) |
| 主な副反応リスク | TTS、GBS、ITP | 心筋炎・心膜炎 |
保存温度の違いは実務上の大きな差です。mRNAワクチンの一部が-70℃前後の超低温冷凍を必要とするのに対し、アデノウイルスベクターワクチンは冷蔵(2〜8℃)で安定保存できます。インフラ整備が不十分な地域でのロールアウトでウイルスベクターワクチンが活躍した背景には、この保存条件の優位性があります。
関連)https://icmra.info/drupal/en/covid-19/icmra_who_vaccines_confidence_statement_for_hcps_2/japanese
ウイルスベクターワクチンは、1990年代に遺伝子治療のツールとして開発が始まりました。しかし、当初から重大な副作用事例が相次ぎます。
関連)https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/10182-492r06.html
1999年には、アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療の治験参加者が接種4日後に死亡する事例が発生しました。2002年にはレトロウイルスベクターを使った治療で白血病発症の報告が出ます。これらの事例が実用化を大きく遅らせました。
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歴史が動いたのは2019年です。VSV(水疱性口内炎ウイルス)をベクターとしたエボラウイルス病ワクチン「rVSV-ZEBOV」が欧米で承認されました。これが感染症に対するウイルスベクターワクチンとして世界初の承認事例です。
関連)https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/10182-492r06.html
この承認が実績となり、コロナ禍で一気に開発が加速しました。意外ですね。
アデノウイルスベクター技術はもともとSARS、MERS、エボラ対策として20年間試験が重ねられてきた経緯があります。コロナウイルスとの構造的類似性もあり、技術の転用が比較的スムーズに進みました。
関連)https://icmra.info/drupal/en/covid-19/icmra_who_vaccines_confidence_statement_for_hcps_2/japanese
医療従事者として最も正確に把握しておくべき数字があります。それがTTS(血小板減少症を伴う血栓症)の発症率です。
アストラゼネカ製では初回接種後に10万人あたり約2人の割合でTTSが発症します。2回目接種後はこれより低く、10万人あたり0.5人未満です。
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ヤンセン製では100万回あたり約2〜3件の報告です。
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数字だけでは実感しにくいため整理します。10万人あたり2人とは、1万人に0.2人、1,000人に0.02人という頻度です。仮に地域の医療機関が年間1,000回接種するとすれば、数十年に1例遭遇するかどうかという水準です。
頻度は低いが油断禁物です。
注意が必要なのが発症タイミングです。TTS症状は通常、ワクチン接種後4〜30日の間に始まります。若い女性(60歳未満)では脳静脈洞血栓症や腹腔静脈血栓症など通常と異なる部位に血栓が生じやすく、重篤化するリスクが高い傾向があります。
関連)https://icmra.info/drupal/en/covid-19/icmra_who_vaccines_confidence_statement_for_hcps_2/japanese
この「4〜30日」というウィンドウを知っておくことが、臨床的な判断を支えます。
発症が疑われる際の症状としては、激しい頭痛・視覚障害・けいれん(脳静脈洞血栓症)、腹痛・腹水(腹腔静脈血栓症)が挙げられます。通常の血栓症と異なる部位が多いことが診断の難しさにつながっています。
関連)https://icmra.info/drupal/en/covid-19/icmra_who_vaccines_confidence_statement_for_hcps_2/japanese
TTSほど注目されていませんが、ギラン・バレー症候群(GBS)と免疫性血小板減少症(ITP)も重要な副反応です。これが基本です。
GBSとITPはともに、アストラゼネカ製・ヤンセン製接種後に約10万人に1人の割合で報告されています。
関連)https://icmra.info/drupal/en/covid-19/icmra_who_vaccines_confidence_statement_for_hcps_2/japanese
GBSは免疫系が末梢神経を攻撃する自己免疫疾患で、四肢のしびれ・筋力低下から始まり、呼吸筋麻痺に至る場合があります。まれに致死的です。通常、感染またはワクチン接種後の数日から数週間後に発症します。
関連)https://icmra.info/drupal/en/covid-19/icmra_who_vaccines_confidence_statement_for_hcps_2/japanese
ITPは血小板が免疫系によって誤って破壊される疾患です。症状には異常なあざ・鼻出血・口腔内の血性水泡が挙げられます。ITP患者の約5%が重度の出血を起こし、ごくまれに死亡例も報告されています。
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これらを踏まえると、接種後に患者から「手足のしびれが続く」「あざができやすくなった」という相談を受けた際、単なる接種後反応として片付けず、鑑別診断の候補に入れておく必要があります。厳しいところですね。
接種後1〜4週間以内にこれらの症状が現れた場合は、速やかに神経内科・血液内科への紹介を検討することが推奨されます。
関連)https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/icmra/0022.html
医療現場でよく聞かれる質問があります。「追加接種に同じワクチンを使うべきか?」です。これに対する答えは、データが出ています。
初回コースにアデノウイルスベクターワクチンを使用した後、mRNAワクチンで追加接種した場合に、免疫応答の最大の増加がもたらされたことが複数の研究で示されています。
関連)https://icmra.info/drupal/en/covid-19/icmra_who_vaccines_confidence_statement_for_hcps_2/japanese
つまり、ウイルスベクターワクチン→mRNAワクチンという交互接種(ヘテロロガス接種)が、同じワクチンを続ける同種接種(ホモロガス接種)よりも効果的な場合があるということです。これは使えそうです。
なぜこのような現象が起きるのでしょうか?
異なるプラットフォームが異なるメカニズムで免疫を誘導するため、相乗効果が生まれると考えられています。ウイルスベクターワクチンは細胞性免疫(キラーT細胞)の誘導が得意で、mRNAワクチンは液性免疫(中和抗体)の誘導が効率的です。両者を組み合わせることで、より広範な免疫応答が得られる可能性があります。
関連)https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/10182-492r06.html
ただし交互接種を選ぶ際は、患者の既往・禁忌・入手可能なワクチンの種類を確認した上で判断が必要です。アナフィラキシーの既往がある患者に対しては同じワクチンの追加接種は禁忌です。
関連)https://icmra.info/drupal/en/covid-19/icmra_who_vaccines_confidence_statement_for_hcps_2/japanese
追加接種の判断は個別に行うことが原則です。
多くの医療従事者がワクチン接種プログラムの「実施者」として関わっています。しかし実は「監視者」としての役割も同等に重要です。
ICMRAとWHOの共同ステートメントでは、医療従事者が患者に認められた有害事象を積極的に報告することが、規制当局の安全監視において不可欠な柱として明記されています。
関連)https://icmra.info/drupal/en/covid-19/icmra_who_vaccines_confidence_statement_for_hcps_2/japanese
TTSのようなまれな副反応は、臨床試験の規模では検出できません。アストラゼネカのTTSが検出されるまでに要した臨床試験の参加者数は1〜2万人規模でしたが、10万人あたり2件という頻度ではほぼ検出不可能です。実際のモニタリングは市販後サーベイランスで初めて把握されました。
関連)https://icmra.info/drupal/en/covid-19/icmra_who_vaccines_confidence_statement_for_hcps_2/japanese
つまり日常臨床での副反応報告が、データベースを形成し、次のガイドライン改訂につながります。
日本では厚生労働省の副反応疑い報告制度が整備されており、医師・歯科医師は重篤な副反応が疑われる場合には報告義務があります。接種直後の15分観察だけでなく、接種後1〜4週間以内に患者が来院した際には必ずワクチン接種歴を確認し、関連性を検討する習慣が推奨されます。
関連)https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/icmra/0022.html
また、規制当局は強化された有害事象自発報告の監視システムを導入しており、異なるワクチンのブランドおよびバッチごとのトレーサビリティシステムを運用している国もあります。
関連)https://icmra.info/drupal/en/covid-19/icmra_who_vaccines_confidence_statement_for_hcps_2/japanese
医療従事者が1件報告することが、世界規模の安全監視に繋がる構造になっています。
日本感染症学会による COVID-19ワクチンに関する提言(第5版)も、副反応の最新情報を確認するうえで有用な情報源です。
日本感染症学会|COVID-19ワクチンに関する提言(第5版)副反応の詳細や医療従事者向けの対応指針が掲載
ICMRA/WHO共同ステートメント(日本語訳)では、TTSやGBSを含む各ワクチン固有の副反応に関する規制当局のQ&Aが網羅されています。
ICMRA/WHO|医療従事者向けCOVID-19ワクチン安全性ステートメント(日本語版)副反応の発症率・対応策の根拠となる国際的ガイダンス
| 投与法 | 乳がんリスク |
|---|---|
| エストロゲン単独(子宮切除後) | リスク上昇なし、むしろ低下の報告あり |
| エストロゲン+プロゲスチン併用 | 5年以上継続でハザード比約1.24〜2倍に上昇 |
| 経皮エストロゲン+天然型プロゲステロン | 合成プロゲスチンより低リスクの可能性 |
| 受容体 | 主な作用 | 作用の種類 |
|---|---|---|
| α₁受容体 | 血管収縮・血圧上昇・鼻粘膜収縮 | 間接作用(主)+直接刺激(一部) |
| β₁受容体 | 心拍数増加・心収縮力増強 | 直接刺激 |
| β₂受容体 | 気管支拡張・末梢血管拡張 | 直接刺激 |
| 薬剤分類 | 代表薬 | 標的経路 | 血小板凝集抑制 | 投与経路 |
|---|---|---|---|---|
| プロスタサイクリン系 | エポプロステノール | PGI₂→cAMP | ✅ あり | 持続静注 |
| PDE5阻害薬 | シルデナフィル | NO→cGMP | ❌ なし | 経口 |
| ERA | ボセンタン | ET-1受容体 | ❌ なし | 経口 |
| sGC刺激薬 | リオシグアト | sGC→cGMP | ❌ なし | 経口 |
| 地域 | 主な商品名 |
|---|---|
| アメリカ | Serax |
| ヨーロッパ | Serepax, Serenid, Seresta |
| その他 | Sobril, Tazepam, Serenal, Rondar |
| 薬剤名 | 投与経路 | エビデンスレベル | 推奨度 |
|---|---|---|---|
| ナルデメジン | 経口(0.2mg/日) | 高 | 強 |
| ナロキセゴール | 経口 | 中 | 強 |
| メチルナルトレキソン | 皮下注 | 低 | 条件付き |